紫苑の部屋      

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玉手御前とお三輪

2007-03-11 11:45:49 | 観劇
合邦辻
歌舞伎では、合邦庵室の場だけの上演しか観たことがないのですが、
文楽ではその前段、万代池で勧進祈願の合邦を登場させ、かれの人間像をまずおさえさせる。
そして、俊徳丸がさまよった末に、河原乞食に身をやつしてしまった姿で
許嫁の浅香姫と邂逅する。二人をかくまう合邦、娘の回向をする合邦夫妻。
どういう状況の中に玉手御前が帰っていくことになるか、はっきりしてきます。
歌舞伎ではこの前段がない、その分、
玉手御前の登場、庵室の戸外におりたつその姿ですべてをわからせるのです。
私は、歌右衛門の、微動だにしないその立ち姿に感動したのを忘れられません。
ものすごく抑えた静は、秘めた想いを顕在させる。
ぴーん張りつめた緊張感、
歌右衛門の額から流れ落ちる汗…、(肉眼で見えてしまうほどの汗でした)
ラシーヌのギリシャ悲劇フェードル、継子への激しい愛を隠しきれず狂気をよそおう、
古今東西の愛の真実、それを感じました。
さて、文楽のほうです。
文雀さんの玉手は激情を見せているのに,あくまで内なる使命を秘めた冷静さを失わない。
俊徳丸への愛が見せかけなのか,本心なのか、どちらともとれるように、というのが文楽のほうの解釈のようです。
いかにも日本的で面白いです。

妹背山婦女庭訓
これも歌舞伎では、三笠山御殿の場(=金殿の段)だけ演じられることが多い。
前段の道行恋苧環(=舞踊でも)、鱶七上使、後段の入鹿誅伐があるので、
お三輪さんがよろこんで死んでいけるわけが納得させられます。
そのストーリーはともかく、蓑助さんのお三輪、観れてよかった!!それだけで幸せ!
このメリハリのある動き、表情の豊かさ、
人形でしか究極の愛情のあり方を表現できないのではないか、と思わせる。
とっても不思議なのですが、蓑助さんがもっとも高揚する人形にかわって、「ぃよっ!」と声を発する、
あれがツボにはまるっていうか、いいんですよね。
(観劇は07/02/23 国立小劇場)


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