徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

世界の車窓から ~ICEとドイツ(&スイス)の列車いろいろ~

2014年10月29日 | 旅行
「ICE:Inter City Express」と、ドイツ国内で見た様々な電車&列車について、もう少し詳しく語らせてください!w もっとも私はいわゆる鉄道マニアではないので、見た&乗ったままの感想に終始してしまうことをお許しくださいませ。

《ICE》




日本の東海道新幹線700系に代表される、ジンクホワイトに寒色カラー+カモノハシ型ノーズではなく、ICEは「サンダーバード」や「しらさぎ」「はくたか」を思わせるなめらかなノーズと、クリームホワイトにバーミリオンの暖色系のラインカラー、ライトグレーのロゴで、どこか人肌の温かみを感じるデザインを持っています。



ICE路線図

ICEのスペックや歴史についてもっと知りたい方はwiki先生へ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ICE







ノーズ部分も製造年代によってバリエーションが。客車と機関車が別々のもの、客車の先頭&最後尾車両に機関部分を備えているもの、編成も8両、6両、2編成連結(ヨーロッパではよくある話で、前半分と後ろ半分では行き先が違ったりするw)など。

以下、庶民クラス(笑)二等客車の話。内装は2列+2列の1列4席(フランスデザインの初期型成田エクスプレスのように固定座席、中央部分が4席向い合せ+テーブル)が基本的で、時々「全座席列が進行方向向き」の客車や、ちょっと懐かしい「コンパートメント型3列+3列客室」も併設している車両もあったり、バリエーションは複数あるようです。

座席は割とふかふかしていて、リクライニングも結構深くできるし、新幹線の普通車よりはいい感じ。長距離の利用を念頭に置いた「居住性重視」なのでしょうか、プレミアムエコノミー的な座席です。ちなみにコンパートメント型の客室を見ると、思わず「ホグワーツ特急…」と思ってしまうワタクシでありますw


二等車の客車内 

面白いのは、一編成に必ず「Board Restaurant」という食堂車が連結されていること!車内販売も時折通りかかりますが、日本の新幹線のように「歩くコンビニ」ではなく、シンプルにコーヒーなどを持ってくるだけなので、何か用があるなら出向いた方が早いという面も。日本では一部の超長距離豪華列車以外見かけることもなくなった「食堂車」、まだまだヨーロッパでは現役です。


グルメの国イタリアなどでは食堂車と言えども侮るなかれ、街のレストラン顔負けの美味しい一皿やワインを出してくれるそうなので、ぜひ機会があれば試してみたいと思っています。


ICE『Hannover ハノーファー』@ケルン駅





≪CNL≫

国と国とが陸続きのメリットを生かして、City Night Line(CNL/シティナイトライン)と呼ばれる超長距離を走る国際夜行列車も運行されています。長いものでは20時間以上、1000キロ以上の運行距離を誇るものもあります。

詳しくはこちらのリンクへ。
http://eurlink.jp/CNL.html



安い夜行の電車なら「ムーンライトながら」のように座席が倒れるだけの普通のICE車両と変わらないものもあります。CNL車内は寝台車仕様でとてもキレイ!ただ利用するとなると運賃は飛行機とそう変わらない、下手をすると高くつくよ?とは相方の話。
今回は列車本体は見かけませんでしたが、駅ホームに張り出してある時刻表にCNL便名が載っていました。


これはベルリン‐フランクフルト‐チューリッヒを結ぶ『Sirius シリウス』そしてプラハ‐ドレスデン‐チューリッヒ路線の『Canopus カノープス』の時刻表と運行案内です。


☆CNL路線と列車名の一例

・アムステルダム-ケルン-コペンハーゲン『Borealis ボレアリス』
・アムステルダム-ケルン-ミュンヘン『Pollux ポルックス』
・アムステルダム-ケルン-チューリッヒ『Pegasus ペガサス』
・パリ-ハノーバー-ベルリン『Perseus ペルセウス』
・パリ‐ハンブルク『Andromeda アンドロメダ』
・コペンハーゲン‐ハンブルク-バーゼル『Aurora オーロラ』

夜行列車なので夜空の星や星座、神々にちなんだ名前ばかり!(ギリシャ神話のものですね)
ほら、何だかワクワクしてきませんか?





