気が済むまで泣いたあと、ふと
思い立って、パソコンを立ち上
げた。
紹介されたホームページにアクセス
してみた。ふらっと立ち寄ってみた、
いくつかの貼られていたリンク。
その中のひとつに、わたしの目は
釘づけになった。
『こちら黒いウサギの絵本館』。
睫毛にくっついていた涙の塊まりを、
指で拭い取ってから、細かい文字を
もう一度、見た。
間違いない。そこには確かに
「黒いウサギ」という文字が並ん
でいた。
クリックしようとして、マウスに
伸ばした指がふるえた。思いが
交錯した。入り乱れた。光と影の
ように。幻と現(うつつ)のように。
あなたは、誰?
会いたくて、会いたくてたまらない、
なのに、会えない―――
わたしの、愛しい人。
「行ってきます」と言って、わたしの
前から旅立ったあと、それきり、
戻ってきてはくれない―――
クロウサギさん、あなたは今、どこに
いる?
もしかしたら、あなたは「あな
た」なの?
黒ウサギさん、あなたは、わたし
のクロウサギさん?
あり得ない。
人違いに、決まっている。
絶望すると、わかっている。
それでも、どんな小さな可能性
にも、今はすがりつきたい。
会いたい。会いたい。会いたい。
胸の中に、ずっと閉じ込めてきた
はずの恋が、激しく波打っている
のがわかった。
YouTube
Time After Time - Cassandra Wilson
https://www.youtube.com/watch?v=afNI2CI9oyU