たまゆら夢見し。

気ままに思ったこと。少しだけ言葉に。

我が背子 大津皇子 山辺皇女23

2019-08-12 08:07:39 | 日記
伊勢に旅たれ数日して大津さまがおられないと寂しく思うようになってしまった。

皇太子という重責にある方だからまたこの大和に戻られる…

そんなことは冷静に考えれば至極当たり前なのに…

香具山に連なるこの丘に立ち、この大和を見渡す。

大津さまがいないこの大和に私はどう立っていればいいの。

でも大津さまは伊勢で大伯の姉上さまにお会いになられ、きっと私にも見せない表情で大伯の姉上さまを見つめておられる…

見たこともないくせに、でも鮮やかにこのまぶたに浮かぶ…

死がまるで生の向こうにある隣り合わせだと知らしめてくれるように。

少し冷たい秋風が衣の間をすり抜けていく。

大和に大津さまがお出でになられる時大伯の姉上さまはこんなに狂おしくなられているのかしら。

否、神妻で斎王にあらされる姉上さまは私などに嫉妬はなさらない。

大津さまと離れておられる時間は修練として大津さまのお幸せをお祈りしておられるのだろう。

姉弟であるけれど禁忌とは思わない。

特別な眩しい存在。

何故か…近江京で見たことのあるまだ大伯さまがまだ十歳を過ぎられた頃のお姿をお見かけしたことがある…

幼き大津さまをしっかりとお守りし、凛とし幼顔にもこれから咲く美しく花のように全ての美しさを持ち合わせおいであったことを幼心にも忘れられない。

大津さまも、そのような姉上さまのもとで道作を連れ快活にされていた。

見目麗しい皇子…その頃から私は大津さまに憧れていた。