小学校の頃、砂場に落とし穴を作るのが、男の子たちのあいだで流行った。
悪ガキのイタズラで、小さな穴を掘り、その上に落ちている小枝を組んで
新聞紙をのせ、砂をかけてわからなくする。 それから友だちを呼ぶ。
呼ばれたほうは、笑いをこらえているような友達が、
どうも怪しく思われ、砂場に目を配り、用心しいしい近づいていく。
それでも落っこちると、ワーイ!ワーイ!とはやしたてて面白がった。
こういうのはたいていエスカレートする。 しまいには、犬のフンを
穴の底に入れるヤツが出る。 (私もその一人です。)
その当時、東京の家々で飼っている犬は、たいてい放し飼いだった。
朝、エサをやると放し、犬はそこらじゅうをほっつき歩き、夕方もどると
また鎖につながれた。 だから犬のフンは町のどこにでも落ちていた。
落とし穴に入れておくのは、カラカラに干からびたやつである。
それを鼻をつまんで、ひろった木の枝を箸のように使って穴の
底に仕掛けるのだ。
穴に落っことしたほうは、サッと両手の親指と人指し指で輪っかを
作って鎖のように組み、「エンガチョ、鍵閉めた!」 と宣言する。
こうすると、犬のフンを踏んだほうから触られても、その汚いのが
乗り移らないのだ。 鍵を閉めそこなって触られると移される。
考えるとおかしいが、悪ガキたちは慌てて鍵をかけていた。
中にはフン穴に落とされて、頭に血がのぼるやつがいた。
仕返しにフンを棒で挟んで、投げつけようと振りかぶったら、
ちぎれたフンが頭に落ち、家に飛んで帰って頭を洗うのがいた。
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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