1992年(平成4年)に西陣が送り出した新要件機デジパチ「花鳥風月」。テンポの良いBGMと、派手なイメージの7セグデジタルが印象的な一台である。正式には「ルーキーデジロイド」。
黄色を基調とした盤面には、中国の水墨画を彷彿とさせる、趣深いデザインが施されていた。
盤面上部には、「白日依山尽 黄河入海流」など五行の漢詩が書かれており、これは唐の詩人「王之渙」(おうしかん)の「登鸛鵲楼(かんじゃくろうにのぼる)」という、五言絶句の引用を含む。
本機のスペック面に目を移すと、メーカー発表の大当たり確率は1/220だったが、この確率には「裏」があった。
実はこの数字、単なる初当り確率ではなく「連チャン込みの確率」だったのだ。
本機の大当り判定は非常に特殊で、スタートチャッカー入賞時に新しい乱数を取得する割合が、全体の71.1%(=8464/11904)しかなかった。言い換えれば、大当り判定時の28.9%(=3440/11904)は、前回の判定結果を次回にそのまま流用していた訳だ。
つまり、大当りを引いた後は、約29%の確率で前の大当り乱数が引き継がれる。結果として、保留玉一発目の連チャンが発生した。これは、かなり強力な連チャン性といっていい。
但し、この判定方式では、ハズレ出目も同様に29%で連チャンする。実際の初当り確率は1/309.4と、メーカー発表値よりかなり低くなっていた。
※追記
上記連チャンシステムの説明が当てはまるのは、その台が「連チャン台」の場合に限られる。即ち、本機のプログラム上、Rレジスタが128~255の値を取る場合に、連チャンが起こり易くなる。但し、RAMによっては、Rレジスタが0~127までの値しか取らないものもあり、この場合は「非連チャン台」となる。Rレジスタがどちらの値を取るかは、個々のRAM毎に異なる為、本機では連チャンする台と連チャンしない台にハッキリと分かれたのだ。非連チャン台の場合は、大当り確率1/220のノーマル台に過ぎない。ひょっとして、保通協に持ち込まれた検査台は、連チャンしない方のRAMだった為に検定を通過したとか?(未確認)
追記、ここまで。
発売当初は、攻略誌もメーカー発表の「1/220」という数字をそのまま紹介していたから、「西陣の台って、連チャンする割に結構甘いんだよな」なんて期待して打っていた。しかし、実際は爆裂機「ドンスペシャルB」(豊丸、大当り確率1/324)なみに確率の低い台だった訳だ。花鳥風月のシマには、台と両替機とを往復する「ハマリスト」の姿が多く見られた。
それでも、保留一発目にやってくる連チャンは大きな魅力だった。大当りが終わって、即リーチが来たときの期待感や、周りの熱い視線…運がよければ3連、4連(或いは、それ以上)と続き、一発逆転の刺激を求める連チャン機ファンから、強い支持を受けた。
花鳥風月が出た1992年は、他のメーカーからも「魅惑の連チャン機」が続々と発表された「当たり年」でもあった。平和の「ブラボーキングダム」や三共の「フィーバーパワフル3」、三洋の「ブルーハワイ」、それに大一の権利モノ「ダイナマイト」etc。爆裂アレパチの「エキサイト」や「アレジン」(共に藤商事)が出たのも92年だ。まさに垂涎のラインナップである。
いずれも、「射幸性」を理由にホールから姿を消すことになった。こうした「ファンが心底打ちたいと感じる台」に当局が規制をかけた理由は、やはり「CR機」導入に絡む利権問題であったことは疑いない。90年~93年の「デジパチ黄金時代」は、お上の勝手な都合によって消し去られたが、実に悲しいことである。