1991年(平成3年)に三共から登場した新要件ハネモノ「マッドボーイSP」
★賞球…7&15
★最大継続ラウンド数…15R
★左右オトシ入賞⇒センターの電チュー(2チャッカー)が0.6秒×2回開放
★電チュー入賞⇒ハネが0.4秒×2回開放
★1チャッカーは存在せず。ハネは常にセンター入賞で2回開放。
★ラウンド中のハネ開閉回数…最大18回
★役物カウント…10カウント
★大当り中は、役物内のビーカーに最大5個貯留
★貯留解除タイミング…役物センサーが10個目を感知した瞬間、又はハネ18回開閉後
★ダブルあり(1~14ラウンドのどこでも発生⇒後述)
★当時の実戦店…新宿・歌舞伎町、旧コマ劇向い「オデヲン」(閉店)
在りし日の新宿「オデヲン」。’91年夏には、本機や「ニューモンロー」(西陣)、「ニュートキオ」(平和)、「サンフラワーE」(ニューギン)といった15R継続の新要件ハネモノと、「パチンコ大賞13」(西陣)、「うちのポチI」(三共)、「ビッグベンII」(平和)などの旧要件機(8R継続)が、仲良く「同居」していた。
(当時は2.5円交換、ハネモノ3000発定量)
オデヲンは2003年に閉店。跡地は2004年、「オリエンタルパサージュ新宿」に変わるも、2013年クローズ。現在は「マルハン新宿歌舞伎町店」が営業。彼処のシンボルだったコマ劇も消え去り、当時とは趣が全く異なる。
★同時発表された兄弟機…「マッドボーイGP」(三共、1991年)
本機と同一役物を使用した「マッドボーイGP」。やはり賞球は7&15で15R継続タイプだが、左右のオトシが1チャッカー、センターが2チャッカーとなっており、電チュー非搭載。
初期・新要件機の目玉機能の一つが、「電動チューリップ(電動役物)」だった為、ハネモノにおいても、電チューの有無で差をつけた類似スペックの兄弟機が、幾つも出ていた。
(本機のモチーフ)
パチンコで機種名に「マッド」(MAD)という言葉が入ったものは、非常に珍しかった(初モノだったかも…)。まぁ、言葉本来の意味を考えれば、それも当然と言えよう。
因みに、スロでは4号機の「マッドドクター」(大都技研、1999年)が有名。あれは、東銀座の「ピーアーク」で、一時期異様に打ち込んだ事があるな…(懐)。
また、機種名ではないが、レトロマニアにはお馴染みの「マッパチ」(アニかつ氏&ガル憎氏)も、正式名称は「ザ・マッド・パチスロ・ブラザーズ」である。
本機の盤面には、クルクルメガネの怪しい少年が描かれており、フラスコ片手に「ドッカーン」と爆発させている。見るからに、「化学実験オタク」のアブナイ子供の姿である。
ヤクモノキャラも「黒縁・丸メガネ」で、手前には実験用の大きな「ビーカー」が置いてある。また、Vゾーン両脇にも、不気味な色の液体入りの試験管やフラスコのイラストがある。機種名の「マッド」は、やはり「マッド・サイエンティスト」の意味合いが強い(ハネにも、「SCIENCE」※の英字ロゴがある)。
※「化学実験なら『chemisty』だろう」といった類の、無粋なツッコミは受け付けない(笑)。
本機は初当りがキツかった為、当らなすぎて打ち手の頭が「マッド」状態に陥ったりもしたが…(汗)
また、ヤクモノキャラの少年は、ピンク(水玉)の蝶ネクタイなんぞ付けていて、どこか「良いとこのお坊ちゃん」といった雰囲気を醸し出していた。
通常時や大当り中、このキャラが「からくり人形」のように表情を崩す仕草も、非常に面白かった。
まぁ、こうした奇抜なキャラをメインに据えるのも、かつてのハネモノにおける、一つの「トレンド」だったといえよう。
(ゲーム性)
一言でいってしまえば、「初当りは厳しいが、継続率は良好、出玉もタップリ。但し、ヤクモノのクセ悪台に捕まると、パンク多発でキツい。」という感じだ。
(もともとパンクし易い仕様ではなく、パンク頻発は、あくまで「クセ悪台」の特徴である。)
ハネに拾われた玉は、上段ステージの左右奥から落下後、真下の役物キャラにアプローチする。
通常時、役物キャラの少年(マッドボーイ)は、両掌を真上に向け、両腕を下げた状態で停止している。一方、ハネ開放中は、一定周期で両腕を垂直に上下させる。
この動きが、ちょうど欧米人が両掌を上に肩をすくめて、「オゥ~、判リマセーン!」とオーバーにリアクションするあの格好に、何となく似ていた。少年の大好きな化学実験が、失敗の連続で困り果てた…そんな雰囲気も伝わってきた。
(黒メガネ男・蝶ネクタイ・両掌を上…3拍子揃ったこの画像で、ニュアンスが伝われば幸いである。)
