Une petite esquisse

日々の雑事の中で考えたこと、感じたことを徒然に書き綴ります。

永保寺観音堂

2011年09月07日 | アート全般
 ポーランド国鉄の車掌さんは外国人の乗客を見ると、ちょっぴり嬉し
そうな顔をする。事情に疎い外国人だから、何らかの乗り間違いをして
るだろう、悪意がなくとも乗車間違いは罰金を取られる、それがうれし
いらしい。
 本を読んでいて時々、間違った事が書いてある、それを見付けたとき
は、チョッピリうれしくなる。秀学社が発行していた「時代別美術鑑賞
美術の流れ」を見ていた時、岐阜の多治見にある『永保寺観音堂』が鎌
倉時代の建立となっていた。ハて?室町以降の建築様式なのに鎌倉時代
の建立はあり得ない。
 早速、発行元に問い合わせた。秀学社の編集部から丁寧な回答をいた
だき、「多治見市文化財保護センターに問い合わせたところ、寺に残っ
ている文献では1314年の建立になっている。しかし建築様式から判
断すると、14世紀末から15世紀の初めではないか」とのことであっ
た。ハハハんと・・・洋の東西を問わず、お寺の創設にまつわる話には
嘘が多い。その寺に残っている文献にハッタリが書かれていた。
 執筆責任者が京都芸大美術教育研究会との事だが、まんまと騙された
と言うべきか。古文書の真贋を見分ける能力に欠けていたと言うべきか。
歴史や美術史に関わるなら、お寺の創設に関わる話には見栄から来る嘘
が多い事は認識しておくべきだろう。
 「ご指摘いただき調べ直し、次回改訂の折には、ご指摘を踏まえ、
作品の差し替えを含め、再検討をしたい・・・」間違った事はともかく、
間違いを認め訂正しようとする気持ちは、出版人としての良識だと思う。