五島の方言のなかでも、「かち言葉」(家中言葉、もしくは徒士言葉だろう)
という、今では伝える人もほとんどない、旧藩政時代の藩士やその周辺だけが使った言葉が、明治生まれの祖母が在世中にはまだ伝わってていて、そのいくつかを時おり思い出す。
その、「かち言葉」のなかで、女性しか使わない言葉があった。
家の近所に、明治十八年生まれの祖母とほぼ同い年の
くまさん
というおばあちゃんが住んでいた。
くまさんの家があった、現在の橋本ビルがあるあたりは、私が幼いころにはまだ武家地の状態で残っていて、かずらの貼った石垣や広い庭のある門内は、四十年から前の幼児のころには、とても広く見えたものだった。
そこに住んでいたくまさんのことを祖母は、
「くまちゅ」
と呼んでいた。
くまさんは祖母のことを
「ともちゅ」
と呼ぶ。
このよびかたは、おもに武家の女性だけが使う女性版の
「かち言葉」
だということだった。
はっきりは思い出せないが、くまさんと祖母はほぼ同じ歳だったようで、時おり行き来していたようだ。
それぞれの父母は幕末の人だ。
幕末のできごとが、私の記憶に残っているのだから、なんとも面白い。
あといくつか、五島弁のなかでも、ちょっと特殊な
「かち言葉」
を、時おり思い出すことがあるので、おいおい記録しておこうと思っている。
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