徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

世界の車窓から ~ラインの黄金 Das Rheingold~

2014年10月29日 | 旅行


「ラインの黄金」(ドイツ語でDas Rheingold)とは、オペラ等でご存知の方もいらっしゃると思いますが『ニーベルングの指環』のモチーフになっているドイツの伝説です。秋のライン河畔はまさしくその名前に相応しい美しさ。1日ぽっかり予定が空いたので、ライン河に沿ってのんびりと各駅停車の旅をすることにしました。



フランクフルト中央駅から「大司教の町」マインツまでは、ドイツ鉄道の準急で30分ほどです。今は日本代表FW岡崎選手がプレーしている「1. FSV マインツ 05」があることで町の名を耳にした方もいるかもしれませんが、もともとは神聖ローマ帝国・選帝侯筆頭のマインツ大司教が君臨した長い歴史を誇る町。今もドイツで指折りの規模の大聖堂が残っています。 ※詳しくはwiki先生の「マインツ大司教」の項をどうぞ。

カトリックが欧州の価値観のすべてを支配していた時代に、アルプス以北の「教皇の代理人」として絶大な権力をふるった歴代大司教の「夢のあと」をたどることから、今日の旅はスタートです。


 
ボンバルディア製RB車両


マインツ中央駅


今回ドイツに関してはガイドブックすら持ってこなかったのですが、そこは踏んでる場数が違う!w 旅慣れ勘というもので。DBカードの25%割引(ドイツ居住者が購入できるDBの割引つき年会員カード。家族や友人たちとのグループ割引など特典多数!)も駆使して、ちゃちゃっと切符を買い(切符自販機は英語含む欧州の主要言語に対応)、あっという間にマインツへ到着しました。


マインツ市街地。地図がなくても適当に駅前の掲示板を見て確認!w


大聖堂正面




門前の市場 地元の人も観光客も混じってにぎやかです。






ホール内部




内部装飾や壁龕


イタリアのように絢爛豪華ではありませんが、ドイツのカトリック教会や大聖堂は質実剛健というか、簡素な石組みと色彩の少ない内部装飾(時に華麗なステンドグラス装飾も見かけるものの)が特徴で、ひんやりした堂内の空気ともあいまって、どこか心落ち着くものがあります。


マインツの街角ではこんなものも。キティちゃん痛車!?









街角の風景。








拝観後はライン河畔へ。ケルンやデュッセルドルフへのクルーズツアーも出ています。
ここでも白鳥や鴨が人なつこく餌をねだりにやって来ました。



マインツのシンボル、赤地に白の車輪をあしらった旗。
ラインゲルト劇場の真横にあります。



中世の遺構も街の所々に。十字架とオベリスク。
 

1. FSV マインツ 05のファンショップ。




         
この時点で、まだ14時!あまりにお天気がいいのと、少し遠出をしたくなったので「ライン河畔の紅葉と古城を見に『世界の車窓から』してみよう♪」と、駅に戻ると、ちょうど14:32発のコブレンツ行き普通電車がありました。
確かこの路線はICE高速路線専用トンネルなどで見ることができない、ライン河のすぐ横を蛇行しながら下って行く路線だったよな、と記憶を掘り返します。きっと美しい景色を堪能できるはず!駅の売店で買ったお昼代わりのピザ一切れにオレンジジュースを持って、いざ出発!


私鉄・ミッテルライン鉄道。マインツ~コブレンツ/ボン/ケルン間を走る普通電車。


ちなみにドイツの鉄道を分かりやすく要約すると、各停~超高速鉄道の順にこんな感じの名前&種類分けとなります。

RB:レギオナルバーン(普通・各駅停車)
RE:レギオナルエクスプレス(快速・準急)
IC:インターシティ(ドイツ国内都市間特急列車)☆ 
ICE:インターシティエクスプレス(ドイツおよびヨーロッパ各地の主要都市を結ぶ特急列車)☆

RB以外は1等車と2等車に分かれている(切符の値段が違う)のが普通で、☆印のついたものは特急料金や特別料金が必要です。鉄ナントカではありませんが、こういうのが好きでしてw行く先々の国では駅舎内やプラットフォーム、時刻表を興味津々で眺めては写真を撮って喜んでおります。



コブレンツまでの営業キロ数はざっと90km、運賃は割引を使って14ユーロ。Googleの路線検索にも出てこない各駅停車は途中で貨物列車の通過待ちや、単線のすれ違い時間調整を行いながら、たっぷり2時間かけて蛇行するライン河を追いかけて行きます。この路線はクルーズでも人気で、船に乗ると同じ区間が6時間(!)もかかるとか。さすがに日帰りではちょっと無理、というかもったいないですね。







車窓はゆるやかに過ぎ、河畔に数多くある古城と、斜面に広がる黄葉した葡萄畑、岩山と色とりどりの木々の合間に白壁のまぶしい小さな村が見え隠れしていきます。とある夏休みにこの区間をICEで通過した際は、薄暮の時間帯でもあり、またトンネルばかりでほとんど景色を楽しむことができなかったので、これほどに美しいものかと言葉もなく眺めるばかりです。





