徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
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また逢おうと竜馬は言った(キャラメルボックス Feat. D-BOYS)ACT.2 神戸公演

2016年06月23日 | 舞台



ACT2. 神戸公演(6/16~6/20)

これまでに東京遠征で観た3回。
5/29 ★
6/11 ★☆

ここに神戸の5公演が加わります。
6/16 ★
6/17 ☆
6/18 ☆★
6/19 ★
6/20 ☆大千秋楽

チケットは当日券とか引換券とか…仕事を言い訳にして良いならば、全て後手後手に回った挙句の不手際が今更ながら口惜しい!
公演直前でどの日もほぼチケット完売、ということに気づき「どんなに不利な状況でも私は絶対に諦めない!こうなったら初日半額券やキャンセル待ちも大いに利用してやろう!」と腹を括って、神戸初日・木曜の夜を待ち構えておりました。



④6月16日(木)ソワレ BLACK3回目
待ちわびた初日、定時退社で新神戸へ直行!
終演後の最初の感想は「これで巡業初日?!」東京千秋楽の熱気やパワー、エネルギーをそのまま持ってきたぜ!というような圧倒的な熱量でした。

あらためて魅力的な二人、BLACKでの岡田竜馬と陳内岡本は、それこそ10年来の「相棒(バディ)」のような関係性。
いろいろ足りないけど「潜在的な力」を感じさせる岡本と、それを大きく包み込んで見守る優しさと茶目っ気に満ちた、ひたすら明るい竜馬。
陳ちゃんの演じる岡本は、またひと回り大きくなっていた?説得力のあるお芝居。意気地なしでもヘタレでも、何故か愛嬌があって好青年で、真っ直ぐさを感じさせる「王道な」岡本イメージではなかったかと思います。と、言いますか、『駆け風』や『パスファインダー』『TRUMP』などで観た陳内くんは、やはり隠しようがない「華」のある存在感が身に備わっていたので、泥臭くて不器用で鈍くさい(笑)岡本がこれほど嵌るとは思っていなかったのがあります。(ある友人は「あまりに上手くて想定の範囲内」と評した)でも、華のある外見を持ちつつあちこち振れ幅のあるキャラを演じる役者さんを観るのは、私は大好きでです。
そして!達也さんの竜馬は…評するに幾百の言葉を費やしても無駄でしょう。もういつまででも観ていたいくらい、好きでたまらない、と再確認!ホントに大好きです!!!

☆この日のハイタッチ(2回目)
たぶん最初の5~6人目に入ってたのでは?(笑)←どんだけ楽しみにしてたんだ自分。
リアル竜馬な達也さんに「神戸、待ってました!」と言ったら「ニコッ」として握手(!)してくれたのは本日最高の締め括りでした!終演直後だったせいか?舞台の熱気を持ってきたように、フワッと温かい手の感触でした。


⑤6月17日(金)ソワレ WHITE2回目
東京千秋楽以来のWHITE。「明日がない」ような振り切れ感はさすがに収まったものの、主役の二人を始め、全員がやたらとハイスピードに「飛ばして」いくのがちょっと意外でした。

セリフも早い。テンポも速い。昨日のBLACKよりもうひとつ速い。ここはもう少しセリフ後に余韻が欲しいな、言う前にタメが欲しいな、と思うところも軽やかに走り抜けていく12名。
私の観たWHITEはおそらくこの日がベストだった、と今では思います。トップスピードに乗ったジェットコースター芝居として面白く見ることができた。みっちゃんの岡本も、大内さんの竜馬も、取り巻くキャストも、とても「しっくりとまとまって」いたから。
終演後、仲村Pに「いいお芝居でした、すごく良かったです。昨日のBLACKに負けないぞ、と言うようなWHITEの気合いというか、負けん気を見せつけられたようで…」とご挨拶したところ「東京よりもお芝居のテンポも時間もさらに詰めてきていると思います。普通は走り過ぎたら抑えることも多いのですが」と仰っていました。

「少し、飛ばしすぎじゃないでしょうか…?」

笑いながら私は尋ねたものです。もちろん、その言葉に「他意」はありませんでした。しかし、新神戸の駅に向かう途中でふと…形になる寸前の曖昧な懸念が胸に浮かびました。「…このペースで、大丈夫かな?」…まあ、東京公演を乗り切ってやってきたカンパニーだもの、一観客に過ぎない私が気にすることでもないか。その時はそう片付けて、深夜までワインを飲んでおりました。

