徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

BENT 京都公演

2016年08月07日 | 舞台
昨日は『BENT』を観に、京都劇場まで出かけてきました。



作 :マーティン・シャーマン
翻訳:徐賀世子
演出:森新太郎

出演:佐々木蔵之介 北村有起哉 新納慎也 中島 歩 
   小柳 友 石井英明 三輪 学 駒井健介 / 藤木 孝

(敬称略)


   ◇


8月6日という特別な意味を持つ日に、第二次世界大戦中のナチスドイツによる同性愛者への迫害を描いた作品です。この本質的で重厚なテーマを、佐々木蔵之介&北村有起哉というキャストで観ることができたことも、感慨深いです。

年に1~2回はこういう「深く考えさせられる」作品に出逢いたいものです。蔵之介さんと有起哉さんは評するに言葉は不要で、むしろ無力。元気になる、とか、面白い、というものでは決してありませんが、人間の尊厳、愛の本質に迫る、非常に上質な演劇作品に触れることができました。


(以下は覚書的な感想です)


あれだけ凄惨なストーリーを、ある種淡々と「昇華」させたかのような、今作の演出と芝居。だからこそ胸を打つ、だからこそ息もつけない程に引きずり込まれる。涙は一滴も流れない、もっと本質的で生の感情に向き合う。

観ているこちらの感情を胸の上から押さえ付けられて、あたかも主人公たちのように「感情の発露を許されない」状況を疑似体験する2時間45分。主人公の声無き慟哭は、観客の声をも奪う。ただ、観ていることしか出来ない。そして「彼」の選んだ結論を、やはり観ていることしか出来ない。

永遠の3分間、と呼ばれる圧倒的なクライマックス、苛酷だが淡々とした日常の中の狂気、愛、生への渇望が、ラスト15分の急展開に凝縮される。


間違いなく! 「2016年の観劇ベスト3入り確定!」


※ラストシーンで『渇いた太陽』の匂いが強烈に想起されたのは、テネシー・ウィリアムズもまた同性愛を扱った作品を多く出していたからかな、と。記憶を呼び起こされるような演出でした。


(雑記)
※北村有起哉さんの声の良さがこれでもかと堪能できた~!
※秀次様こと新納さんの美しさ&裾捌き&おみ足&歌の上手さ…!
※しかし、蔵さん舞台で脱ぐ役観ることが多いなぁ…(苦笑)
※それを言うなら出オチになりかねなかった小柳クンの登場シーンは…(冷汗)