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源氏物語ー匂宮と逢瀬を重ねる浮舟

2007-12-09 14:26:40 | 源氏物語
源氏物語の最後の女君、
浮舟の物語もクライマックスを迎えます。

浮舟の巻の下記の記事の続きになります。
悲しからずや浮舟

雪の積もる山深い細道を押して、宇治へと向かう匂宮、
それに感激する女君、
宮は兼ねて用意した隠れ家に浮舟を連れ出します。
女を抱きかかえて、
小舟で対岸に渡る情景、美しい道行の一幅の絵です。

 つとつきて抱かれたるもいとらうたしと、宮は思す。

ひたと寄りすがる浮舟は、
匂宮との許されない恋に酔いしれる、かにみえます。

 有明の月澄みのぼりて、水の面も曇りなき

有明の月をはじめてふたりで見ている、
物語において有明の月は、かなり意味深い重要なシーンとなっています。
後朝(きぬぎぬ)の歌、

 橘の小島の色はかはらじを
  このうき舟ぞゆくえ知られぬ

浮舟は不安がっています。憂き身にうち震えています。
匂宮はノウ天気、少しも察していません。
それどころか、
白一色の五衣、の女君を
ここまでしどけない姿を見たことがない、
(透けてしまうほど脱ぎ滑らせてしまったのは宮自身)
と珍しがっている。
この姿を浮舟自身も、侍従にさえこんな姿を見せたことがない、
と恥ずかしがっている、
でも屈辱とは思わないのねー!
光の差し込むなかで見た匂宮の御かたち、
そのまばゆいばかりの美しさにすっかり魅入られている。

宮のこういう趣向は、寂しいときに見なさいといって自ら絵筆をとった
男女の絵、にもあらわれています。
宮には無意識の下心があります。
薫への対抗意識、です。
中君との仲の疑い、もあります。
仲のよい男同士の友情と、対抗意識、
源氏と頭中将、柏木と夕霧、と描かれてきてますが、
ここへきて、醜い面も暴いているのですね。

このすれ違ったままの心で、物語が進行していってしまうのです。

 降りみだれ みぎはに氷る雪よりも
 中空にてぞわれは消ぬべき

はかなく中空に消えてしまう、自らの死の予感を書き留める浮舟です。


↑写真出処/源氏物語千年紀事業



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