☆この日のハイタッチ(3回目)
伸介(=ウォーリー)な衣装でロビーに現れた達也さん。しかしやはりというか、この人の演じる伸ちゃんは奥が深い!!!で、いわゆる「オトナ受けする」キャラである。ハイタッチの時に思わず「(伸ちゃんは)結婚してほしいくらいですわ♪」と言ってしまったのはご愛嬌?と言うことでお許しくださいませ。(ご本人もビックリされていたと思いますがwそこは大人対応で!)←基本役者さんは「板の上」でしか興味が無い。
でも、千秋楽挨拶のカオリちゃんじゃないけど、伸ちゃんみたいな人なら、ウチの両親もきっとOK出してくれるんじゃないかなあ…?なんて思いましたよ!(笑)←既婚者ですが何かw


⑥6月18日(土)マチネ WHITE3回目
神戸公演3日目。昨晩のWHITEに続く連投はやはりキツかったのか?みっちゃん岡本、この日は最初から発声が今ひとつで、不安定さをところどころ見せていたのですが、中盤に入って落ち着いたので、このまま何とか行くか…と安心した矢先!!

クライマックスで「声が出なくなる」大事件!

残り10分もないタイミング、岡本は見せ場も多く、決め台詞も多い。最高の盛り上がりに水を差すまいと、必死で声を張るものの、掠れ、裏返った声はなかなか戻らない。しかし「お芝居は声だけじゃない」全身で必死に叫び、泣き、しがみつき、岡本という役を越えて、ひとりの役者の死力を尽くして、最後まで「持っていった」文字通りの熱演に、一緒に涙していた観客も多数…。
とはいえ、最後のカテコ挨拶も土方役の陳ちゃんが代わりに締める、異例の事態。私の胸には「これはホントにまずいぞ」と、悪い予感がヒタヒタ押し寄せて参りました…。


⑦6月18日(土)ソワレ BLACK4回目
BLACKはこの回が神戸前楽。やっぱり自分の中ではBLACKの竜馬&岡本は最高&最強、新たなレジェンドに。
「この舞台観られて、ホントに良かった!」と感謝!!!

一方で、心配がついに現実のものに…。この作品では「ラスボス的存在」の土方は、開演80分過ぎに「満を持して!」これでもか~!ってほどバリバリの演出&音楽(笑)で登場するのですが…夜公演ではみっちゃん土方の発した第一声に、それまでの客席の熱気が「一瞬で凍りついた」くらい、事態の深刻さが伝わってくるものでした。
小多田さん@棟方も、前山くん@時田も、一生懸命にカバーリングに入っていたけれど、ホントに観ていて辛すぎる状態。「もう無理、止めて。全然聞こえないよ~!」声掠れどころか、台詞の「声そのもの」が出ていなかった土方に、客席がザワつくのが分かって、それはもちろん舞台上にも伝わっていくわけで…台詞で何を言っても半分以下しか伝えられない、という状況に、演じている本人が一番申し訳なく思っている「何とかしたい」という気持ちだけは、ひしひしと感じられたのでした。(※本来の演出では納刀すべきところを抜き身の刀を持ったままだったり、ハケの時に鞘に納めていなければいけない刀がなかなか入らないままだったり、演者の動揺を示すサインはそこかしこに見えておりました。)

「どんなに追い詰められた状況になっても諦めない」という台詞そのままに、大内竜馬との斬り合いは、言葉が消えたせいか逆に段違いの気迫と動きで何とか「見せよう」「芝居を壊してはいけない」と繋いでいるようで、下手から見ていた私は、彼の限界まで見開かれた眼が充血して真っ赤になっている(血の涙のようだった)のをハッキリ認めて「完全にイっちゃってる、サイコキラーのような…」と寒気を覚えたものです。これまで彼が演じていた「新選組副長・土方歳三」とは別の、人外めいた狂気をまとう人斬り、まさしく幕末の「壬生狼」がこの瞬間、舞台上に立ち現われていた!としか思えませんでした。

この1回しか観られなかった人には「喉潰して台詞の出ない土方=不完全な舞台」でしかなかった不運とも言える、このソワレ。私には、三津谷亮というひとりの役者の、極限状態での足掻きと、鬼気迫る役者魂を見つめることができた、貴重な回になりました。