駅で少しでも時間があると、ホームのあちこちに走って行ってはそこにいる様々な列車たちのポートレートを撮ることに忙しかった私を見て、相方は「ホントに好きだねえ…」と傍でいろいろ説明をしてくれました。ちなみに彼の叔母が鉄道運行と管理に関する会社勤務で、最近まで某地区の列車運行に関する最高責任者の任にあったそうで、幼いころから列車や駅の話は身近なものだったとのこと。

「ICEの先頭車両に、都市名と紋章があるのは何故?どういう理由で命名されているの?」
「ICEの全編成が名前を持ってるのかはよくわからないけど、命名は『その列車が走る路線の沿線都市』から来ている場合が多いよ。例えば今隣のホームにいるICE『Arnhem アルンヘム(アーネム)』は、オランダのアムステルダムまで行く列車だし、さっき通って行った列車はベルリン行きの『Wolfsburg ヴォルフスブルク』だったよね?」
「ホントだ~!長谷部のいた街!」
「フランクフルトに来る時乗ったA380が『フランクフルト・アム・マイン』って名前って言ってたよね。DBも、空の旅と同じように列車の旅でも『何とか号』って名前の付いたICEに乗ることで、何か愛着や旅情を感じられるんじゃないかって考えたのかな?」
「そういえば『よど号』とか『もくせい号』ってあったな…」 ←いつの時代だ?



ICE『Bad Oldesloe バート オルデスロー』(北海沿岸のキール行き)


ICE『Lutherstadt Wittenberg ルターシュタット ヴィッテンベルク』(ベルリン行き)
以上2編成は@フランクフルト中央駅


「車両先端部の連結部分が開いたままのものと、閉じてるものが同時に走ってるんだけど、あれは何故?」
「本来は閉じていなければいけないものなんだけどねえ…う~ん」


↑ 開口部に注目!ひょっとしていい加減なのか?!
普通や準急ならいざ知らず、ICEがラクガキの犠牲になっているのは悲しい。


「ドイツでは鉄道自殺はないの?」
「そりゃ、あるよ」←いったい何てことを聞くんだ、とビックリ顔。
「日本では4~5月と12月が多いっていうけど、そういう傾向なんかもあるわけ?」
「聞いた話では11月だって言うね。夏が終わって、気持ちのいい秋から寒くて湿気が多くて滅入るような冬になっていくのが耐えられない人が多いからとも聞いたよ。実際、寒いことよりも日照時間が短くなっていくことの方が、気分としては憂鬱になるものだし」
「ICEは300km/hで運行してるけど、私が見た限り沿線の柵とかフェンスは無い場所も多くて、専用の高架を持ってる日本の東海道/山陽新幹線ではまず考えられない!って思ったよ」
「DBも安全対策は十分にしたいのは山々だけど、何せ総営業キロ数がハンパないのと、人里離れたところを走る高速軌道にまでフェンスを…ってのは正直無理だと思ってるんじゃないかな?ヒトだけじゃなくて、放牧中の馬や牛とぶつかる事故も少なくはないそうだし」
「ひえぇ…」
「叔母さん(=DBのとある運輸区の運行責任者を長年務めていた)は夜中でも人身事故が起きると叩き起こされて、現場検証に付き合わされたって言ってたしね。鉄道事故ってひどいじゃない?だから夜中に夢にうなされるような経験も何度となくしたそうだよ」


何処も同じ、か…。(^^;


超長距離を走る国際列車ゆえに製造元や所属会社(国籍)も気になるというもの。私の見たICEはほとんどがDB所属のものでしたが、スイス国鉄やオランダ国鉄の車両も国境を越えて走っているそうです。レール幅はどの国でも統一されていますが、一部の国では標準より狭いレール幅のものを使用しているため、台車の交換や軌間可変型の車両もあるそうです。


この子はジーメンス社製。他にクルップやボンバルディアのものも。ボンバルディアはカナダの会社と思っていましたが、「ボンバルディア・トランスポーテーション」という鉄道部門は本社が在ベルリンなんだそうな。





あるとき、ケルンからフランクフルトに帰る際、予定よりも40分も早く駅に着いたせいで写真撮り放題!相方は「もっと早い時間のに変えられなかったの?って怒ってたくせに、列車見て目の色変わったw」と呆れ笑いしてましたが…。

