Une petite esquisse

日々の雑事の中で考えたこと、感じたことを徒然に書き綴ります。

ラオスの危ない綱渡り(2)

2020年06月14日 | 社会学/社会批評
ラオス高速鉄道建設を中国が放棄か





メコン川に架かる高速鉄道の橋桁(ルアンパバーン) 2020年3月2日撮影

 かつてラオスを植民地化したフランスはインドシナ諸国を鉄道網で結ぼうと計画したが
工事があまりにも困難で断念した。中国が主導するラオスの鉄道建設工事は2010年10月に
計画に着手、2014年に完成予定だったが、中国側で汚職事件が発覚し、工事は無期限延期
となっていた。
 2016年に突如、工事が再開され、2021年に完成が予定されている。
 鉄道は中国の昆明からラオス国境のボーデンを通りルアンパバーンを経由して首都ヴィ
エンチャンに至る427、2kmを結ぶ単線である。将来的にはタイのバンコクからマレー
鉄道へ接続し、シンガポールまで追伸を計画している。北京からシンガポールまで鉄道での
通行が可能になる。
 鉄道工事が急ピッチで進められ、中国語の看板が林立し、大きなゲートの下を中国語表記
の大型トラックが砂埃をあげ、ひっきりなしに出入りしている。深緑の山肌が削られ黄土が
無残に露出している光景が眼に入る。自然環境への悪影響をかえりみず、中国式に強引に工事は
すすめられている。
 3月初旬、ルアンパバーンを訪れた折、メコン川に架かる高速鉄道の橋桁を見て工事は順調に
進んでいるように思えたが、「中国が鉄道建設を放棄し、ラオス人労働者への賃金支払い
が滞っている」とのニュースが入ってきた。
 アメリカ政府系の放送局「ラジオ・フリー・アジア」が伝えるところによると、ラオスで
新型コロナウイルスの感染が確認されて以降、雇用主の中国人が突如姿を消して中国へ帰り、
連絡が取れない状態である。賃金が未払いのままで、ラオス人労働者が生活に困窮をきた
している。ラオスの国家鉄道局に問い合わせても回答のない状態が続いている。
 ラオス中国高速鉄道計画は習近平が推し進める巨大経済圏構想「一帯一路」の南進版とい
える、この鉄道建設により中国は南洋に通じる交易路などを確保できることになる。
 開発事業によって土地を収用された住民は安い補償額しか得られず、代替地は農業に適さず
農業を放棄せざる状況にある。
 鉄道開発により森林が伐採され、水源が枯渇し、動植物の生態系が破壊されて生活が出来なくなる。
貧困削減対策の開発事業によって、さらに貧困は推し進められていく。