古いLPレコードが出てきた。
銀巴里は薄暗い地下の店だった。
最後のステージの最後の曲。
「最後の曲です。
映画、将軍たちの夜より、アデューアラニュイ、夜よさようなら…」
ぼそっと吐き出すように言い終わると、ちょうどいい間で、前奏が来る。
「ああ、この世の果ての
はるかな旅路を
ひとり暗い過去を抱き
歩くあなたは」
暗い人生でも光は差す、明日を信じてみよう、という歌詞なんだけど、
私は、光と影のあまりの落差に、
いくら愛があっても、人生がそこまで大逆転できるものだろうか、と
どちらかと言えば、アンハッピーエンドの曲だと感じた。
それでも、光の部分の歌い方のあまりの力強さに圧倒されて、くらくらした。
この歌を歌った時の金子由香利さんは、
今の私よりも若かったはずだ。
思えば、二十歳そこそこで、この歌を聴いて、
私は、自分の未来の何を予感できたというんだろう。
いつだって、どこだって、終わりの無い三次元のこの世は、
ここが中心だと思えば中心だし、
ここがこの世の果てだと思えば、そこは果てだ。