今から30数年前、
私、潮風太子は社会人となった。
最初に入社したのが
今は無き某工業系企業。
当時の同期2名とは
いまだに交流がある。
2名というのはお察しの通り。
落ちこぼれ社員には、
落ちこぼれどうしがお似合いだった
というコト。
入社直後早々に会社からバカさを
簡単に見抜かれ現場配属となり、
毎日毎日、
職人気質のジジイ師匠たちから
罵声の叱責とドツキの嵐。
今なら十分パワハラもんだが
当時はそれが「現場」では
ごく当たり前の日常だった。
ただ今となっては
仕事に対する厳しさ含め
ホンモノの職人技を間近で
見ることができたことは
ある意味幸運だった。
かもしれない…
「仕事は見て盗め!
金を盗んだら泥棒だが
仕事はいくら盗んでもサツに
捕まらねんだからな」
これが当時の
師匠連中の決めゼリフ。
人間的には明らかに
クズな連中なのだが
仕事には一切の妥協を許さぬ
まさに職人集団だった。
しかし後々彼らは
リストラそして倒産失職~
他社でバイト扱いの憂き目なんて
悲惨な状況に遭うハメに…
先日、元同期のMと久々再会。
酒席に着く早々、
「まぁコレ見てくれよ」と
とある部品をカバンから出す。
自動車のとある部品であることは
すぐに察したが
これが何の部品かは言わないのは
職人の世界の掟。
現場でも図面だけ渡され、
それが何の部品かは
一切知らされることなく、
規定の品物に淡々と仕上げる。
これが昭和型の仕事。
それが何の部品かを知ることは
企業秘密を暴露されるリスクを
恐れてのこと。
昔から何十年も続く
町工場での伝統でもある。
これ常識ナリ。
さて、かの部品。
見るからに表面の仕上げレベルが
潮風太子的にはオシャカレベル。
顔が映る位でなければ…
「コレで規格は合ってんの?」
と聞けば、
待ってましたとばかりに
「JISギリの15…(笑)」
「コレ○○の軸部品だろ?
これじゃガタ大きくね?」と問う。
15とは規格誤差0.15ミリという意味。
「社内規格は?」と聞けば
「一応10だけど最近は10も…」
「これなら最低でも
規格半分の7ぐらいだろ?
よく検査通るな…そんなんで」
「今は昔みたいな2.5とかなんて
マグレのレベルよ…」
「でもデータ改竄されるよりマシ」
と自虐的な笑みを浮かべるM。
落ちこぼれだったMも今や
重責役職に出世したものの、
「怒ればパワハラ、黙認すれば
不良部品隠蔽の片棒担ぎ…
もう積んでるよこの国の工業は」
Mもまた
この世代独特の
あと少しで逃げ切り…でも、
こんなんでいいのだろうか?…
という自問自答の日々を
送っていることは明らかだった。
職人不足…
これは必ず深刻化する。
大学進学には熱心なのに
職人育成には一切無関心な国…
このネタも再三書いてきたが、
あと数年で確実に
何でも難題をクリアできるような
昔ながらの職人の数も激減し、
やがて30年もすれば絶滅する。
そしてこの国の工業は死ぬ。
改めてそう確信した。
お勉強はデキる「お利口さん」
エンジニアはしこたまいる。
しかし、彼らが描いた
素晴らしいデザイン、
超理論的な設計図、
それを忠実に製作、
工期を遵守し予定通り
安定した製品にできる
職人の数の激減ぶりといったら
特にここ数年で驚異的なペースだ。
その昔よく当時言われていた
これからの時代はコンピューターが
全部やるので職人などいらない時代が
必ずやって来ますククク…
なんてバカを言っていた、
デジタル音痴のアホ世代の戯言が
皮肉にも逆の現象を起こすハメに。
再三書くが
デジタルとやらを使いこなすには
数学的センスがナイと
まったくネコに小判。
関数が苦手なんて
もう致命的だ。
関数というとゾッとするかも
しれないが、
要するに立体図のイメージが
スムーズにできるかどうか…
例えとしてどうかと思うが
ゲームのスプラトゥーンや
荒野行動などのロープレゲームで
攻撃をする際に全体が
すんなりイメージできているかどうか…
という感覚と書いた方がいいか。
自身のプレイもさることながら
相手や仲間が今、
どういう動きをしているか、
自分は今どう動くべきか、
何をすべきかを
瞬時に迅速かつ的確に
正確な判断そして行動する
能力の有無。
これが工業職人気質の
本質というヤツなのだが、
これもバブル崩壊以降の
コストダウン至上主義から
始まった派遣社員任せの
現場作業の
「このくらいでOK!
言われたことだけやればヨシ」
という風土を作り出してきた
コトに始まる。
製造工程も派遣社員なら
検査も派遣社員、
最終検査だけ社員だが、
このときすでに遅し…
でも工期が…
そもそも人材が…
こうして何ら改善されず
沈黙は金なりで時間と年数だけが
重なっていった。
とある某大企業の研究所ですら
約7割が派遣社員という、
そんなんで大丈夫なのか?
情報管理など
徹底できるワケなかろう。
と個人的には思うが、
いまだに性善説と
希望的観測のみが
漫然と支配する今の我が国で、
こういうコトが起きても
もはや驚かない。
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まだダイハツはまともな会社だ。
こうしてバレただけ。
ただこのダメージは相当なモノ。
ボーナス支給の後だったことが
我々世代にはグッとくる。
明日は我が身かと思う同世代の
サラリーマンも相当な数になろう。
このニュースに世間が驚いてるサマを
「何を今さら…」と
ニュースを横目で見ながら、
「いよいよ終わりの始まりか…」
と心に思う師走の私メです。
今年も残り少し
身体に気をつけて頑張って
参りましょう!
ではまた。
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