6月14日(金)
昨日から帰っていないようだ。
オレをこわがって、友人の所へでも行っているのだろうか? そんなつもりは全く無かったのだが……
オレは今、友人の所と書いたが、恋人とか彼氏とか書くのがためらわれている。
一度しか会っていないのに、オレは何を考えているんだ?
6月15日(土)
隣の玄関ドアの開閉音がした。ひろみが帰って来たようだ。
何故かほっとしている自分に気がついた。……まさか、オレはひろみに好意を持っているのか?
引っ越しのあいさつの、あの儀礼的な笑顔を、オレは真に受けているのか?
しばらくすると、ひろみの歌声が聞こえて来た。
オレは咳払いをせず、ずっと、ひろみの声を、かわいい明るい声を聞いていた。
6月16日(日)
未だに心臓が高鳴っている。
朝、ゴミを一階の捨て場に出そうと外に出ると、ひろみも出て来た。「おはようございます」と言われた。
今も忘れられない。
引っ越しの時のあの笑顔と、かわいい明るい声が、そのままだった。
オレは声が出ず、ただ頭を少し下げただけだった。
……暗いヤツと思われただろう。
本心はとっても嬉しかったのに……
6月17日(月)
窓から何気なく外を見ていると、ひろみが見えた。その横に男が並んで歩いている。
ひろみが男と話をしている。そのままアパートに向かって来る。
……あれは彼氏か? 年も近そうだし、きっとそうなのだろう。
注意して聞くと、鉄製の階段を上がって来る靴音は一人分だ。彼氏らしき男は帰ったようだ。
ほっとしているオレ……
6月18日(火)
今日は会話ができた。
朝、ドアを開けると、ひろみが出掛ける所だった。
「おはようございます」オレの好きなかわいい明るい声…… 「はあ、おはようございます」オレは必死に声を出した。自分の声じゃないみたいなカスカス声だった。
「徹夜でもなさったんですかあ?」「ずっとお部屋にいるようですけど、お仕事はクリエイター関連ですかあ?」ひろみは興味津々に聞いてくる。「ええ、まあ……」オレは答える。情無いほど短い言葉しか出せないオレ。
「じゃあ失礼します」ひろみは笑顔を残して階段を降りて行った。
そのまま帰って来ない。
ひろみはオレに関心があるのだろうか。つまらぬ妄想が浮かぶ……
つづく
昨日から帰っていないようだ。
オレをこわがって、友人の所へでも行っているのだろうか? そんなつもりは全く無かったのだが……
オレは今、友人の所と書いたが、恋人とか彼氏とか書くのがためらわれている。
一度しか会っていないのに、オレは何を考えているんだ?
6月15日(土)
隣の玄関ドアの開閉音がした。ひろみが帰って来たようだ。
何故かほっとしている自分に気がついた。……まさか、オレはひろみに好意を持っているのか?
引っ越しのあいさつの、あの儀礼的な笑顔を、オレは真に受けているのか?
しばらくすると、ひろみの歌声が聞こえて来た。
オレは咳払いをせず、ずっと、ひろみの声を、かわいい明るい声を聞いていた。
6月16日(日)
未だに心臓が高鳴っている。
朝、ゴミを一階の捨て場に出そうと外に出ると、ひろみも出て来た。「おはようございます」と言われた。
今も忘れられない。
引っ越しの時のあの笑顔と、かわいい明るい声が、そのままだった。
オレは声が出ず、ただ頭を少し下げただけだった。
……暗いヤツと思われただろう。
本心はとっても嬉しかったのに……
6月17日(月)
窓から何気なく外を見ていると、ひろみが見えた。その横に男が並んで歩いている。
ひろみが男と話をしている。そのままアパートに向かって来る。
……あれは彼氏か? 年も近そうだし、きっとそうなのだろう。
注意して聞くと、鉄製の階段を上がって来る靴音は一人分だ。彼氏らしき男は帰ったようだ。
ほっとしているオレ……
6月18日(火)
今日は会話ができた。
朝、ドアを開けると、ひろみが出掛ける所だった。
「おはようございます」オレの好きなかわいい明るい声…… 「はあ、おはようございます」オレは必死に声を出した。自分の声じゃないみたいなカスカス声だった。
「徹夜でもなさったんですかあ?」「ずっとお部屋にいるようですけど、お仕事はクリエイター関連ですかあ?」ひろみは興味津々に聞いてくる。「ええ、まあ……」オレは答える。情無いほど短い言葉しか出せないオレ。
「じゃあ失礼します」ひろみは笑顔を残して階段を降りて行った。
そのまま帰って来ない。
ひろみはオレに関心があるのだろうか。つまらぬ妄想が浮かぶ……
つづく
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