大津さまが伊勢におられるというのに大津さまの舎人のシラサギが私のもとを訪れた。
「シラサギ…大津さまに何かあったのか。」
「いえ、山辺皇女さまが如何お過ごしなのか、一度戻って欲しいと。社殿の修理にはもう少し時間がかかることも伝えて欲しいと。」
「そうか。そなたも疲れたであろう。言伝だけでそなたのような舎人を遣わせ申し訳ない。」と言うと
シラサギは慌て「それだけではありませぬ。」と言うので
「大名児殿のところにも行かねばならぬからか。」と私が笑って言うと「違います。山辺皇女さまにこれを預かってきたのでございます。」とシラサギは桐箱を差し出した。
桐箱を開けると白く輝く珠の首飾りであった。
「これは。」とシラサギに訊ねると「大津さまと斎王さまから皇女さまにとのことで、斎王大伯さまからは白絹の衣のお礼とお伝えするようにとのことでした。大津妃、我が義妹に、と確かに伝えるようにと仰せになられました。」と言った。
「有り難く…有り難くお受けするとお伝え出来るか。」と私は心が震えて泣き声になりそうであった。
あの眩しいほどのお二人に譲り受けたこの美しい白い珠の首飾りに…あの美しい大伯さまに初めて大津さまの妃とお認め頂いたように思えて…
「シラサギ、伊勢に戻るか。」
「はい。」
「大伯皇女さまに、山辺は有り難くお受けしたこと、山辺の宝にいたしますとお伝え願うがよろしいか。
大津さまには、山辺は息災なく過ごしておると、お二人のお気持ちにただ感謝しかないと伝えてくれるか。」
「御意にございます。」とシラサギは言いこの館を後にした。
シラサギは大名児のもとに参ったのかもしれぬ。しかし、そんなことはどうでもよくあの美しい大伯さまと白い珠というかたちであるがこころが通ったようで嬉しかった。
しばらくして大津さまが戻られた。
伊勢にお行きなるよりも朗らかな笑顔が多かった。
本当に幸せな時間が季節とともに流れた。
しかししばらくして天武天皇陛下がお倒れになられ、ことが早急に悲しみへと向かっていくとは知らずに…誰も予期しないまま。
否、不比等は待っていたやに知れぬ。
「シラサギ…大津さまに何かあったのか。」
「いえ、山辺皇女さまが如何お過ごしなのか、一度戻って欲しいと。社殿の修理にはもう少し時間がかかることも伝えて欲しいと。」
「そうか。そなたも疲れたであろう。言伝だけでそなたのような舎人を遣わせ申し訳ない。」と言うと
シラサギは慌て「それだけではありませぬ。」と言うので
「大名児殿のところにも行かねばならぬからか。」と私が笑って言うと「違います。山辺皇女さまにこれを預かってきたのでございます。」とシラサギは桐箱を差し出した。
桐箱を開けると白く輝く珠の首飾りであった。
「これは。」とシラサギに訊ねると「大津さまと斎王さまから皇女さまにとのことで、斎王大伯さまからは白絹の衣のお礼とお伝えするようにとのことでした。大津妃、我が義妹に、と確かに伝えるようにと仰せになられました。」と言った。
「有り難く…有り難くお受けするとお伝え出来るか。」と私は心が震えて泣き声になりそうであった。
あの眩しいほどのお二人に譲り受けたこの美しい白い珠の首飾りに…あの美しい大伯さまに初めて大津さまの妃とお認め頂いたように思えて…
「シラサギ、伊勢に戻るか。」
「はい。」
「大伯皇女さまに、山辺は有り難くお受けしたこと、山辺の宝にいたしますとお伝え願うがよろしいか。
大津さまには、山辺は息災なく過ごしておると、お二人のお気持ちにただ感謝しかないと伝えてくれるか。」
「御意にございます。」とシラサギは言いこの館を後にした。
シラサギは大名児のもとに参ったのかもしれぬ。しかし、そんなことはどうでもよくあの美しい大伯さまと白い珠というかたちであるがこころが通ったようで嬉しかった。
しばらくして大津さまが戻られた。
伊勢にお行きなるよりも朗らかな笑顔が多かった。
本当に幸せな時間が季節とともに流れた。
しかししばらくして天武天皇陛下がお倒れになられ、ことが早急に悲しみへと向かっていくとは知らずに…誰も予期しないまま。
否、不比等は待っていたやに知れぬ。