紫苑の部屋      

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文楽×シェイクスピア―画期的こころみ

2014-09-25 22:04:19 | 観劇
今月の文楽は、
新作 不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)
「ヘンリー四世」「ウィンザーの陽気な女房たち」を原作とするシェイクスピア劇の文楽版、
鳴り物入りでの上演でした。
座談会や特設のブログなどで前評判上々、
文楽関係者の力の入れようが痛々しいまででした。
邪念なしで直球で新作を観たかったので、
新聞時評1つだけ見ただけで、
出かけて行きました。

わたしは、
冒頭の舞台装置と、三味線・大小二つの琴の音色、そして胡弓
それだけですっかり魅了されてしまいました。
あの小さいほうの琴は和琴なのでしょうか、
シェイクスピア劇によく似合う
ハープシコードを和風にしたような、
三味線弾きの若手が奏でるあの音色、
それに導かれて、英太夫が語ります、

 人の命はやがて消ゆる束の間の灯
 誉れありといへども命果つれば益なし
 真の武勇は分別にあり
 戦せぬこそ分別なり

             (床本より)

よくできていると思います。
出だしのこの語りがすべてを物語っています、
それがわかるのは、
物語の結末、主人公ファルスの独白
 名誉など所詮浮世の泡沫
 名誉とはなんじゃ 言葉じゃ
 言葉は空気じゃ 空しいものじゃ

これぞシェイクスピア、名セリフ、

ただ如何せん、春宮=ハル王子=名君といわれたヘンリー5世、
これが日本版の人物に肉薄されてない、しにくいのはわかるが、
どうも彼の三行半、絶縁に説得力がない、
喜劇はたんに滑稽で終わらせないところに喜劇、そして悲喜劇がある、
それには、人物造型の深さが加わらないと…ね

舞台としてはとても面白かった、
上部の空間をフルに生かした居酒屋の場面、
終盤、下駄まで黒衣で覆って客席まで降りて花道を去っていくファルス
―これは杉本文楽での経験から生れた画期的な手法ですね―

 不破留寿之太夫ブログより

総じて、文楽一座をあげての意欲的な取り組みに拍手です。

    鶴澤清治=監修・作曲
    河合祥一郎=脚本
    石井みつる=美術
        尾上菊之丞=所作指導
    藤舎呂英=作調
於:国立小劇場 2014/9/22観劇

追記
小さいほうの琴を和琴では?と思いましたが、
高い音でしたので、雅楽で今に残る和琴は低くかったと思います。弦も多いですし…
どうも二弦琴、チターのような音で大きさもかなり小さいようですので、
こちらでしょうね。
また
胡弓とばかり思っていたものは、文楽固有の奏法?…
太棹を胡弓の弓で弾く大弓(おおきゅう)というものだそうです。



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