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労働法の散歩道

yahoo知恵袋で回答していて、繰り返し同じ投稿するロスを減らすために資料室としてもうけました。

計画年休 運用上の論考

2018-01-28 10:45:42 | 休暇

計画年休の詳細はネット上随所に解説されていますのでそちらを参照ください。ここでは、労使協定締結と時季指定権・時季変更権のかかわりや運用についての論考です。

計画年休の設定で、労使協定を要求(労基法39条6項)していますが、なにが労使協定特有の免罰効果があるのかというと、労働者・使用者双方にみとめた形成権(時季指定権・時季変更権)をはく奪しているからです。そして数ある他の労使協定と違うところは、実際の計画年休日を指定して労働者に権利義務を附帯する労働契約の一面をもちあわせています。他の労使協定には見られない特質です。

さて本題、計画年休日が到来して、5日しかもってなかった人がいたら、という質問をよく見かけます。

心配いりません。計画日にでなくその労使協定を締結した時点で、協定した計画年休日数分につき労働者の付与日数を減じることができます。減じて5日を割り込まなければいいのです。

一方で締結日には、5日+計画年休日数以上もっていたのに、計画日に5日割り込んでいたけど、特別の有給休暇あたえなければなりませんかという質問があります。先に述べたように、協定締結時点で労働者が保持する保有日数から5日残して計画日数分消滅します。ですので締結日から計画日までの間に、残りの保持日数を消費してしまっても、計画日においては消滅させた日数からあてがいます。

計画年休日到来前に消化しきった、というのは、日数管理のミス、といことになるでしょう。協定制定例にあるように、出社いただくか、特別の有給休暇付与することとなるでしょう。

具体例をあげていきます。

例)協定の年間計画日数 7日

締結日において

保持日数   消滅日数   消滅後の保持日数
 7日の人  2日消滅    5日保持(5日不足)
10日の人  5日消滅    5日保持(2日不足)
12日の人  7日消滅    5日保持
14日の人  7日消滅    7日保持

次に計画日が到来したら、締結時に消滅した休暇日をあてがいます。あてがいつつ不足していた人については、次の計画日と新規付与日の後先で次のように決せられます。

計画日が先:協定に記した「特別有給」「事業主責めの休業手当」「出社させて労務提供」といった措置
新規付与日が先:不足分が充当される。ただし最低5日を割り込めない。

毎年付与日を統一してする一斉付与のタイプですと、計画年休協定も同時に締結し、管理上計画日数分減じておくのが望ましいです。

いずれにせよ、計画年休日が到来する前に退職する人は、未到来の計画年休日数も休めることができますので、注意が必要です。

計画年休の労使協定は、他の労基法で定める労使協定とは意味合いが異なります。労使協定とは、違法行為に対し、要件をそろえば免罰される効果を生み出します。しかし協定だけでは、労使間になんらの権利義務は生じず、別途就業規則、労働協約による規定を必要とします。たとえば36協定だけでは、使用者の違法行為(法定労働時間を超えて労働を命じること)に対し、司法官憲の取り調べを免れるだけで、労働者には、時間外労働命令に従う義務は生じません。協定とは別途就業規則等の定めを必要とします。

しかし、この計画年休の労使協定にあっては、協定にとりきめた計画日において、労働者の時季指定権はく奪する(違法行為への免罰)だけでなく、その日において休むませるという拘束力も生じています。その点が、他の労使協定と違いがあります。


(2018年01月28日投稿、2021年10月2日編集)

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