形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

鉢巻きをした青大将

2011-09-05 18:21:42 | Weblog

小学校の夏休み。 オフクロの郷里、桑名でのこと。 
叔母一家は二列に並ぶ、市営の棟割長屋の一角に住んでいた。 
その真ん中の道はわりと広く、道を進むと、墓地のそばを通り過ぎ、
小さな川と広い原っぱがあった。 そこには東京ではめったに捕まらない
銀ヤンマが、ずいぶん飛んでいて、トンボ捕りをする子供たちの
格好の遊び場だった。

片方の家並みの裏が、その川の上流で、よくそこを眺めていた。 
川の両側にはアシや菖蒲が茂っていて、流れはゆるいが深そうだった。 
そこに時折、雷魚(ライギョ)がボカッと浮いてくるのだ。

雷魚は迷彩服のような模様の魚雷型の魚で、なぜか今ではほとんど見ることが
なくなった。 アジア産の外来魚だが、その頃の桑名の川にはそこらじゅうにいた。

鋭い歯をもつ獰猛な魚で、普通の川魚の雰囲気と違い、勇ましく見える
ので男の子たちにとても人気があった。 かなり大きくなる魚で、
1メートルぐらいのを釣ったり、網で捕ったという話を聞いた。 
捕った雷魚の口に触ろうとして、危ないと、叱られたことがある。
それほど歯が鋭い。

濁った水の中から雷魚が浮き上がってきて、なにをしているのか、
しばらく浮いている。 それからまたスッと潜っていく。 
それを飽きもせずに、半日も眺めていたこともある。

あるとき、その川沿いの、高くほとんど人の通らない草ボウボウの小道を歩いて、
原っぱのほうに行った。 原っぱに出たところで、私よりずっと年上の、
兄貴分のマサシちゃんに会った。

「そこは歩いたらいかん」
「なんで?」
「青大将が出る」
「アオダイショウって何?」
「ヘビの大将だ。 頭にショウブの葉っぱで鉢巻してる、青い大きなヘビだ」
「エーッ!!鉢巻してんの?」
「そう、鉢巻して、こうやって、(と、手首を曲げて、鎌首をもちあげた
 ような格好をしてみせて)もの凄い早さで追いかけてくる」
「・・・・・・・」

すっかり頭の中に、鉢巻をして鎌首を持ち上げた、緑の大蛇のイメージ
がこびりついてしまい、二度とその道を歩かなくなった。

あとで考えれば、川に落ちると危ないからと脅したのだろうが、それ以来、
青大将と聞くと、鉢巻をしたヘビの姿が頭に浮かんできてしょうがない。

                    
からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/



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