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源氏物語絵巻 鈴虫一

2007-10-09 10:53:57 | 源氏物語
源氏物語絵巻 鈴虫一
出家した女三の宮と、
そしてもはや御簾の中には入れぬ源氏、
十五夜の夕暮れ、
秋の前栽をながめ、鈴虫の音を聞きながら唱和する、
情趣深いシーンです。
これを最後に、女三宮の物語が終わっていきます。


復元模写  ↑写真の出処です

左に渡殿が斜めに描かれ、
隅の几帳から洩れ出た衣装、源氏です。
左上に御簾の向こうから顔をのぞかせているのが、
静かな出家生活をしている女三宮。
中央にいるのは宮に従って尼になった女房。

源氏は、前栽の野に
 虫ども放たせ給ひて 風すこし涼しくなり行く夕暮れにわたり給ひ 
 虫の音を聞き給ふ
そうして未練たらしく宮に言い寄る、
といっても、
 秋の虫の声のなかでも松虫こそ勝れていますねー、
と風雅を語るのです。
宮は
 おほかたの秋をば憂しと知りにしを
  ふりすてがたき鈴虫の聲
としのびやかにのたまふ。
いとなまめかしと、源氏は惹かれる。

そして、未練は琴の伝授に及ぶ。
琴の御琴、最高の身分に引き継がれるべき琴、その継承者だった宮、
それを惜しむ源氏の、管弦に対する並外れた思い、
それが余韻となっています。




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