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8月納涼歌舞伎、アイーダ以外は全部よかった!

2008-08-26 23:58:15 | 観劇
一部二部とも、
例年のように、納涼歌舞伎らしく楽しめました。
古典の舞踊劇と、新歌舞伎の絶妙のバランスで、
平成中村座のいつものメンバーたち、
休む暇なく、全力投球している姿はとても清々しい!

今日の朝日新聞に
三津五郎さんの8月公演中の一日のタイムスケジュール
載ってましたね。
私たちの日常と同じように、
歌舞伎座という仕事場に通って、楽屋に詰めて、
舞台のお仕事をこなし(出番の幕間にお風呂で役を切り替えてらっしゃる)
帰宅してかるく水割り(5杯は軽くはないか!)飲んで、バタンと入眠とか。
腕のいい職人、って感じね。
実際、三津五郎さんの出番の舞台には、気っぷのいい江戸っ子そのままがそこに居る、その存在感は独特です。
そのセリフ回しの心地よさ、仁左さまとはまた違う味わいです。
「らくだ」のヤクザ者も品があるのよねー。
「つばくろは帰る」の大工はまさに情のある江戸職人、ぴったりね。

この作品「つばくろは帰る」は、
川口松太郎作だから新派なのでしょうが、
三津五郎の滑らかな口跡、歌舞伎ならではの江戸の風物詩のなかで輝きます、
そして、舞台の祇園の家屋の造り、
大工文五郎が玄関先ではなく、中庭のほうから通されると、
庭の作りのこと、京間の間どり、襖の京らしいところ、隈なく愛でる、
そういう細かい芸、うれしくなります。
ところで、この演目のあいだ、私はまた別のことを考えさせられていました。
江戸というところ、
腕に職をつける、それが社会のなかでちゃんとした位置を占めていた時代、
たとえ親がいなくても、
親方のもとで修行を積めば一人前になれて、飯を食っていけた社会、
今の世と比べ、豊かな社会とはいったいどちらをいうのか……、
決して美化ばかりするわけではないが、
いったい歴史というものは進歩しているといえるのか…。
そんなこと思いながら…、
舞台のほうは…、
雪景色のなかで祇園芸妓君香の福助姐さんが佇む、印象的な場面で終わります。

一部二部の勘三郎もいつものように、楽しい舞台。
「らくだ」の三津五郎とのコンビは実に面白い。
おっと、亀蔵のシビトも入れてトリオですね。
この可笑しさ、やっぱり落語なんですね。
その歌舞伎化ですが、
映像化されてより面白くなる、演出がいいってことでしょうね。

「酒呑童子」も面白い趣向です。
船弁慶のパロディ?山伏姿はどれも同じに見えるだけ?頼光はどうみても義経、
童子姿の勘三郎、持ち味を十分出して、らくだ同様、自然体がいい。
歌詞にワレモコウ、とか秋の草花が詠み込まれていたせいか、
童子のお扇子にはあざみの花があしらってあって、閉じると花をもっているようにみえるのね。
そして舞台装置が面白い。
一段高い舞踊用の所作台を小振りにして中央に設置してある。
私は、初めて見るので、これまでのを知りませんが、
三方に開けている舞踊の所作台、斬新です。(一部の連獅子もそうですね)
劇的要素が濃くなります。
これは串田和美の美術なのでしょうか?
背景の墨絵も生きてましたね。

女暫、
福助姐さん、初役でしたのね。
裏声ではなく女丈夫の声、よくでてました。
そしていつもは気にも止めない、ナマズ坊主、勘太郎だとなんて素敵なんでしょ。

親母子の連獅子、
あの舞台装置、松羽目を思い切って変えると、随分新鮮な印象になるのには驚きます。飽きさせない、美術スタッフのお手柄ね。
母獅子の扇雀さん、踊りを演じる、歌舞伎役者のすばらしいところです。

8月の納涼歌舞伎19回目だそうです。
いろいろ新作もかけてきた19年だったのでしょう。
今年のことで思うのです、
奇を衒ったのもたまにはいいでしょうが、やっぱりベースから離れない、
それが肝要です。
今年のアイーダの歌舞伎化、
なにが足りなかったのか、
その気迫に欠けたのは、いったいなんだったのでしょう。
訴えたいもの、観客の喜ぶものを…、の前に、それが熟していなければ…。
結局、今年の納涼歌舞伎、愛陀姫以外は全部よかったねー、
ということになったのでした。

思うに、野田版愛陀姫には、鳴り物がなかった!
歌舞伎の鳴り物がです、
舞台に並ぶ長唄、常磐津、二階から語る浄瑠璃も、
御簾のうちから聞こえるお隣さんの端唄も、
すべてひっくるめて歌舞伎なのよ。
欠かせない相棒なのです。
単なるBGMではない!
(とはいうものの、ラストシーンで使われた「ベニスに死す」であまりに有名なマーラー交響曲第5番第4楽章アダージェット、これは不思議とよかった!)

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1 コメント

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はは~、タイトル通りでごぜえます (Sa)
2008-09-18 01:22:31
あははっは~
sionさん、今回の日記、題名通りおっしゃる通り、私も同感(^^ゞ

私だってたいしたこたぁ申せないのですが、そしてだいたいは受け入れられるはずなんですが、愛陀姫ばかりはすこ~んと肩透かしをくいました。(私が見た時、隣に○田氏がいらっしゃいました。爆)

エジプトとエチオピアを美濃と尾張に置き換えるってのはナイスアイデアと思いましたが(やっぱり頭のイイ人は凄いわ)、そこまで、そこまででした~、多分、多分ですよ、オペラだと、歌の中に思いの深さを込められるんですよね、が、今回はその思いの深さがどこにも込められらずに終わってしまったので、平坦なストーリーになってしまったのだと思います、それこそ義太夫だの浄瑠璃だのにその思いの深さを込める…というのも歌舞伎になるひとつの方法だったんじゃないんでしょうか

sionさんの今回の日記を拝読して思いました。
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