紫苑の部屋      

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6月大歌舞伎夜の部

2007-06-20 09:22:13 | 観劇
真山青果の元禄忠臣蔵 
初夏に忠臣蔵はどうかと思いましたが、
舞台は桜の季節、御浜御殿にて綱豊卿と義士がまみえた一エピソード。
真山青果ですので、人情噺ではありますが、
仮名手本とは違って、だれ憚ることなく史実らしく、
仇討ちの大義名分論とでもいうか、面白い論戦を見せてくれます。
後の6代将軍(正徳の治のあの賢人)綱豊を登場させ、新井白石に胸の内を語り、
よりリアルに描きます。
このころの綱豊は、綱吉とともに後継者と目されたほど英明高く、それがため、
世をはばかって、放蕩三昧を決め込んでいるらしい。
現在寵愛を受けている中臈ばかりでなく、
大年寄や御祐筆(秘書)というのもかつての御手つきなんでしょうね、
それはともかく、その寵愛をうけている中臈の芝雀の仮の兄が、染五郎の助右衛門、
仮の兄妹というのもちょっと訳ありの仲ですが、
とにかくその仲立ちで、吉良の面定のため綱豊邸にやってきます。

綱豊は大石の放蕩ぶりの真意を理解できる唯一の人物として、登場させているのですね。
敵を欺くための放蕩、という理解を一笑に付します。
浅野家再興と仇討ちの矛盾、そこに苦しんでいるのだという、
人間的な深い憂いを見抜くのですね。
ここが真山青果たる、見所でしょう。
ただ、それはどうなのでしょう、
史実ということであれば、大石のこの浅野大学のお家復興の真意は、いろいろに論じられていて、
御公儀の誤った裁量をただす、その大義名分であって、
そもそも片手落ちの処分からは、名誉回復はあり得ない、
それを十分承知の上、といういたって冷静な手段であった、とも言われているようです。

武士の面目云々は、ちょっと陳腐かなー、でもいいんです、
仁左さまのお殿様ぶりがよろしいですから…、
品があって相変わらず舞台で映えて、美しい。
あの萌葱色の小袖、お家の色じゃないかしら。
襲名のとき入手した銘入りの小物の色も萌葱色、羽織もそうだった。
この色あいをこなせるのは、仁左さまならでは。
そして、吉良に替わって能舞台を勤める、後ジテの姿の凛々しさ、
あの姿は「望月」という仇討ちのうたれる側の望月、らしいですが、
そんなきわどい演目をやらせるなんて、面白いですね。

黙阿弥の「盲長屋梅加賀鳶」
黙阿弥らしい、吉右衛門&幸四郎の科白の掛け合い、
それだけで黙阿弥調を楽しめます。
幸四郎の道玄、いいですね。
愛嬌がある極悪人という役柄ですが、
非情な極悪の面がやはりメインになっていなくてはいけない、
それでいてどこか品性がある、憎めない(愛嬌があるとはちょいと違う)
その矛盾したキャラクター、オンリーワン、幸四郎絶妙でした。
(話が突然変わりますが、コクーンの三人吉三、一つだけやっぱり納得できない点、
終幕美しいのですが、お嬢とお坊、反省しちゃっちゃーおしまいなのよ、黙阿弥作品で…!)

ご子息の染五郎は、幸四郎とは違う役柄で親を越えるのではないだろうかと思わせる、
その奮闘ぶりがなんといっても楽しみ、ファンです、すごーく。
踊りがよくって、この船弁慶も彼しかできない知盛を見せてくれました。
静と知盛どちらかに向くのはしかたがない、
玉三郎も菊之助もやはり静に重きがおかれてしまう、
でも、知盛で本領が発揮されるほうがいい、
染五郎の知盛は、哀しげだけど、平家の武将らしい気迫がある。
2メートルもあろうかと思われる跳躍、 そしてあの着地 
三響会で狂言の萬斎と競ったあの跳躍、操三番叟でも跳んでくれたあの技よ、
なのに、えっ!どうして拍手が起こらないの?!
ならば最後にわたくしめから…
パチ  パチパチ  (2007/6/17観劇)  






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