紫苑の部屋      

観劇・絵画と音楽・源氏物語      
について語ります        

薫物語の序章ー横笛の巻

2007-10-09 10:36:34 | 源氏物語
横笛の巻には、
幼い薫が竹の子をしゃぶる場面が出てきます。
 筍(たかうな)を とり散らして食ひかなぐりなどしたまえり

今のあの大きな竹の子を?孟宗竹の?
と思ったら、どうも違うようです。
細く長い筍、ハチク、
淡竹、呉竹ともいい、今は茶筅とか、になるのですが、
ここでは、笛になる竹を連想させる、ということになる。
そう、柏木の残した遺品の笛、そして遺児、
そうした因縁の物語の序章を想起させます。

はかなく亡せたまひにし、柏木の一周忌、
からはじまる、横笛の巻
薫数え2歳、
冒頭の場面、
 わか君は、唐(から)の小紋の紅梅の御衣(ぞ)の裾をひきやられて
最高級の衣をふだん着にきせている(源氏がということ、どういった気持ちでと想像させる)
 雫もよよと食い濡らし
その様子をみて源氏は、
 憂きふしみな思し忘れぬべし(憂きこと=柏木の遺児であること)
源氏の目から薫のうつくしいようすが描写されます。
 くちもと、かわいらしく匂ひ(赤みさし)
 まみ、のびらかに薫りたる(うつくしい)
柏木はこれほど際立った美しさではなかった、女三宮にも似ているわけでもない、
源氏は自分に似てないこともない、それほどすばらしい器量、と思います。
面白いですね、格段に美しいから、自分に似ていると思う、
美しい容姿の源氏だけに許されることね。

同じように幼子を見つめる夕霧、
 ぶつぶつと(ふっくらと)清らなり
と柏木のおもかげを見る、のです。
夕霧の目は読者を正常位置に、源氏の思い入れの複雑さを浮き彫りにします。
夕霧は落葉の宮の母、一条御息所から柏木の横笛を預かります。
そして、夢で柏木の遺言を聞くのです。
 笛竹、末のよながき音に伝へなん
源氏に相談します。
 陽成院の御笛なり(これは史実に基づく設定でもあるようです)
由緒ある笛を柏木が名手だったから、賜ったもの、
末の世の伝えは女ではダメである、
王統に伝えられるべきである、
預からなければならない由縁がある、
と語り、父から息子へ、と密かに思う源氏。
宇治に入って薫が吹く笛は、源氏が教え伝えたもの、だったのです。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