わたしはその日、ニューヨークに
向かう飛行機に乗っていた。今から
三年前のきょうだ。
あとはもう離陸をするだけ、という
状態になってから、大慌てで駆け込
んできたのが彼だった。
いかにも「ニッポンの企業戦士です」
といった風情の人、苦手なタイプだ、
隣の席に来なければいいけれどと、
思いながら眺めていると、案の定、
客室乗務員が彼の搭乗券を見ながら
指し示したのは、わたしの隣だった。
彼とは笑顔と目配せでわたしに挨拶
をしてから、窓際の席に腰掛けた。
笑顔はなかなか素敵だ。と思った。
でも、それだけ。
食事が終わり、映画の上映が始ま
った。
いかにも飛行機の中で上映される
映画としてふさわしい、他愛のない、
犬猫の冒険物だった。
かずかずの危険と困難をかいくぐ
って、最後には無事に自分の家ま
で戻ってくる、そんなストーリーだ。
やがて、クライマックスがやって
きた。今でも、わたしはあの「場面」
を思い出すと、頬がゆるんでしまう。
背景は、機内の暗闇。登場人物は、
頭の切れる辣腕ビジネスマン。そ
してわたしが目にしたのは、彼の
頬を伝う、ひとすじの涙だった。
彼は泣いていたのだった。動物たち
が飼い主と再会する感動の場面で。
なんて可愛い人なの!
忘れもしない、彼を好きになった
のは、その瞬間だった、恋の神さま
がわたしのために、彼の最も愛され
るべきチャームに、ぱっと光を当てて
くれたんだと思う。
今から三年前に、この、広い広い、果
てしない宇宙の中で、混沌とした世界
の中で、わたしたちは巡りあった。
きょう9月21日は、ふたりの
恋の誕生日
電車はあと五分もすれば、到着
するだろう。思い切りお洒落し
た彼は、きっと、深い紫色の
薔薇の花束を手に電車から降り
てくるだろう。
駅から出て、わたしを探す彼の姿が
見えたなら、わたしはまっすぐに
駆けて行く。
世界で一番愛している。
世界で一番素敵な人の、
両腕に抱かれるために。
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