労働法の散歩道

yahoo知恵袋で回答していて、繰り返し同じ投稿するロスを減らすために資料室としてもうけました。

年次有給休暇の付与数と保持数の変転

2021-10-31 08:45:34 | 休暇

ある人の年次有給休暇の保持数の変転について具体例をあげて説明します。ここでは、平成31年1月1日入社、勤続0.5年からの法定付与で説明します。毎年8割出勤率はみたしているものとします。また時効は付与してから2年で消滅するものとします。

付与日 勤続0.5年       保持数
R1.7.1 10日付与       10日
  5日取得 勤続1.5年      
R2.7.1 残5日 11日付与     16日
  4日取得   勤続2.5年    
R3.7.1 残1日消滅 残11日 12日付与   23日
    11日取得 4日取得 勤続3.5年  
R4.7.1   残0日 残8日 14日付与 22日
  勤続4.5年   5日取得    
R5.7.1 16日付与   残3日消滅 残14日 30日
    勤続5.5年   7日取得  
R6.7.1 残16日 18日付与   残7日消滅 34日
  16日取得 3日取得 勤続6.5年    
R7.7.1 残0日 残15日 20日付与   35日
    15日取得 1日取得 勤続7.5年  
R8.7.1   残0日 残19日 20日付与 39日
  勤続8.5年   19日取得    
R9.7.1 20日付与   残0日 残20日 40日

新規付与から減数する方式で、保有数の推移を表にしてみました。毎年の保有数が増えないことは一目瞭然です。

付与日 勤続0.5年       保持数
R1.7.1 10日付与       10日
  5日取得 勤続1.5年      
R2.7.1 残5日 11日付与     16日
    4日取得 勤続2.5年    
R3.7.1 残5日消滅 残7日 12日付与   19日
    3日取得 12日取得 勤続3.5年  
R4.7.1   残4日消滅 残0日 14日付与 14日
  勤続4.5年     5日取得  
R5.7.1 16日付与   残0日 残9日 25日
  7日取得 勤続5.5年      
R6.7.1 残9日 18日付与   残9日消滅 27日
  1日取得 18日取得 勤続6.5年    
R7.7.1 残8日消滅 残0日 20日付与   20日
      16日取得 勤続7.5年  
R8.7.1   残0日 残4日 20日付与 24日
  勤続8.5年     19日取得  
R9.7.1 20日付与   残4日消滅 残1日

21日

別の人の例を別の形にて説明してみます。先に説明した労働者有利な付与、消化のさせかたでの推移です。

勤続0.5年目
10日付与
                     
勤続1.5年目
6日取得4日繰越11日新規付与、残15日
                                           
勤続2.5年目 
5日取得10日繰越12日新規付与、残22日
                                                         
勤続3.5年目
5日取得5日時効消滅12日繰越14日新規付与、残26日
                                                                       

(2021年10月31日投稿、2023年9月15日編集)

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年次有給休暇の付与日数

2020-12-30 08:42:28 | 休暇

年次有給休暇の付与日数は、正社員(フルタイムまたは週所定30時間以上)、短時間の別、勤続年数、過去1年間(入社時は6カ月間)の出勤率8割(=出勤日数÷所定勤務日数)を満たす労働者に対し、付与日時点の雇用契約形態に応じ、法定数以上を付与しなければなりません。前倒しで付与する場合は、前倒しした期間は全出勤したものとして出勤率計算します。なお赤字の日数を付与された労働者は、付与してから1年内に使用者に課せられた最低5日時季指定義務対象となります。

付与日数

通常の労働者(週5日契約労働者、週30時間以上契約労働者を含む)の付与日数(0.5,1.5…は、0年6カ月、1年6カ月…を表します。)

勤続年数(年) 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5
付与日数(日) 10 11 12 14 16 18 20

上記以外の労働者(週4日以下かつ週30時間未満契約)の付与日数

勤続年数(年) 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5
週所定労働日数 年間所定労働日数
4日 169日~216日 10 12 13 15
3日 121日~168日 10 11
2日 73日~120日
1日 48日~72日

