紫苑の部屋      

観劇・絵画と音楽・源氏物語      
について語ります        

さよなら歌舞伎座7月公演ー海老蔵の公子、団七、図書之助に魅了される 

2009-07-25 23:58:02 | 観劇
歌舞伎座2度目の「海神別荘」の公子、
前回より一回り大きくなった、威厳に満ちた海底の王でした。
王の理屈、
馬に乗せられて市中引き回しのお夏がどうして罰をうけていることになるのか、
分からない、といいます。
お夏は17歳(ホントは16歳)のまま姉の乙姫さまに救われて楽しく暮している、
清十郎は老いさらばえて、くらげになってしまった?
清い魂以外はくらげになるらしい。

美女の理屈
人間とはなんぞや、という哲学がありますよー。
人はわが身の存在を、他に認識されなければ存在しているとはいえない、
といいます。
これは、宇宙はそれと認識されなければ、存在することにはならない、
と考えた(?)神と同じなんです、
そして神が最後に造形したもの、それこそが人間、でした。
この真理、に海底王はきっぱりと否定し、
存在するもの、それ自身でそれは有る、
と言い切ります。
鏡花の核心はここにある、と確信をもっているのね、それがすばらしい!
美女の玉三郎はまぶしく公子を見つめます、ホレボレするの、わかりますね!

夏祭浪花鑑の団七、
平成中村座のをすっかり見慣れてしまっている、私たち観客に
これが歌舞伎の団七だ!と見せてくれました。
何年か前に吉右衛門も正調の団七をやりましたが、
海老蔵の団七が断然いい!
よく身体の動く海老蔵の若さが大いに発揮され、
団七の見せ場をひとつひとつ決めてくれました!
なんといっても、序幕の床屋からすっきりした成りで出てくる団七、これが最高です!
海老蔵で観たい役の一つでした。
これが決まるのって、そうざらにはいません!
海老蔵の歌舞伎座の団七は初役ではないでしょうか?
市蔵の義平次はそんなに嫌みな悪人ではないのは、
あまりに笹野高史の義平次が強烈すぎるからでしょうか。
一つの演目を幕間なしにきっちりまとめて、いい出来になっていました。

天守物語は何度観ても感動的です!
鏡花の世界には醜い俗世を生きる人びとの哀しさがあります。
異界の姫といえども人間の過去を背負っているのです。
しかし、人の世を怒り嘆きするけれど、人を愛してしまう、
生きることに光をあてているのですね。
海老蔵は受動的な鷹匠ではなく、
清々しく雄々しくもある武士として図書之助を表現しました。
裏声ではなく地声だったのが功を奏したのだと思います。

今回の海老蔵の演じた3つの役、海老蔵ならではの公子、団七、図書之助で、
醒めない夢のように酔いました!
もちろん玉さまの相手役であればこその輝きです。

さよなら歌舞伎座7月大歌舞伎演目&配役

蛇足ながら、苦言がないわけではありません。
天守物語、完成度はかなり高い、と思うのですが、
鳴り物をうまく入れ込むことができてない、のですね。
音楽は生でなくちゃねー、録音のはあれは単なる効果音です。
それに比べて海神別荘のハープ、これには大きな拍手が湧きました。

それから今月いちばん気になったこと、
勘太郎はとても頑張っているのだけれど、
お辰はどういう人物像なんだろうと、疑ってしまった!
ひとつは、顔が色気がありすぎる、という設定、それがマッチしてませんでしたよ。
浅葱色の半襟の半返しを見せていましたが、
襟足も衿あわせのところにも半襟少しも見えてませんでした。
着物は夏の黒の絽でしたから、白でなくてもいいですが、
半襟をきちんと出すべきだと思うのは私だけかしら?
しかも胸元が広く開けてあって、あれでは色気ではなく、淫らに見えます。
もうひとつは、訪ねてきた家に上がったら、履物は必ず手を添えて揃えましょう!
長屋のおかみさんだって、そうしますよー!
わたしって、嫌みな姑みたい~


最新の画像もっと見る

コメントを投稿