あなたが書いていた通り、あ
なたの行為は、間違っていま
した。あなたの大切な人を奪
ったその彼女が、どんなに卑
劣な人であったとしても。
けれど、音羽さん、あなたと
いう人は、汚れてなどいない。
今も昔も素晴らしい人なのだ
し、許されるべき人なのです。
ずっと前に、学生ボランティ
アの人が来て、外国の小説を
朗読してくれたことがあった
のですが、その物語のなかに、
こんな台詞があったのを思い
出します。
戦争で、自分の子どもを、自
分の見ている前で惨殺された
女の人がいて、彼女は毎日、
嘆き悲しみ、憎しみに胸を引
き裂かれそうな思いで、暮らし
ていました。
いつか復讐してやる。それだ
けが彼女の生きる因(よすが)
みたいなものだったのです。
ある時、砂漠で出会った修行
者は、そんな彼女にこう言う
のです。
「あなたは、ああたの子ども
を殺した人の子どもを引き取
って、育てなさい。そうする
ことによって、あなたの魂は
救われる」って、
これが荒唐無稽な考え方だと、
わたしには思えないのです。
わたしの大好きな、音羽さん。
順ちゃんの忘れ形見「オトハ
ちゃん」
この世に、生きるに値しない
人間など、ひとりもいません。
だから、忘れないでいて。
絶望にとらわれて、身動きで
きなくなった時には、思い出し
て欲しいの。わたしがここに
いる、ということを。
この世にたったひとりしかい
ない音羽さんのことを、一生
懸命想っているわたしが、こ
こにいます。
世界中の人があなたを見離し
ても、わたしはあなたの味方
です。
音羽の魂よ、安らかであれ。
あなたが毎日、小さな真四角
な窓から見上げている青空に、
祈りよ届け、言葉よ届け、想い
よ届けと祈りながら。
とき子より