お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

ブラックジョーク『名医ハリー・66』

2020年02月02日 | 名医ハリー(ショートショート)
326
「ぼくもそろそろ引退かなあ……」
「ハリー先生、そんな弱気な事をおっしゃるなんて、どうしたんですか?」
「最近、手術に身が入らないんだよ」
「それは困りましたね」
「そうなんだ。どれだけ赤い血を噴き出させても、内臓を切り刻んでも、ちっとも満足しないんだ……」


327
「スミスさん、もう病院には戻れないって言ってたわ」
「それは奥さんが原因なのよ。もう入院させないって言ったそうよ」
「それはお気の毒ね。でもどうして?」
「奥さんが、繰り返しの入院費用より、一回だけの葬式費用の方が安いって気がついたからよ」


328
「ねえ、看護師のお姉さん。わたし病院に飽きちゃった。拘束って言ったっけ? 自由が無いんだもん。退院したいわ」
「大人になると、身動きできないほどに拘束されて楽しむ事があるものなのよ、メイベルちゃん……」


329
「あなた、看護師に向いてないわ! さっさと病院から出て行きなさいよ!」
「そう言うあなたは、人間に向いてないわ! さっさと人類の枠から出て行きなさいよ!」


330
「わたしもそろそろ引退かしら……」
「アリス先生、そんな弱気な事をおっしゃるなんて、どうしたんですか?」
「最近、手術に身が入らないのよ」
「それは困りましたね」
「そうなの。もうこれ以上の失敗の仕方が浮かばなくって……」


作者註:これをきっかけにお時間の許させる方は過去のハリー先生をお読みいただけると嬉しいです。

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