検証:メコンの流れ(7)
「でもそれは決して平和で穏やかな川ではない。・・・(省略)・・・、それでも山間を行く川の流れは荒々しく速く、
水は大雨の降った直後のようにどこまでも茶色く不吉に濁っていた。」
(文藝春秋刊、単行本 P157)
「メコン川の持つ深く神秘的な、そして薄暗く寡黙なたたずまいは、湿った薄暗いヴェールのように僕らの上に終始垂れ込めている。
そこには「不穏な」「得体の知れない」とも表現したくなるような気分さえ感じられる。」
(文藝春秋刊、単行本 P158)
「-おそらく、あまりにも流れが激しく、そしてあまりにも濁りすぎている、こんな川は今まで他のどこでも見たことがない。・・・(省略)・・・
僕の中にある川というものの観念を少しばかり、でもけっこう根底から変更してしまうことになる。」
(文藝春秋刊、単行本 P160)
「しかし一歩街の外に出れば、そこには泥のように濁った水が雄々しく流れるメコン川があり、・・・」
(文藝春秋刊、単行本P171)
「プーシーの丘から登ると・・・(省略)・・・蛇行しながら緑の密林の間を流れるメコン川を遥かに望むことができる。」
文藝春秋刊、単行本P172)
悠久なる、穏やかなメコンの流れ
プーシーの丘から眺めたメコン川、直線的で静かな流れ
プーシーの丘から眺めたナムカーン川、蛇行して流れはダイナミック
乾期なので川肌が見える
メコン川の船上レストラン、川の流れが激しいと船上レストランは成り立たない
はじめてルアンパバーンを訪れたのは、2009年、法政大学の小松光一先生に誘われてのことである。
フアイサーイを朝の9時5分に出発し、午後6時10分にルアンパバーンに到着した。
約9時間のメコン川下りの旅であった。
メコン川は黄褐色に濁っており、けっして美しい水の色ではないが、流れはゆったり穏やかなものであった。
当時はルアンプラバンと呼ばれており、みんな貧しいのに、穏やかな顔つきをしている事に驚かされた。
ナイトマーケットでは、近隣の村々の手工芸品が販売されており、そのレベルの高さにも驚かされた。
それから、2019年までにインドシナ半島を11回訪れ、ルアンパバーンには7回滞在している。
カンボジア、ベトナムでは地球温暖化の影響かメコン川の氾濫が報告されているが、
上流のラオスにおいてメコン川が氾濫したことは聞いたことがない。
雨期、乾期を問わず、メコン川の流れは穏やかである。「山間を行く川の流れは荒々しく速く」と記されているが、
山間とは具体的に何処なのか?ルアンパバーンのメコン川沿いは平地で「山の間」は存在しないが。
たしかに、川は濁っていて美しくはない。しかし「こんな川は今まで他のどこでもみたことがない。
・・・(省略)・・・僕の中にある川というものの観念を・・・根底から変更してしまうことになる。」
「そこには「不穏な」「得体のしれない」とも表現したくなるような気分さえ感じられる。」と記述するほどに特異なものなのか。
プーシーの丘からの眺めを描写されているが、プーシーの丘から見たメコン川は直線的で蛇行などしていない。
メコン川の支流のナムカーン川と錯覚されているのでは?
地球の歩き方(ラオス編、P16)にも書かれているように、ルアンパバーンは山深い「猫の額ほど」の平地であり、密林など存在していない。
今も、私の前を流れるメコン川は、穏やかで「悠久の大地、メコンの恵み」を感じさせる川である。
メコン川以上に流れの激しい、濁った川はどこにでもある。
インドのバラナシのガンジス川の流れはもっと激しく、水は濁り汚れている。
中国の黄河も流れは荒々しく、濁り、時に氾濫をおこしている。
大阪の道頓堀川の水の濁りは、メコン川と比較にならないぐらいに汚れている。
鬼怒川の堤防が決壊した時の、怒涛のような水の流れに比べれば、
メコン川の流れは「豊島園のプール」の水流に等しい。
旅エッセーは事実に基づいて記載されるべきであり、フィクションの感覚で書くべきではない。
あり得ない「誇張」や「捏造」は許されるものではない。サプリメントの通販番組ではない。
公式に出版された出版物は「個人の感想です」で済まされるものではない。
上空から見た、ルアンパバーンの街とメコン川
右下が半島部と支流のナムカン川。機体の奥、
プロペラの翳の右側に飛行場の滑走路が見える
(追記)
メコン川の描写は実に素晴らしい。村上春樹の言語能力と想像力、フィクション作家としての、あり余る才能を感じる。
心情に訴えかける文章表現は、それが例え「デタラメ」でも、ぜひ見習いたいぐらいだ。
ラオス領内を流れるメコン川は全長1898Kmに及ぶが、村上春樹自身が述べているように、
ルアンパバーンは、「かなりこじんまりした街」だ。したがい、メコン川の距離もきわめて短い。
彼が認識しているルアンパバーンの大きさからすれば、せいぜい2Kmぐらいであろう。
私の認識でも3,2Km程度であろう。ルアンパバーンは平地で構成されており、
半島部に「プーシーの丘」という高さ150mの小山があるぐらいだ。
見渡せばメコン川からはるか離れて、カスミがかかるぐらいの距離に、
丘のような低い山が幾らかあるぐらいだ。
「山間を流れる川の流れは荒々しく速く」と書かれているが、ルアンパバーンは平野部で山間など何処にも存在しない。
「雄々しく流れるメコン川」に至っては「雄々」ではなく悠々の間違いではないか。
誰かの表現を借りれば「20,000パーセント」作り話だ。
メコン川に関する描写は、読者に誤解を与えるので削除されるか、書き直されるのが良いかと考えます。