☆この日の心配
みっちゃん、終演後のカーテンコールは真っ赤になった目のまま、終始うつむき、申し訳なさそうな硬い表情で立ち尽くしていました。いつもの陳ちゃんとの「タッチ」もなし。誰も声をかけられないような空気で、いたたまれなさ、申し訳なさ、自分への怒り、悲しみ、絶望…。全ての感情が、その姿から溢れ出していて(本来プロとして同情はできないのでしょうが)気の毒で可哀想で、たまりませんでした。
明日のBLACKはもちろん、明後日のWHITE大千秋楽を務められるかどうか…?と言うのが終演直後の正直な印象。土方にしても岡本にしても、彼を観に来た!ってお客さんがたくさんいるでしょうから、代役なんて無理!大千秋楽控えてる上に超満員の日曜公演、ドクターストップがかからない限り、劇団も本人も「絶対やる!」という方向で頑張るんだろうけど、あの喉はちょっとただ事じゃない。「無理はしないでほしい」と、ただ回復を祈ることしかできない帰り道でした。



⑦6月19日(日)マチネ BLACK5回目
Black千秋楽!!!私はこの日2時間当日券に並びました!(笑)← 有り得ない事態
アンケートも書けたし読まなくちゃいけない本も数冊読めたし、有意義な時間でしたが。まず、移動含めて2時間半を「待つ」に費やしたのは「お金がなくて時間だけがあった」学生時代以来、10ン年振りです(笑)。

その甲斐あって前方ひと桁列の良席より観劇!序盤から気合の入りまくったスピーディーな台詞の応酬、一段と熱いアクション、まさにラストに相応しいお芝居!BLACK座組の魅力が遺憾なく発揮された、おそらく最後にして最高の舞台だったと思います。(BLACKマイベストは間違いなくこの神戸楽)
気がかりだったのはみっちゃんの声。11人が縦横無尽、キャラメルには珍しくもアドリブ満載、テンション最高な中で冷汗が出そうな緊張感とともに「85分、土方の出番」を待っていたのですが…。

「みっちゃん復活したあああああああああああああああああ!!!!!!(号泣)」

何とか!不安定さの残る声音ながらも、昨日の事故レベルの掠れは脱し、舞台で張れるレベルに復活した三津谷土方の登場で、陳内岡本、岡田竜馬、小多田棟方と見事なクライマックス!!!瞬きする暇も惜しいほどに、ラスト40分は魅入られていました。これこそ、この作品の持つ魅力と底力!キャスト皆(特に達也さん)が心から楽しく&真剣に「役を生きている」感覚が伝わってきました。
ラストの暗転前、帽子を胸に、客席を振り向く陳ちゃん岡本…これまではふわっとした笑顔だったり、安堵の笑顔だったりしたのが、照明が絞られていく瞬間「くしゃっ」と崩れて可愛い笑顔になった瞬間、いろいろ感極まって胸が詰まりました!きっとその視線の先には岡田竜馬がいたに違いない!!本当に最高最強のコンビ!(確信)

カーテンコールは本当はひとこと挨拶が欲しいところですが、明日があるからムリかな…と思っていたところ、陳ちゃんが達也さんと一緒に「また逢おう!!!」のハモリで挨拶してくれて…!!!もう、嬉しくてどうしようもない!!!この場にはこの二人のこのセリフで締めて欲しい、そんな観客の想いが、舞台の上に通じた瞬間でした。

☆今日の気がかり
明日昼はWHITEで『また逢おうと竜馬は言った』ツアー大千秋楽。みっちゃん、今日は声は出てたけど語尾に震えがあって、万全では決してなかったから、絶対に無理はしないで、しっかり休養して大一番に備えてほしい!土方は卒業したけど、過酷な本役・岡本を最後まで無事に駆け抜けて!



⑦6月20日(月)マチネ WHITE4回目
この日、6/20は新撰組副長・土方歳三の命日(新暦換算)です。『また逢おうと竜馬は言った 』WHITE大千秋楽、陳内くんの土方も本日ラスト。これも何かのご縁でしょう!最後まで全力で駆け抜けてください!と朝一番で念を飛ばしました!w

まさか観に行ける筈も無いだろうという予測をしていた平日昼公演、何とか都合が付いたのは奇跡としか言いようがありません。みっちゃん、決して声は本調子でないながらも、これまでの集大成のように全力気迫の岡本役!ラストシーンの手前から、目が涙でウルウルしているのには気づいていましたが、最後の振り返るシーン…満面の笑顔なのに、汗まみれのその頬に伝った「一筋の涙」。キラキラして、この上なく綺麗な幕引きでした。零れ落ちる涙をぬぐおうともせずに、暗転から明転して、深々と頭を下げる三津谷くんに、心から「よく頑張ったね…!」と全力の拍手を送りました!

