形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

トリモチ

2009-12-25 17:33:59 | 昭和の頃
今の人たちに、トリモチといってもわからないかもしれない。
ベタベタのゆるいガムみたいなもので、強い粘着力があり、これを
長い竹の先のほうにつけて虫をくっつけて獲る。  ずっと昔には、
鳥刺しという仕事があって、これで食べるための鳥も獲ったという。

夏になると、駄菓子屋さんでトリモチを売っていた。
男の子たちは、このトリモチを買ってトンボやセミを捕まえる。
ただ、つけられた虫は、暴れて羽からなにから、ベッタリくっついて、
ひどい状態になり、虫カゴに入れて見る、あとの楽しみはなかった。

これで虫を捕りたいというより、駄菓子屋のお爺さんが、竹にトリモチを
つけていくのを見ているのが面白く、出来立てのそれを手渡されることが、
うれしかっただけのような気もする。

「トリモチ、ちょうだい」というと、お爺さんは店先に束にして立ててある、
長い細竹を一本取り出す。 それから手に水をつけて、容器の中の白っぽ
いトリモチを少し取る。 トリモチは水がついていると全然くっつかないが、
つけていないと、指に張り付いてどうにもならないのだ。 そして、竹を
クルクル回しながら、先の20センチぐらいにのばして付けてくれた。 
これは見ていて面白いものだった。

このトリモチ、間違って頭などにつけられると大変だった。 私もつけられ
たこともあるし、つけちゃったこともある。 竹を肩にかついでいて、おしゃ
べりに夢中になっているうちに、竹の先が下がって後ろの友達の頭にベッタ
リくっついた。 水道のあるところで、頭に水をかけ丹念に取るしかなかった。


トリモチを調べてみると、モチノキの樹皮を砕いて網の袋に入れ、
沢の水に長い期間漬けっぱなしにしておくそうだ。 木質部分が
腐って流され、あとに水に溶けないトリモチの成分だけが残り、
これから作るという。

こうしたことは、始めからわかっていたことではないと思う。 
誰かが偶然に、沢にあったモチノキのトリモチ成分を見つけ、
時とともに、それが鳥を獲るまでに発展していったのではない
だろうか。 そんな想像をふくらませていくと興味深い。
               
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


[ 警告 ]当ブログ内に掲載されているすべての文章の無断転載、転用を禁止します。すべての文章は日本の著作権及び国際条約によって保護を受けています。Copyright shinso koisikawa. All rights reserved. Never reproduce or replicate without written permission.


コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« たき火 | トップ | ウスターソースチャンポン? »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (yuuri)
2009-12-25 17:37:29
鳥もちをお買いになっていたとは羨ましい限り・・
私はモチの木の皮を剥いで2ヶ月ほど田んぼの泥の中に埋めておき、それを木槌で叩いて鳥もちを造っていた。緊急に必要な場合は剥いだ皮をそのまま口の中に放り込む・・噛み砕きながらペッペぺっぺと木の繊維を吐き出す。そうするとガムみたいに鳥もちが出来上がる。それを椿の枝に張り付けると可愛いメジロや美味しいスズメが獲れるのだ・・
口の周りはヤニでベトベト、緑の口紅をさしたようだったな・・冬のこの時期は子どもたちの唇は緑だった
懐かしく思い出してしまった天才と呼ばれていた頃?
返信する
Unknown (小石川)
2009-12-25 17:41:07
ワイルドだな!そういうのやりたかった。
モチノキから作るなんて、大人になってから知った。
天才?! 焼酎の? ^^
返信する
Unknown (masa)
2009-12-25 17:42:50
くちゃくちゃと噛んでつくったの?
男の子がこういう遊びをしていたことを
私はぜーんぜん知りませんでした
経験豊富なんですねーー。

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

昭和の頃」カテゴリの最新記事