コミカルなメインキャラの手前には、目盛り付きの大きな「ビーカー」がデンと構える。また、ビーカーの上部には、中央に「突起」が付いた透明なストッパーがあって、通常時はビーカーに「フタ」をする格好になる。このストッパーと突起が、通常時も大当り中も、重要な役割を果たす(⇒後述)。
(ビーカー上部のストッパーと突起(通常時)
役物に入賞した玉は、上段左から落ちた場合はキャラの左掌に、右から落ちた玉は右掌に乗ってから、両手の間のビーカーに当り、角度を変えて手前に転がる。
このとき、両腕が下がった状態で玉が掌に乗ると、掌とビーカーとの「段差」がある為、ビーカー上部まで玉が届かず、ビーカーの左右側面に当って外側に跳ね返されて、V両脇のハズレ穴に入り易い。
(典型的なハズレパターン)
一方、腕が上昇した時に掌に乗った場合は、段差が消えてビーカー上部まで玉は到達、そのままストッパーの突起に当たり、左右から角度良くナナメ手前に転がって、V入賞の大きなチャンスとなる。
つまり、通常時に「突起」が果たす主な役割は、ビーカー上部に来た玉を、うまくV方向へ弾くことである。
よって、大当りさせるには、キャラの掌に玉がアプローチした時、タイミング良く両腕が上がっているか否かが、非常に重要なポイントとなった。
但し、これは一瞬のタイミングを捉える必要があるので非常に難しく、また、止打ちなどで腕の上昇タイミングを狙う事も出来なかった。
むしろ、この台の場合は、ヤクモノの「クセ」次第で、初当り確率も大きく変わった。ビーカー内のストッパー(突起)が大きく傾斜したクセ悪台では、両腕が上がった状態で玉が掌に乗っても、突起に弾かれた時の反射角が悪くなって、Vから逸れてしまう事が多かったからだ。
基本的に、本機はV入賞率が非常に辛い仕様で、よく鳴き・よく拾う台でも、初当りはかなり遠かった。加えてクセまで悪いとなれば、初当りを掴むのは、まさに至難の業といえた。もちろん、「経年劣化」によるクセの悪化も考える必要があった。
こうした台のクセ(デキ)を把握する為にも、同じ店のシマに通い続け、いわゆる「タテの比較」で判断する事が、特に重要だった。また、たとえ「クセ悪台」でも、そのクセを逆利用して、右の羽根から拾わせるとV入賞率が大きく上がったりした。本機を攻略する上で、役物のクセの把握は「不可欠」な要素だった。
首尾よく大当りになると、ビーカーを塞いでいた上部のストッパー(突起付き)が垂直に降下して、ビーカー内に完全に隠れる。その為、ビーカー内に一定の「空間」ができる為、最大5個の貯留が可能となる。
(ビーカー内貯留時…大当り中、例の「突起」は下がった状態)
ただ、必ず5個満タンに貯留する訳ではなく、3個や4個の時も事もあった(寄りが悪いとそれ以下も…)。また、4個目や5個目の貯留が、後続の玉に「玉突き」されて、ポロッと落下してしまう事もあった。
大当り中は、降下したストッパーの突起が、貯留の安定と継続率アップに一役買っていた。この突起は、ちょうど玉一つ分収まる「収納スペース」になっていて、ビーカーの中央に玉を1個貯留可能だった。即ち、これが大当り中における突起の役割である。
ビーカーに貯留される最初の3個のうち、1個が中心の「収納」に貯留される。残りの2つがその両脇に貯留され、さらに4個目と5個目が積み上がる格好になる。
即ち、ビーカーは3個まで安定して貯留が可能だが、4個目と5個目の貯留は、やや安定感に欠ける。
(うまく玉が積み上がれば、5個貯留が可能)。
さらに、大当り中は、キャラの両腕(掌)が上昇して停止した状態が続く。その為、通常時と比べると、ビーカーへ玉が向い易くなる為、容易にビーカー内に貯留できる。いちおう、一定周期で腕は下がるものの、玉が掌に乗るタイミングでは上昇(停止)しており、特に問題はなかった。
役物センサーが10個目の入賞を感知した瞬間、又はハネが18回目の開閉を終了すると、下降していたビーカー内のストッパーが再び上昇を開始。ストッパーに下から押し出される格好で、貯留は解除となる。
このとき、あたかも実験中のビーカーが爆発して、中の液体(或いは煙)がドバっと溢れ出す…といった感じが出ていた。
貯留解除時は、ストッパー中央の「収納」に収まっていた1個が、下段ステージど真ん中から手前へと転がり、高確率でV入賞するようになっていた。基本的に、貯留さえしっかりしていれば、継続率は良かった(初当りのキツさを、継続と出玉で補っていた)。なお、貯留解除前に、後続の玉がVに入る事も少なくなかった。
ただ、ここで問題なのは、「クセ悪台」の存在であった。
ビーカー内のストッパーは、上昇時やや左下がりに傾いた状態だが、これはデフォなので、継続率にはそれほど影響しなかった。
