Une petite esquisse

日々の雑事の中で考えたこと、感じたことを徒然に書き綴ります。

出版人の良心

2011年09月23日 | 社会学/社会批評
 中島誠之助と言えば、おたから鑑定団というテレビ番組で「いい仕事してますね」の言葉で有名になった人である。彼の著書、角川新書の「ニセモノはなぜ、人を騙すのか?」を読んだ。
主張が曖昧で、ニセモノに対する彼の態度がはっきりしない。日本の伝統に拘りすぎて、日本と日本人を矮小に考えているように思える。文化を論ずるなら、もっと正しい知識と広い視野で物事を考えてもらいたい。
 180ページに「日本は気候温暖で・・・農耕民族だから、狩猟民族に比べて略奪を好まないという風土がある」と書いてあるが、世界の歴史を見れば、狩猟生活から農耕生活に移行した時から略奪が起こり、殺人がおこったことは自明のことである。
 彼が述べているように日本人が農耕民族なら「狩猟民族とちがい略奪を好み、殺戮を好む」とすべきだろう。だが、そうすれば、彼が述べようとする日本の伝統や日本の文化に対する論理が根底から成り立たなくなる。
 飯田橋に行く道すがら、角川書店に記述内容に間違いがあると問い合わせた。そうすると「一読者の意見として聞いておきます」とのことであった。角川書店にとつて、一読者はこんなにも軽い扱いなのかと思ったが、売り言葉に買いコトバ「こんな素人さんの書く文章、編集部でちゃんとチェックしてないんですか?」と言い伝えてきた。それ以降、今日まで何の回答もない。
 読者から、間違いを指摘されれば、検討し、間違いがあれば訂正するのが出版人の良心だと思うが、角川という大手出版の奢りか、読者の指摘など、どうでもよいのか、こんな出版社が日本の文化をダメにしている様に思うが。
 青山通りの骨董店での、中島誠之助の評判はすこぶる悪いが、この本を読めばなんとなく評判の悪い理由が理解できる。
骨董と言う魑魅魍魎の世界で「いい金儲けしてますね」とヒトコト言いたい。