紫苑の部屋      

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冬の夜の澄める月

2007-02-08 14:41:38 | 源氏物語
源氏物語に月は欠かせない風物詩、
石山寺参詣の折に、水面に映った月をみて須磨の着想を得たという、逸話がのこされているほど、平安の人びとにとって、月はもろもろの物語を呼び起こすものだった。
さて、源氏物語 若菜の巻 です。
六条院女楽の段、

冬の夜の月は、めでたまふ(源氏の)御心なれば、
おもしろき夜の雪の光に、御琴どもとりどりに弾かせて
遊びなどしたまふ

月を彩る、この風情…、
ピンと張りつめた冬の夜気、雪の光、琴の音色、
五感で伝えるのです。
源氏は冬の月をめでて
「冬の夜の澄める月に雪の光りあひたる空こそ」
おもしろさもあはれさもこれにまさるものはない、と語っている(朝顔の巻)。
そのあとに続く言葉
「すさまじき例に言ひおきけむ人の心浅さよ」
とあるのが、古来論議をよんでいるらしい。
すさまじきもの、師走の月夜、と枕草子にかつてあった、との説があるらしい。
清少納言批判、との読みになるわけで、おもしろくなるんですが、
どうもそれはかってな憶測のようです。
一般的に世の人びとは冬の月をすさまじきものとしていたようなのです。

さて、この琴の合奏、
47歳となった源氏が、正妻女三の宮に琴(きん)の琴を伝授するために、
夜な夜な宮の寝殿に通いつめていたときのものです。
源氏に嫁して6年、女三の宮は21,2歳となっていました。
この年月は、紫の上にも流れていたわけで、
37歳(女の忌み年)と、あえて年齢が明記されています。
こうしたなかで、華やかな六条院の女楽が、催されることになります。

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