「世にも奇妙な物語」という、短編3本建てのミステリードラマをご記憶だろうか。
「いいとも」でお馴染みのタモリが、「ストーリーテラー」という妙な役どころで進行を務めていた。
現在でも、定期的に特番が組まれているようである。
そのオムニバス・ドラマの中で、いまだに頭に焼き付いている作品がある。
「ゲームセンターの奇跡」(1990年8月放映)。
もう20以上も前の作品である。主演は谷啓。定年後にゲームセンターの管理人として働く、しょぼくれた老人の役だった。これが、見事にハマっており、やはり谷さんの存在感は流石だな、と感じさせた。共演は、岩淵健。ゲーム好きな黒縁眼鏡の中学生を演じた。当時子役だった岩淵は、後に人気ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」で野田武志役を演じている。
ある日、少年(岩淵)が塾をサボってゲームセンターで遊んでいると、年老いたゲーセン管理人(谷)が近づき、「君にはゲームの才能がある」といって、店隅のピンボールをやるよう勧められる。
このピンボールが怪しい台で、10万点に達すると、ある「奇跡」が起こるという。ただ、その奇跡がどういうモノかは、その老人にも分からない。興味を持った少年はピンボールに挑戦するが、途中で教育ママの母親に見つかり、連れ戻されてしまう。
両親にはひどく叱られ、サボっていた塾にも行きづらくなった少年は、「今こそ、君には奇跡が必要だ」という老人の勧めで、ピンボールに再挑戦する。得意の腕で見事に10万点を出した少年。次の瞬間、派手な光が辺りを包んだかと思うと、少年と老人の体が入れ替わってしまった。「奇跡」とはこの事だったのだ。
老人の体を手に入れた少年は、ゲーセンから出ると、日頃の恨みを晴らすべく行動に出る。 自分をいじめる同級生達を突き飛ばしたり、女子生徒のスカートをめくり上げたり…。極めつけは、毎日口うるさい母親をやり込めようと、スーパーマーケットでカートを使って母親を追い回す。「人間には、気晴らしってもんが必要なんだ」。見ず知らずの老人に追い回された母親はパニックに…。
日頃のストレスを発散してスッキリした少年は、ゲーセンに帰ると元の体に戻る。その帰り道、少年は自分の洋服に血が付いているのを見つける。「おじいちゃん、鼻血でも出したのかな?」と、大して気に留めなかったのだが…。
帰宅した少年は、TVニュースを見て愕然とする。タモリ扮するアナウンサーが、中学生による主婦殺害というショッキングなニュースを報じていたのだ。実は、ゲーセンの老人は日頃から息子の嫁に恨みを抱いており、少年の体を手に入れた事をいいことに、憎き嫁を包丁で刺し殺したのだった。洋服についた血痕は、その時の返り血だったのだ。
「このままでは、捕まってしまう…」焦った少年は、ゲーセンに駆け込み、老人を探す。しかし、既に老人の姿はなく、いたのは新人のバイトだった。少年は、誰でもいいから他人に姿を変える他はないと、バイトの青年の手を引いて、例のピンボールの場所に向かう。しかし、既にピンボールは撤去されていた。そして、背後からパトカーのサイレン音が聞こえて…。
このドラマは非常に強烈な印象が残っており、20年以上経ってもいまだに忘れる事が出来ない。まぁ、流石にここまで詳細なストーリーは覚えていなかった訳で、資料をあれこれ探しているうちに、当時の記憶も鮮明に蘇ったという感じだ。
嬉しかったのは、ドラマのロケ地となったゲーセンが、日大商学部近くの「ゲームセンターIC 砧1号店」と、今になって判った事だ。当時は「どこのゲーセンかな?」と思っていたのだが、割と身近な場所にあった事が判明して、何となく嬉しくなってしまった次第である。
ただ、この店は数年前に閉店してしまったという事で、ドラマの空気をもう一度味わう事が出来ないのが残念である。
奥沢の10円ゲーセンや品川プリンスホテルにあったゲーセンも懐かしい。