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したたかな明石の君―源氏物語第19帖薄雲

2013-07-05 12:35:10 | 源氏物語
源氏の子を宿し、
その子に明石一族の命運をかけ、上京してきた明石の君、
覚悟をしていたとはいえ、
姫君を源氏の愛妻紫の上の養女として手放したことは、
さすがにこたえたのでした。

その別れの悲しみは深く、周りの人々(乳母・女房)、源氏自身にもあはれ、と同情を引いたのでした。
二条院へ共に移り住むことも選択肢の中に入っていたのに、
それを拒んだ、明石の君はやはり強い女君、
その身の処し方には、したたかな計算があったのでしょうね。
いつも身の程をわきまえ、源氏との微妙な距離のとり方を保ち、出すぎることはしない、
明石の君の賢明さ、
物語は綴っています。
 やむごとなき所にてだにうちとけたまふことなく
  (二条院東院に住む、自分より身分の高い花散里でさえ訪れはまれなのに)
 ちかきほどに交じらひては目馴れて人あなづられる…
 かやうにふりはへ給へるこそ、たけき心地すれ

 (自分など側近くにお仕えしたなら目馴れ、かえって人から見下されるのが落ち)
 たまさかであっても、わざわざ遠方に出掛けてくださる源氏、
 その愛情を引き出したのは、 明石の君の知恵、
 これこそ世間的に体裁をつくろう処世術、
と言ってのける、このしたたかさ。

受領の娘が后がねの子を産み、さいわい人と呼ばれるようなことは、
当時、現実にはありえないこと、
そこで、明石の君の容姿・身のこなし・気高い精神、をほめちぎり
やんごとなき六条御息所に似せたり、
作者紫式部は強引なまでにさまざまな形容を与えます。
でも、言えばいうほど、やっぱり身分の差はどうしようもない、
と感じざるをえない、
そうして明石の君の物語は幕を閉じるのでした。





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