チェーン展開の店での、類型化した言葉使いやアクションを、マニュアルどおりの「ノリ」ということで、マニュアルノリの行動と命名している。
よくあるパターンが「やまびこ」である。
誰かひとりが「いらっしゃいませ~。ナントカカントカ~っ」と叫ぶと、従業員がいっせいに同じ言葉をくりかえす。
そこまで新しく入ってきた客を目立たせないでよ、とちょっとどぎまぎする。
人前では空気みたいでありたいのだから。
また、チェーンのマニュアルには、言語文化の開拓精神旺盛なものがよく見受けられ、普及と流布と定着が進行している。ただし、時代とともに変化するのが言葉であるから、従来からすれば奇妙であっても「オカシイ」「マチガッテイル」とメクジラ族みたいに怒る気はない。
レジでの支払いの時、 「まず、大きいほうから・・・」であるとか来店の人数確認で「お席のほうは・・・」の「ほう」。「よろしかったでしょうか」も昔は誤った使い方とされていた。
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面白い想像をすることもある。
コンビニで握り飯を買う。
「あたためはどうなさいますかぁ」と強めの語尾上がりの発声で聞かれる。
私の常識では握り飯は冷たいものだ。
うっかりアチアチに温められたら2個のおにぎりをジャグリングしながら店を出ないといけなくなるので、もちろん断る。それでも冷蔵されているから「ぬるめにお願いします」という希望はかなえられるのだろうか。マニュアルに「ぬるめ」はあるのだろうか。