だが、この傾斜がことさらキツかったりすると、貯留解除で真ん中から手前に直進すべき中心の玉が、斜めに転がってVをアッサリ外してしまう、不運なケースが多発したのだ。
ただでさえV入賞率がキツイのに、V継続まで悪いクセ悪に捕まれば、鳴きや寄りが甘くとも、キツイ勝負になる事は明白であった。よって、通常時も大当り中も、役物の「クセ」が重要だった訳だ。
(連チャン(ダブル))
実は、本機には大当り中の「ダブル」が存在する(兄弟機の「GP」も同様)。
意図的にダブルを狙うのは不可能だが、「貯留解除の瞬間からVゾーン入賞まで」の僅かな間(チャンスタイム)に、センター電チュー(2チャッカー)に入賞があると、V入賞後は再び1ラウンドから始まるようになっていた(新要件初期のハネモノでは、三共以外にも、このテのダブルが発生する機種が幾つもあった)。
なお、ダブルが発生するラウンドは「特定の〇ラウンド」ではなく、1~14Rいずれも可能性があった。
ただ、「0コンマ何秒」という一瞬のチャンスタイム中、始動チャッカーに玉を飛びこませるのは、まさに「偶然の産物」以外の何物でもなかった。特に、本機はセンター電チューに入賞させる必要があった為※、チャンスはいっそう限られていた。
(※電チュー上の三角釘が甘いと、電チュー閉鎖時でも、直接ヘソに飛びこむゲージになっていた)。
つまり、本機のダブルは狙える「攻略」ではなく、ごく時たま訪れる「臨時ボーナス」の類であった。それでも、役物9カウントで止打ちして、ハネ16回開放後に再び打ち出す方法を使うと、チャンスタイムを僅かに長くする事ができた。
なお、上記特性に鑑みると、左右オトシも始動チャッカーの「GP」の方が、ダブル発生の可能性は高かったといえる(無論、釘にもよるが…)。
当時、有名攻略誌「必勝G」での実験では、攻略ルームの超・甘釘台でダブル狙いをした結果、1回の初当りから、驚愕の「159ラウンド」継続に成功。一方、店舗内の実戦では、神田「P店」で29ラウンド、中野「B店」で20ラウンドと、やや効果は限定的なものに終わった。
なお、これは単なる推測だが、神田「P店」は神保町の名店「ポニー」、中野「B店」はJR中野駅北口「ブロードウェイゲームセンター」ではないか、と思われる(未確認)。
(金角・銀角)
コチラは完全に「ギャグ」の類だが、やはり当時の「必勝G」誌の企画で、同誌の攻略ライターだった板谷氏(金角)とイラストレーターの安藤氏(銀角)の二人が、当時の初期・新要件ハネモノを使った「お笑いネタ」を、誌上コーナー(「NEW銀玉共和国」)で披露した事がある。
それは、「架空のハネモノ」を攻略するもので、実機の役物に何らかの「手」を加えた「パロディ機種」が、計3台登場した。その中に、「マッドボーイSP」をパロッたものもあった。
その名も、「金魚好きDX」。なんと、マッドボーイのヤクモノ内部に水が入っており、キャラの目の前で1匹の金魚が泳いでいる。この金魚の行動次第で、V入賞率や継続率が大幅に左右される。こうなっては、ビーカーの突起の僅かなクセなど、屁みたいなものだ。なかには、金魚がVゾーンにハマって「V入賞率0%」の極悪台や、玉を飲み込んでしまう「ジャンボ金魚」が混ざっている事もあるとか…。また、閉店近くになると金魚が弱るので、そこがねらい目とのこと。
因みに、残る2機種は…
「回転太郎SP」(平和「ニュートキオ」のパロディ)…役物内には、タワーではなく「髭面の和服美人」のイラストが描かれた、大きな「お猪口(おちょこ)」がある。通常時、役物に入った玉は絶対Vに入らず、巨大なお猪口の中に、ひたすら吸い込まれる。貯留25個でお猪口は満タンとなり(天井)、26個目が役物に入った瞬間、上から巨大なアームが出現して、玉を掴んでVに導く(V入賞率は99%)。必然的に、他人が多く貯留して途中で止めた後の「ハイエナ」が有効。大当り中も、お猪口に25個貯留をする為、最大20ラウンド継続で、出玉は約7500個にも及ぶ。貯留解除時は、25個の玉が一度にドバっと手前に倒れてくるので、衝撃に耐えられるよう防弾ガラスを使用。店によっては、あらかじめお猪口に25個の玉を入れておく、モーニングもあるそうだ。
「ニューモンローSM」(西陣「ニューモンロー」のパロディ)…役物内のモンローは、通常時から既に全裸で、インド産の荒縄で全身を縛られている。この縄目の向きによって、玉が跳ね返る方向が全く異なる。いかに「いい縄目の台」を探し当てられるかが大事。大当り中は、ラウンドが進むごとに、BGMの音楽に混じってモンローの喘ぎ声が激しくなる。また、このモンローには、論争必死の「アンダーヘア」が描かれている。
いやはや…今見返しても、彼らの飛びぬけたパロディのセンスには、まさに「脱帽」の一言である。