今日も明日も愛してる

私が見たものをあなたにも見せたい。月日が経って季節が変わっても、これは世界へのラブレター。

私の好きな小説 『薔薇の名前』ウンベル・トエーコ

2008年10月03日 | 観たり、聴いたり、読んだり
読み進むのが、わくわくして同時に困難な、珍しい本。
下手をすると、中世の異端審問と魔女裁判の描写ばかりに気をとられる。
本の帯にはこう書いてある。

「迷宮構造をもつ文書館を備えた、中世北イタリアの僧院で
 ヨハネの黙示録に従った連続殺人が。バスカヴィルのウィリアム修道士は
 事件の陰には一冊の書物があることを探り出したが…」

ああ、これだけでもう、先に進みたい気持ちで一杯にさせられる。



この迷宮で事件は起きる。



これは、神を信じていながらも
自らが仕えるのは神ではなく人類である、と知性で分かっている修道士の物語。
(だと、私は思っている)

ジャン・ジャック・アノーが映画化している。
原作のような壮大さはないけど、
根底の真理を曲解してはいないし、いたずらにサスペンスを強調してもいない。
ロン・パールマンの怪優ぶりがすごい。
主演のショーン・コネリーの演技は、人間味に溢れていて好きだ。
特にラストのシーン。
人間の知性を信じて、それを何とか護ろうとする、悲しい表情…。



日常生活に疲れて、浮世離れした物語に漬かりたいとき、
この本はぴったりだ。
しかし、さらに非常に疲れるんですが。
コメント