年間所定労働日数とは、契約から週所定日数を算出できない不規則勤務の場合に用います。

8割出勤率の計算方法

前回付与日から今回付与日の前日までの1年の期間で出勤率を計算します。勤続6カ月の場合は、その入社半年間で判定します。法定付与日より前倒しで付与する場合、前倒しで未経過期間は、全出勤したものとして算入します。(例:法定付与日7月1日のところ5月1日に前倒し付与する場合、5/1~6/30の間の所定労働日は全出勤扱い)

分子に入れる日数 分子に入れなくてよい日 分母分子に入れない日 分母分子に入れるか入れないかは事業者が決めることができる日
・所定労働日の出勤日数(遅刻、早退した日も含みます)

所定労働日にあって
・年次有給休暇取得日
・労災で休業した日
・産休育休、介護休業した日
・代休日(※1)
・休日労働した日
・欠勤日
・使用者責めの休業
・ストライキ
・不可抗力による休業日
・代替休暇(法37条3項)
・慶弔休暇等(※2)
・休職期間
・生理休暇ほか
分母に入れる日数 分母にいれなくてよい日
・その労働者の所定労働日 ・所定休日(法定休日を含む)
※1:代休日は、労働日にあって休んでいい日と使用者が認めた日であって、欠勤した日でない。なお、労働日と休日を事前に入れ替える正規の振替休日であれば、労働日となった日の勤務状況をみる。
※2:就業規則の規定により、所定の事由発生につき労務提供を免除する場合

(2020年12月30日投稿、2024年12月30日編集)

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年次有給休暇管理簿

2020-01-05 08:23:24 | 休暇

2019年4月施行改正労働基準法、同法改正施行規則において、年次有給休暇管理簿なるものが、労働者名簿、賃金台帳といった重要な労働関係帳簿ではないものの、作成保管義務帳簿として制定されました。使用者に作成義務を課し、期間中に記録し、そして期間後閉鎖して3年保管です。同名の帳簿は従前から任意の様式で紹介されていましたが、法令で記載項目が制定されましたので、ネット検索したものを利用する際は、改正法令準拠の様式か確認する必要があります。

必須の記載項目として

  • 基準日(付与日のこと。付与日から1年経過する前に2度目の付与があればその第2基準日も記載)
  • 日数(上基準日から1年間の取得日数のこと、第2基準日があるならその1年後にいたる日までの取得日数を記載)
  • 時季(取得日付のこと)

管理簿のサンプル

基準日 (第1)2022年4月1日 (第2)
取得日数 2.5日 2時間
取得時季 (全日) (半日) (時間単位)
4月2日 4月3日 4月4日(2時間)
4月5日    
     
     
     

太文字は法定項目。青文字は法定記載部分。灰色部分は、時季指定対象外を表します。付与日である第1基準日から1年経過するまでに法定数を新規付与する日を第2基準日として記入し、その日から1年間までを記録します。

前期からの繰越日数、当期の付与日数、次期繰越日数の記載を必須項目としていないことから、この管理簿は保持日数の把握でなく、付与日からの1年間、使用者に課した年5日時季指定義務の履行状況を把握する目的で制定されたものとみることができます。繰越日数等の記載は任意ですが、記載しなくてよいことから前期からの繰越数がない、あるいは新規付与から消化するという根拠にはなりません。

時季指定対象労働者は、施行日以降最初に法定10日以上付与されてからですので、入社日(のあと半年後)基準なら付与の都度、一斉付与基準ならその日全員にて作成です。ただ取得5日義務対象者か否かは、各人ごとに明記されたほうがよろしいでしょう。たとえば、8割未満出勤で付与してなくてもいい労働者に10日以上付与する、パートといった比例付与する場合の、法定は10日未満のところ会社独自に10日以上付与しても義務対象ではありませんから、区分けできる表示が望ましいです。

