これから紹介する文面は、1990年(平成2年)9月に鳥取県公安委員会が出した、パチンコ・パチスロ新機種の型式における「検定通過」に関する告示である。
「検定通過」とは、簡単に言えば、各メーカーが開発した新機種に対して、風営法に定める技術的な条件を備えるという「お墨付き」を、警察当局が与える事である。この検定がなければ、メーカーは自社の新台をその地域のホールに販売することは出来ない訳だ。
但し、適合・不適合を判断する実際の試験は、各都道府県の公安委員会から委託された「保安電子通信技術協会」(保通協)が行う事は、ご存じの通りである。保通協の適合試験をパスすれば、ほぼ確実に公安の検定も通過する(稀に例外あり)。
さて、今から21年前という大昔の告示を紹介した所で、何の面白味もないかもしれない。しかし、この90年9月の鳥取県公安委員会告示は、各メーカーが開発した当時の新台を確認できる、大変貴重な資料なのだ。
この告示でリストアップされた機種は、正直「マイナー機」が多い。私自身、全ての台を知る訳ではないが、他のサイト等で滅多に紹介されない「レア台」もあり、個人的に説明可能な機種については、画像付きで簡単な解説を加えたい。
公安委員会告示
鳥取県公安委員会告示第71号
次の遊技機の型式については、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第20条第3項の技術上の規格に適合していると認めたので、遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則(昭和60年国家公安委員会規則第4号)第9条第1項の規定により告示する。
平成2年9月25日
鳥取県公安委員会委員長 廣吉卓蔵
(ぱちんこ遊技機)
株式会社三星…スターマインS1、スターマインS3、フラワー、トレンディS1
株式会社三洋物産…アドベンチャー3、ダブルアップ2
株式会社平和…バイキング2世、ラッキー
マルホン工業株式会社…スーパーランド
奥村遊機株式会社…BMX
株式会社藤商事…ミラクルセブンP2、ミラクルセブンP3
(アレンジボール遊技機)
株式会社藤商事…Wアタック2、Wアタック3、エスコート、マーダーA、プラズマX、スカーフェイス、ビーナス、ビックマーチ
(回胴式遊技機)
株式会社北電子…スーパーコップ
株式会社パル工業…ペガサスEXA
さて、如何だろうか。
ざっと眺めて、回胴式遊技機、すなわちパチスロの「スーパーコップ」と「ペガサスEXA」以外、一体どんな台か想像もつかない…という印象を持ったのではないか。
「スターマイン」にしても、ニューギンの新要件デジパチなら直ぐに判るが、1990年に三星から出た台となると「?」と唸ってしまう。まさに、マイナー台のオンパレードである。
しかし、1990年の9月25日付で、上記22機種(パチンコ20機種、パチスロ2機種)に対して、鳥取県公安委員会は風営法規則に基づく検定を行い、新台にお墨付きを与えているのだ。
上記機種の中には、実際には販売されず「お蔵入り」になったケースもあろうが、90年の10月~91年にかけて、鳥取県内(当然、県外も)の各ホールに実際に出回ったモノも、少なからずある筈だ。
以下、上記リストの数機種につき、画像付きで簡単な解説を加える(リストでは、機種名を青く表示してある)。
ダブルアップ2(三洋、1990年)…いわゆるデジタル式一発台であり、メインデジタルに「333」「777」のいずれかが出ると、デジタル下の電チューが一定時間開放。電チュー入賞で左右の肩チューリップが開き、大当りとなる。デジタルの大当り確率は1/250。
スーパーランド(マルホン、1990年)…マルホンらしい大きな7セグデジタルが特徴のデジタル一発台。3ケタデジタルが0~9のいずれかのゾロ目で止まると、ヘソ下電チューが5.8秒開く。電チュー入賞で左右の袖チューリップが開き、下段左右の「GO」チューリップに玉が流れるようになる。後は、「GO」チューリップと最下段の電チューの連動で出玉を増やす。デジタルの大当り確率は1/390。
プラズマX(藤商事、1990年)…一発台としても使用可能なアレパチ。上部の3ケタデジタルに「333」「777」のいずれかが出ると、左右のチューリップが開放する。デジタル確率は1/500。一発台調整になっていれば、後はジャックポット(5~8、9~12のポケット)に玉が流れるようになり、予定数終了まで出玉が増え続ける。右デジに3か7が停止すると小当りで、デジタル下の電チューが0.4秒開放(一発調整では意味なし)。
それから、もう一機種…「ラッキー」という機種名がリストにあるが、製造業者が「株式会社平和」となっている。残念ながら、平和が1990年に出した「ラッキー」という機種を、私は知らない。(玉ちゃんの役物が付いたデジパチ「ラッキーボーイ」なら判るが…)
私の知る「ラッキー」は、やはり1990年に「三星」から出た一発台である。まさかとは思うが、鳥取県公安委員会の告示において、製造業者名に誤記があったのだろうか?まぁ、考えすぎとは思うが…。
ラッキー(三星、1990年)…電チューとヤクモノを組み合わせた一発台。盤面下部のクルーンからスタートチャッカーに入賞すると、天下の電チューが0.3秒開放。うまく電チューが玉を拾えば、その下の3層構造の役物(「ステップQ」のような振り分け型)に入り、最下段の「V」と書かれた大当り穴に入ればOK。その後は、両肩のチューリップと下段の電チューとの連動で出玉を稼ぐ。
この鳥取県公安委員会告示から一週間後の90年10月1日に、国家公安委員会規則第6号が施行された(規則改正)。この平成2年規則改正では、主に①景品の最高限度額の引き上げ(3000円⇒1万円)、②デジパチの大当り出玉数の引き上げ(1300発⇒2400発)、③一発台の禁止、④パチスロのビッグ時出玉数の引き上げ(360枚⇒426枚)にそれぞれ変更が行われた。今回紹介した上記各機種は、改正規則の施行直前に検定を通過した事から、ホール側も導入を躊躇してしまい、結果としてマイナー機となったのではないか。まぁ、あくまで個人的な推察である。