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七之助の新たな挑戦ーコクーン歌舞伎「切られの与三」

2018-05-24 17:24:28 | 観劇
原作は『与話情浮名横櫛』
よく上演されるのは、「見染め」と「源氏店」ですが、
再会して兄の情けでお富と晴れて夫婦になれた、与三郎のその後、
ほとんど知られてない…
でも、原作にはどのように書かれているのか、
上演されてはいるらしいが、結末が多岐多様とか。

原作はてっきり黙阿弥、と思っていましたが、
瀬川如皐(じょこう)という、幕末から明治にかけて活躍した歌舞伎作者で、
鶴屋南北の弟子だそうで、七五調の台詞の先駆け、
南北と黙阿弥の間を埋める時代の申し子、ということらしい。

今回のコクーンでは、
現代演劇の気鋭、木ノ下歌舞伎の実績のある木ノ下裕一が補綴(ほてい)ということで、
新しい与三郎の創出、
現代日本の退廃・虚脱のなかでどこまでも落ちていく青年像とクロスするようです。
と同時に、七之助の新しい俳優としての創出でもあります。
お兄ちゃんと離れてのコクーン歌舞伎、立派に巣立った感のある、七之助です、
それがなんだか嬉しいのは、なぜでしょうかしら。

さて、その後の与三郎ですが、
折角夫婦になれたのに、もらったお金を使い果たし生計の糧もない二人のなれの果て、
人を殺して現行犯で島送りに、島抜けしてみれば、お富は人の女房に、
なんの生きるほだしももてなくなった与三郎は再び人を殺めて逃げる、逃げる…
そして、最後は、印象的な名科白(といっても、原作にあるのか、補綴されたのか)
で終わる。それを再現できないのが、残念ですが、
それが今回のコクーン歌舞伎の醍醐味、でした。

演出・美術:串田和美
コクーン歌舞伎 第十六弾
切られの与三

配役↓

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