そして本日観納めの、陳内くん演じる土方歳三。何から書いていいのか…とにかく、色気ダダ漏れです。垂れ気味の優しい目元を吊り上げるブルーグレイのアイシャドウが素敵です。意味深で冷ややかな流し目最強です。眼差しとリンクして冷笑、あるいは得心の笑みを刻む口元が魅力的です。なのに時々アヒル口?としか思えない愛嬌たっぷりな表情も見せてくれて、サービス満点です。口調は果てしなくドSです。何より全体から醸し出す雰囲気が「怜悧な副長にしてバラガキ、美しい見掛けによらない世間ズレしたダーティーさ」満載。「土方歳三実写化(違)脳内HDD」に永久保存された、この上なき美麗な副長でした!!!舞台はナマモノ、決して永久保存出来ないとは分かっていても、あの「時よ止まれ、お前は美しい」という有名な台詞を捧げたくなる、そんな価値ある邂逅でした。

重ねて書きますが、CBの『また逢おうと竜馬は言った2016』が『駆け抜ける風のように』『パスファインダー』の生んだ奇跡としたら、次は陳内将くんの土方歳三主演で新作2時間もの、期待して良いですよね?当然ですよね?あんなに素敵な土方が「チラ見せ」程度で終わっちゃうなんて、勿体ないですよね?ね?(笑)


☆   ★   ☆   ★


(ひとりごと)
しかし、あれだけヘタレで臆病でどうしようもない岡本を、イラッとせずに何回もリピート観劇できた理由は、私が「頼りない年下男子の首根っこ引っ掴んでorお尻蹴飛ばして、仕事させる」のを、日常普通にやっていた(敢えて過去形)からでしょうか。手間はかかりますが、ちゃんと鍛えて一人前になるの見るのは楽しいもんです。(笑)

一方で、この作品に出てくる女性キャラ(ケイコ、サナエ、小久保、カオリ)は、ケイコ以外は「あまりにも描き方が浅い!」(←90年代の作品だから!と言うのもありますが)…それが残念と言えば残念でした。

この作品が書かれた90年代…女性の管理職や総合職はごく限られた企業で少ししかいなかった事実(そして男女雇用機会均等法第一期生の先輩方の呻吟を見るわけです)。自分が「第二~三世代」としての過渡期を生き抜いてきた経験。加えて、現在(=2016年)の社会状況、企業内の新卒やジェンダー&組織のパワーバランスの変化…それに比べて、描写があまりにも古い。古い以上に、時代に即していない。そこは演者に関係なく、キャラクターの設定やセリフの内容から感じた、正直なところでした。

男性のキャラの書きこみが素晴らしい分、女性の演じるキャラの中途半端さが際立ったといっても過言ではありません。小久保課長が「あいつ(本郷)は言うことをいつも聞かない。女だと思って馬鹿にしているのよ」と憤るシーンがありますが、2016年の私から見たら「違うね、部下から見てアナタがあまりにも無能な上司だからではないかな?」と思ってしまうのです。(残酷にも芝居のシナリオがそれを証明していくわけになりますが)

作中で象徴的に語られる「九州(ここでは薩摩ですが)男児」「長州人」を、上司や同僚に持ったことがあります。友人にもいます。九州は広く、今で言うなれば同じ県内であっても旧国名・藩の区分けで全然「アイデンティティ」「気風」「他からの見られ方」が違うこと。「長州人は犀利である」と司馬先生が書いたことに対して、所謂長門の人間と周防の人間とでは(アイデンティティも相まって)全く違う感想を抱くこともある。年代によっても印象は違う。そうしたことも、知っておいて観た方が、面白いかな?と思います。

ケイコは「夫婦間の喧嘩」と言う一点だけは、おそらく永久不変の共感を得られるかと思います。ただ、私自身が登場する4人(サナエさんはそうでもないですが)のように感情をむき出しにする、感情で判断を見誤る、というのは「有り得ない」生き方をしてきたせいでしょうか、どうも古いステレオタイプでしか描かれない女性像にがっかりしたなあ・・・という思いはありました。わたしがキャラメルボックスのお芝居でステキだな、と思う女性キャラは、どちらかと言うと真柴さんの書かれた脚本や、原作ものの作品にいるような気がいたします。(『きみぼく』の純子さんや、『クロノス』の館長、『涙を数える』の母上とか…)

劇場で中学生や高校生の観客をたくさん見かけた分、余計に「ステレオタイプ」が彼ら彼女たちに有形無形のインパクトを与えてしまうのではないか、と気になってしまう、宮仕えサラリーマンでした。←余計なお世話?w



おしまい!
次は夏のCB「カレカノ」でお会いしましょう!