沿線の古城や街の数々(ネコ城とかネズミ城など面白い名前のついたものもw)河が大きく弧を描くビンゲンの駅に10分ほど停車している間に、丘陵を覆う豊かな葡萄畑の中にそびえる「Niederwalddenkmal・ニーダーヴァルト記念碑」(1871年普仏戦争後のドイツ帝国発足を記念して建設されたモニュメント)を遠く眺めることができました。このあたりはハイカーやキャンパーにも人気で、リュックを背負った学生らしきグループや年配の夫婦連れが途中の駅に着く度に楽しげな笑い声を上げて乗り込んできました。





実はライン河の両岸にそれぞれ鉄道が走っているのですが、ちょうど午後の陽光が西から差し込む形になり、私の乗ったミッテルライン鉄道は西岸路線だったこともあり、すばらしい写真日和となりました。時間が許せば途中駅で降りてゆっくりと写真を撮って回りたいほどでした!



対岸を走るヴィースバーデン方面へ向かう列車。



ただの岩山と言う勿れ!これがローレライ。


列車も空気を読んで?ローレライ前で5分ほど貨物列車の通過待ち。川面にはたくさんのクルーズ船が。日陰に入るとライン河のどこまでも深い青さが際立って、白と青のそれはそれは美しいコントラストでした。





 

コブレンツ中央駅に到着したのは16:30。

帰りの時間だけ先に調べると、17:48のIC(マインツ乗り換え、フランクフルト19:37着)が帰宅予定の時間&お値段的にもちょうど良かったので購入。ICE/ICを使うのと使わないのでは所要時間が半分以下だったり、料金が2倍近かったりとバリエーションも豊富になりますが、こうした選択もすべて駅の切符自販機で(英語表示で)できてしまうのが、ドイツ一人旅にはありがたい限りです。

ガイドブック持参せず、とはいえ「コブレンツといえば?」お約束!モーゼルとライン、2つの大河が交わる地。
滞在できるのが1時間少々とはいえ、絶対に見ておきたい!と思ったのがここです。 「ドイチェス・エック」(Deutsches Eck、「ドイツの角」)

駅前のターミナルで、止まっていたバスの運転手に片言のドイツ語で話しかけると、非常に流暢なドイツ語で返されてしまい(笑)とりあえず「そこには行かない」というのだけは理解できた(路線図でその番号のバスが目的地に行かないことはわかっていた)ので「近くまで行ければいい、あとは歩く」と英語で伝え、切符を買い乗車します。
乗車後はなるべく(すぐに乗降の意思表示ができるように)運転席の近くで立っていたら、親切にも「ここで降りるんだよ」と多少おぼつかないながらも運転手さんが英語で教えてくれたりして、感謝感謝。←家族曰く「地方都市のバスで、運転手が英語で教えてくれるなんて結構すごいことだよ?」とか。そうなのか!w

本当はもっとゆっくりできたら良かったのですが、とりあえず最大にして唯一の目的に到達!!!

ドイツ帝国初代皇帝ヴィルヘルム1世像とライン河沿岸の各連邦州旗。


合流地点(下流側を望む)


モーゼル側。


ライン側。



対岸には巨大な城があり、ロープウェイで上って行けるようになっています。
今回は時間がないので断念!きっと素晴らしい夕日が眺められたのではないかと思います。







さあ、そろそろ時間の気になる頃。バスもなかなか来ないので、コブレンツ市街をやや小走りに(笑)2キロほどの道程を中央駅に向かって戻って行きます。これに乗り遅れるとお金の無駄+また各駅停車で2時間かけてマインツに戻るはめになります(ICEに乗り換えるには追加料金が必要なのと、一度買った切符は車内でおいそれと変更手続きができない面倒臭さがあります…)2キロを速歩はキツかった~!それでも、息せき切って駅に着いたのは17:42でした!間に合った!!!




         
帰りの時間帯は既に山の陰に日が落ちた黄昏時。空の青か、水の青を溶かして淡く染めたような景色は昼間の鮮やかな色彩とはまた違っていいものです。ちょうど4人がけで向かいの席に座った老紳士が(お嬢さん、どこから来たのかね?アジアの人とお見受けするが。私は出張先からバイエルンのヴュルツブルグに帰る途中でね、とドイツ語での片言会話で聞いた)やはり嬉々として写真を撮っていたのが印象的でした。未だに(必要に迫られないせいで)ドイツ語はあまりできませんが、日中に撮った写真を見せたりして、マインツまでの1時間は思いもかけず楽しく過ごしました。







これぞ、まさしくラインの黄金!











マインツ駅からRE/区間快速に乗り換え(件の老紳士はバイエルン方面行きのICEに乗り換え。「気をつけて、良い旅を~!」と満面の笑顔で手を振ってくれました)フランクフルトまでは30分。そう遅くもならず、無事に中央駅に帰ってきました。

片道2時間少々でこんなにも素晴らしい小旅行ができたことと、お天気の神様に感謝した1日でした!