形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

ガスを噴射する虫

2011-05-02 19:15:22 | 自然と野遊び

昭和30年代、東京にもいたるところに原っぱがあった。 ただの雑草の
生えた空き地で、そこには大きな石や板切れ、コンクリートの塊など、
いろいろなものが放り込まれていた。そこは絶好の子どもたちの遊び場だ。
大人の考え出した遊具を、整然と並べてある公園より、子供たちには
ずっとおもしろい場所だった。

落ちているものをかき集め、自分たちで工夫して、いろいろな遊びを作り出した。
ときには、集めた板切れや丸太ん棒を、石ころを金づち代わりにして、拾った
錆び釘を伸ばして打ちつけ、犬小屋のような小さな家を建てたこともあった。

そんな原っぱに仲間たちと行くと、まずやることは落ちている板や石を、サッと
どかすことだった。 その下にはいろいろな生きものが潜んでいて、突然差し込ん
できた陽の光に、右往左往して逃げ出す。

その中に、ガスをお尻から噴射する虫がいる。 子供たちが真っ先に探す虫だ。
逃げ出すこの虫の背中を小枝で押さえると、まるでスカンクのように、お尻から
タバコの煙のような、薄紫のガスをキュッと音をたてて噴射するのだ。
発射できるのはせいぜい3、4回ぐらいで、ガス欠になると、それまで余裕の
よっちゃんみたいな虫は、おかしいほどあわてて逃げ出す。

ただ誰もこのガスの匂いを嗅いだ子供はいなかった。 きっと臭いに違いなく、
いかにも体に悪そうで、子どもたちは鼻をつまみ、息を止めて虫の背中を
押して遊んでいた。 

調べてみたら、やはりガスは毒性と悪臭のあるもので、なんと100度もの
高温があるそうだ。カエルなどがエサにしようと舌を伸ばすと火傷するらしい。 
東京ではこの虫も見かけなくなった。ミイデラゴミムシという、ゴミムシの仲間。


形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


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