なお、日数には、半日休暇の回数、時間単位年休の時間数もあわせて記載のことと通達にありますので、時季は、1日単位、半日単位の日付、時間年休の日付と時間数を区分けしての記載をするといった工夫が必要でしょう。利用のたびに、日数は更新されますので、エクセルといったスプレッドシートで作成でしょうか。時間年休は法律上時季指定義務カウントの対象外ですので、別計上にて日(および半日)だけで5日満たしたかの区別も必要でしょう。


労働基準法施行規則
第24条の7
 使用者は、法第39条第5項から第7項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第55条の2において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後三年間保存しなければならない。

第55条の2
 使用者は、年次有給休暇管理簿、第53条による労働者名簿又は第55条による賃金台帳をあわせて調製することができる。

(2020年01月05日投稿 2022年9月3日編集)

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年次有給休暇時季指定義務の事業主対応

2019-05-03 14:35:13 | 休暇

年次有給休暇の時期指定義務をクリアするにはという相談が見受けられるようになりました。

祝日休・振替休日制度のある会社なら、次の方策があります。

休日を減らして指定年休に充てる必要はなく、たとえば今度の祝日休(例えば7/15)を、同一週の平日労働日(同7/19)と振替出勤命令を発令します。

休日となった元労働日(7/19)は、休日出勤命令し、労働日となった祝日(7/15)は、随意で年次有給休暇をとっていただいてかまわない、と申し渡します。ただしその日休場完全閉鎖の事業場なら、計画年休としての労使協定は必要です。またいずれの休日出勤日も125%または135%賃金支払いとなるなら、その休日出勤日(7/19)は、その料率の割増賃金支払いが必要です。

遊軍的な労働者を雇えない、業務効率化して生産性を上げられない会社は、この手の人件費出費にたえられないなら、どうぞ倒産廃業してしまってくださいという政策が発動されたということです。労働者を失業者にして労働者不足になやむ業界に供出してくれたらそれはそれで経済は循環し、めでたしめでたし。倒産してしまった会社を使っていた企業は、いやおうなしに手間賃上乗せしてでも代替企業を探すしかなく、利子率は上昇していきます。

(2019年5月3日投稿・2021年5月25日編集)

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年次有給休暇の時季指定義務(規定例)

2018-10-21 10:52:17 | 休暇

就業規則の規定例が出てましたがちょっと簡易すぎるので、考案してみました。例は、厚労省モデル就業規則をベースにしています。

規定例はじめ===>

9 第1項または第2項により10日以上の年次有給休暇を与えられた労働者は、与えられた日より1年内に努めて5休暇日以上取得しなければならない。

10 会社は年次有給休暇管理簿(以下「管理簿」という)を作成し、付与日、付与数、取得日付、取得数を記録するものとする。前項の付与して6カ月経過後、第4項の計画年休で取得させる日を含めても取得数が前項の規定の数に達していない労働者とその上司に対し、会社は管理簿の情報を提供する。提供を受けた労働者と上司は協議して前項の残り期間内に不足数に見合う取得する日を決めるものとする。

11 第9項の期間が残り3カ月に達しても、前項の取得が進んでいない者に対し、その上司は、不足数にあたる日を指定して休暇させるものとする。指定する日は労働者の希望にそった日とし、指定された労働者は休暇して従わなければならない。

<===規定例おわり

一斉付与を規定している就業規則ですと、ダブルトラックについても規定せねばならないでしょう。そうなると、百社百様ですので、どこに穴があいていないか、専門家にあたってもらうことも必要です。逆にダブルトラック期間中の比例按分した日数を採用しない場合、原則の法定10日付与した日からの1年で5日をそれぞれの期間にカウントをします。1年経過しない前にあとから付与(下図「第2基準日」のこと)して生じた重複期間中に取得した分は、いずれの期間の実績にも加味できます。

第1基準日   取得実績 計5日(◇◇◆◆◆)    
▼4月1日 翌年3月31日▽    
  2日取得 ◇◇ 3日取得  ◆◆◆ 1日取得 □  
    ▲10月1日 翌年9月30日△
    第2基準日  取得実績 計4日(◆◆◆□)

(2018年10月21日投稿 2024年12月15日編集)

参考サイト

モデル就業規則

今回の法改正にまつわるパンフ等

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