「このホームの前のほうに『Thalys タリス』がいるみたいだから、見に行っておいで。まだ発車まで時間かかるようだってアナウンスしてたし」
「え…?あっ!ホントだ!!!」

『Thalys タリス』とは、フランス・ベルギー・オランダ・ドイツの4カ国を結ぶ「国際新幹線」とでもいうべき特別特急列車です。この子の姉妹が『Eurostar ユーロスター』や『TGV』と言えば、分かりやすいでしょうか。(カラーリングが違うだけで、基本設計はTGVです)




この子はドイツ乗り入れ仕様

何か途中でトラブルがあったのか、ケルン駅に3時間40分遅れで到着したというタリスは、このあと4時間遅れで折り返してパリ北駅に向かう運行スケジュールでした。ケルン―パリ間の所要時間は3時間少々。便利なものです。飛行機よりも断然楽よね、という訳でオランダ~ベルギー旅行の時は大変役に立ちました。




夕陽を浴びたワインレッド色の車体が美しい!








こちらはフランス国鉄SNCFのTGV@バーゼル中央駅。
(SNCF = Société Nationale des Chemins de fer Français)



おまけ。(英仏海峡線:ユーロスター) ※借り物です
三姉妹だから顔も似てるでしょ?


もともと「美しいもの」は大好きですが、こと列車や車、文房具や家具のような「実用」を目的とした工業デザインは本当に見ていて楽しいです。機能美と実用性のバランスをどのあたりにおいているのか、それは使う側の私たちとデザイナーや生産者の意識を「感覚としてダイレクトに繋げる作業」のような気がしています。





《ローカル線、私鉄》

ICEが新幹線、特急だとしたら、当然「普通/各停」「急行/快速」なんかもあるわけです。そして日本ではもはや限られた数都市でしか生き残っていない「路面電車(トラム)」も、欧州大陸各国ではごく普通に運行されています。

車の2車線ですら厳しいような細い路地でも、トラムが石畳に埋め込まれたレールに沿ってベルを鳴らしながらゆっくり走っていくのは、ヨーロッパ的時間の流れ方を象徴するシーンだと思っています。(時刻表もあってないようなものだし、次のを待つうちに路線に沿って歩いたほうが早かったりw)


トラムinバーゼル


トラムいろいろ。


この写真、自転車が線路の邪魔をしていたので除けてあげたら、運転手さんが満面の笑顔で「チリン♪」とベルを鳴らして通り過ぎてくれました。





ICEが長距離輸送の花形なら、通勤や生活の足になるのがこちら。

「普通/各停」レギオナルバーン(Regional Bahn,RB)
「急行/快速」 レギオナルエクスプレス(Regional Express,RE)








機関車と客車の連結型もあれば、電車型のもあります。輸送力と乗車スペースの確保を念頭に置いたデザインなのか、ダブルデッカーの車両も珍しくなく、サイクリストの多い欧州らしく自転車持ち込み+固定のできるバーも普通に装備されています。

例えば通勤なら「駅までチャリ→チャリ持って乗車→駅から会社までチャリ」というのも理論的には可能ですし、休日ともなれば「目的地までは列車移動(この場合、自転車はまんま持ち込みもアリだし組み立て式だったりもする)→現地でサイクリング」も可能です。


スイス国鉄のRB


私鉄「VIAS」のRB


私鉄「タウナスバーン」の各停(バスみたいな小さなディーゼル車両!)


フライブルク駅停車中のRB


実際、私たちが日帰り旅行をしたエアバッハ(黒い森/シュヴァルツヴァルトの中の小さな町)方面に向かう私鉄は、サイクリングを楽しむ家族連れやカップルでいっぱいでした。

基幹路線をDBが運営している半面、地方の枝葉路線は私鉄が運営していることも多いです。


フライブルクからフランス方面に向かう私鉄RB




フランクフルトからダルムシュタットに向かうSバーン&沿線風景




フランクフルトのSバーンの駅と切符販売機





いろいろな顔を持つドイツの鉄道、運行に関しては時々ストがあったりトラブルに見舞われて遅れたり運休したり、大変なこともありますが(叔母は私が「ドイツの鉄道の旅って素晴らしいですv」と言ったら「でもねえ…w」と苦笑いしていました)私は「列車の旅大好き!」人間ですので、今後も折に触れてヨーロッパの旅をしつつその国の鉄道事情なども知っていきたいと思っております。