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久しぶりに会ったサワキはスマホを見るのに老眼鏡を使っていた。
「急に来たんだよね。急にさ、見え辛くなってさ。まいっちゃうね」
私はクスクスと笑った。
なんか面白かった。
文化学院の時の友達に会うといつも学生時代に戻るのだが、当たり前のことであるが、私たちはしっかり歳を取っていた。
「オレも夜の車の運転が怖くなったから眼鏡を作ったよ。それと夜釣りの竿先やうきを見たくてさ。良かったよ。眼鏡、作ってさ。こんなにも見えるのかと思うほど見えるからさ」
「だよね、ほんとに良く見えるよね」
新宿から、アサダの飲み会の集合場所の上尾まで間、いつも決まってサワキの娘「ひぃーちゃん」のことを聞く。
ひぃーちゃんが三歳の頃だったと思う、私は一度だけ会ったことがあった。
サワキとひぃーちゃんの三人で西荻の居酒屋に行った。
その時のひぃーちゃんはとっても可愛くて、近くにいたお客さんもひぃーちゃんを見ては「可愛い」を連呼するくらいだった。
それから、ひぃーちゃんは大きくなるにつれて、サワキを成長期の女の子特有の父親をぞんざいに扱うようになっていった、その愚痴をいつも聞いてきた。
そのひぃーちゃんも気が付けば、今はもうJKでもなく、専門学校生になっているとのこと。
またいつか会えたら良いなとサワキには伝えた。
そんな話しをしていると、あっと言う間に上尾に到着した。
改札を出る前にトイレに行った。
そこで肥った男の子とすれ違った。
あれっと思い、振り返ると、向こうも振り返り、「テツ兄ィ?」と肥った男の子が言った。
「ショウタ?」
肥った男の子は頷いた。
タマの息子、ショウタであった。
一年ぶりに会ったら、まるまる肥っていた。
なんか面白かった。
改札口の出て、少し離れたいつもの場所で満面の笑みのツヨシとミエコが待っていた。
午後二時の待ち合わせだったが、三十分遅れてくる者たちが続出した。
相変わらず、文化学院の何人かはいくつになっても時間にルーズである。
そこは変わらないところの一つでもある。
だが、その間にコンビニに行き、ビールをとりあえず、二本ぐらいは飲む時間が生まれるのであった。
二年ぶりに上尾の駅は祭りでにぎわっていた。
{つづく}
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