「でもそれは決して平和で穏やかな川ではない。・・・(省略)・・・、それでも山間を行く川の流れは荒々しく速く、
水は大雨の降った直後のようにどこまでも茶色く不吉に濁っていた。」
(文藝春秋刊、単行本 P157)
「メコン川の持つ深く神秘的な、そして薄暗く寡黙なたたずまいは、湿った薄暗いヴェールのように僕らの上に終始垂れ込めている。
そこには「不穏な」「得体の知れない」とも表現したくなるような気分さえ感じられる。」
(文藝春秋刊、単行本 P158)
「-おそらく、あまりにも流れが激しく、そしてあまりにも濁りすぎている、こんな川は今まで他のどこでも見たことがない。・・・(省略)・・・
僕の中にある川というものの観念を少しばかり、でもけっこう根底から変更してしまうことになる。」
(文藝春秋刊、単行本 P160)
「しかし一歩街の外に出れば、そこには泥のように濁った水が雄々しく流れるメコン川があり、・・・」
(文藝春秋刊、単行本P171)
「プーシーの丘から登ると・・・(省略)・・・蛇行しながら緑の密林の間を流れるメコン川を遥かに望むことができる。」
文藝春秋刊、単行本P172)
悠久なる、穏やかなメコンの流れ
プーシーの丘から眺めたメコン川、直線的で静かな流れ
プーシーの丘から眺めたナムカーン川、蛇行して流れはダイナミック
乾期なので川肌が見える
メコン川の船上レストラン、川の流れが激しいと船上レストランは成り立たない
はじめてルアンパバーンを訪れたのは、2009年、法政大学の小松光一先生に誘われてのことである。
フアイサーイを朝の9時5分に出発し、午後6時10分にルアンパバーンに到着した。
約9時間のメコン川下りの旅であった。
メコン川は黄褐色に濁っており、けっして美しい水の色ではないが、流れはゆったり穏やかなものであった。
当時はルアンプラバンと呼ばれており、みんな貧しいのに、穏やかな顔つきをしている事に驚かされた。
ナイトマーケットでは、近隣の村々の手工芸品が販売されており、そのレベルの高さにも驚かされた。
それから、2019年までにインドシナ半島を11回訪れ、ルアンパバーンには7回滞在している。
カンボジア、ベトナムでは地球温暖化の影響かメコン川の氾濫が報告されているが、
上流のラオスにおいてメコン川が氾濫したことは聞いたことがない。
雨期、乾期を問わず、メコン川の流れは穏やかである。「山間を行く川の流れは荒々しく速く」と記されているが、
山間とは具体的に何処なのか?ルアンパバーンのメコン川沿いは平地で「山の間」は存在しないが。
たしかに、川は濁っていて美しくはない。しかし「こんな川は今まで他のどこでもみたことがない。
・・・(省略)・・・僕の中にある川というものの観念を・・・根底から変更してしまうことになる。」
「そこには「不穏な」「得体のしれない」とも表現したくなるような気分さえ感じられる。」と記述するほどに特異なものなのか。
プーシーの丘からの眺めを描写されているが、プーシーの丘から見たメコン川は直線的で蛇行などしていない。
メコン川の支流のナムカーン川と錯覚されているのでは?
地球の歩き方(ラオス編、P16)にも書かれているように、ルアンパバーンは山深い「猫の額ほど」の平地であり、密林など存在していない。
今も、私の前を流れるメコン川は、穏やかで「悠久の大地、メコンの恵み」を感じさせる川である。
メコン川以上に流れの激しい、濁った川はどこにでもある。
インドのバラナシのガンジス川の流れはもっと激しく、水は濁り汚れている。
中国の黄河も流れは荒々しく、濁り、時に氾濫をおこしている。
大阪の道頓堀川の水の濁りは、メコン川と比較にならないぐらいに汚れている。
鬼怒川の堤防が決壊した時の、怒涛のような水の流れに比べれば、
メコン川の流れは「豊島園のプール」の水流に等しい。
旅エッセーは事実に基づいて記載されるべきであり、フィクションの感覚で書くべきではない。
あり得ない「誇張」や「捏造」は許されるものではない。サプリメントの通販番組ではない。
公式に出版された出版物は「個人の感想です」で済まされるものではない。
上空から見た、ルアンパバーンの街とメコン川
右下が半島部と支流のナムカン川。機体の奥、
プロペラの翳の右側に飛行場の滑走路が見える
(追記)
メコン川の描写は実に素晴らしい。村上春樹の言語能力と想像力、フィクション作家としての、あり余る才能を感じる。
心情に訴えかける文章表現は、それが例え「デタラメ」でも、ぜひ見習いたいぐらいだ。
ラオス領内を流れるメコン川は全長1898Kmに及ぶが、村上春樹自身が述べているように、
ルアンパバーンは、「かなりこじんまりした街」だ。したがい、メコン川の距離もきわめて短い。
彼が認識しているルアンパバーンの大きさからすれば、せいぜい2Kmぐらいであろう。
私の認識でも3,2Km程度であろう。ルアンパバーンは平地で構成されており、
半島部に「プーシーの丘」という高さ150mの小山があるぐらいだ。
見渡せばメコン川からはるか離れて、カスミがかかるぐらいの距離に、
丘のような低い山が幾らかあるぐらいだ。
「山間を流れる川の流れは荒々しく速く」と書かれているが、ルアンパバーンは平野部で山間など何処にも存在しない。
「雄々しく流れるメコン川」に至っては「雄々」ではなく悠々の間違いではないか。
誰かの表現を借りれば「20,000パーセント」作り話だ。
メコン川に関する描写は、読者に誤解を与えるので削除されるか、書き直されるのが良いかと考えます。