読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

佐々木譲著「警官の紋章」

2009-04-21 | 佐々木譲
北海道警察シリーズ「笑う警官」(うたう警官改題)「警察庁から来た男」に続く第3弾。
洞爺湖サミット警備を舞台にした臨場感一杯に描かれた警察小説。
裏金問題の傷の影響を引きずりながら向えた北海道警察は、洞爺湖サミットのための特別警備結団式を一週間後に控えていたそのさなか、勤務中の若い警官が拳銃を所持したまま失踪。津久井卓巡査部長は、その警官の追跡を命じられた。
一方、過去の覚醒剤密輸入おとり捜査に疑惑を抱き、一人捜査を続ける佐伯宏一。
そして結団式に出席する大臣の担当SPとなった小島百合。
裏金問題、覚醒剤取引と腐敗した警察組織を再生したい主人公達と、旧態依然の警察組織の暗い闇の部分をベースにして展開する物語は、前作までの作品と同じでとにかく面白い。道警から見ると我が県警は「ミャーミャー県警」など笑ってしまった。

2008年12月 角川春樹事務所刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐々木 譲著「駿女」

2009-01-21 | 佐々木譲
義経の生き残り伝説等藤原三代滅亡後の奥州、狡猾な権力者頼朝のその後等々。
奥州糠部の地でのびのびと育った馬と弓の巧みな十六歳の少女相馬由衣と、
従弟の八郎丸(実は義経の落胤、後の源八郎義兼)の二人が歴史の渦の中で
翻弄されていく生き様を描いた時代小説。
由衣は従弟の八郎丸が元服するのに付き添い、初めて平泉にやって来た。
しかし平泉は衣川館で義経が誅殺されたという報に震撼していた。
由衣らが人目を避けて取って返した村も、義経を襲った藤原泰衡勢に焼き討ちに
あい、身内は無惨にも息絶えていた。
歴史のロマンの想像力をかき立てられる作品です。
2006年 中央公論新社刊
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐々木 譲著「うたう警官」

2008-06-02 | 佐々木譲
うたう警官というのは、「うたう」とは、いわゆる内部告発の事であり、
警察用語で言う「チクる」「たれこむ」ということだそうですけっして
歌がうまい警察官というわけではなく、警察の裏金づくりや不祥事を
内部告発する警察官のことさします。
この小説は、北海道警察の不正経理問題所謂裏金づくり(報償費の不正流用)を
告発した元釧路方面本部長の勇気ある行動を下敷きにされているようです。
うたう警察官なんか、しゃべる前に別の口実をつくって殺すか爪弾きにして
自殺させろ。
そんな警察組織の体質が鋭く告発されています。
スケープゴートにされかかった1人の刑事を救うために、仲間の刑事たちが
次々に立ちあがり、行動していく様子が詳細に捜査現場の雰囲気が臨場感
たっぷりに語られます。
一人の警官が「私はうたわない」という遺書を残して拳銃自殺する、そして
札幌市内のマンションで美人の婦人警官の死体が発見される。
やがて現職警官が犯人として手配され射殺命令まで出る。その背景には、
道議会の百条委員会で現職警官が道警の裏金問題を証言するのを阻止するため、
その現職警官を殺人犯に仕立てたてるという道警上層部の計画があることが明らかになってきます。
ノンフィクションと思えない一気に読ませるサスペンス・スリル・スピード感
あふれる推理小説。警察小説です。
2004年 角川春樹事務所刊
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐々木 譲 著「屈折率」  

2008-05-31 | 佐々木譲
ヤリ手の元商社マン・安積啓二郎は、自分のオフィスも閉め外車も手放した
傷心の彼の行き先は年々売上を減らし、地元の信用金庫からリストラ計画の
提出を求められる零細なガラス工場、経営状態の思わしくない実家の町工場の
社長だった。
はじめは一年以内の整理、工場売却を目論む彼だったが、工場の熱い釜から
引き上げられたガラス種を加工する職人の技術は、世界に通用すると確信するようになる。
やがてガラス工芸作家・野見山透子との恋に落ち不倫、次第にガラスの世界に
魅せられていく。工場再建のために彼が次々と打つ手とは・・・・。
モノ作りに自分の人生の再起を懸けた男の勇姿を描く長編企業小説です。
1999年 講談社 刊 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐々木 譲「警官の血」 上・下巻

2008-04-30 | 佐々木譲
祖父・父・子と三代続く警官人生が書かれている警察小説です。
祖父安城清二は、復員してきての仕事に警官を選び昭和23年、上野署の巡査となりやがて天王寺駐在所勤務に。
管内で発生した男娼殺害事件と国鉄職員殺害事件に疑念を抱いた清二は、跨線橋から不審な転落死を遂げる。
父と同じ道を志した長男も民雄は、警察学校卒業後北大に留学して潜入捜査官となりその後祖父と同じ駐在所に赴任後凶弾に倒れ殉職。父と祖父をめぐるもやもやの謎は、本庁遊軍刑事となった三代目孫の代の和也にゆだねられる。時代背景の歴史を思い出しながら読みました戦後闇市からレッドパージ、赤軍派事件・学生運動、裏金問題、長久手SIT殉職事件など平成19年の現代まで、時代に生きた人々の息づかいと時代のうねりを見事に甦らせて描かれた警察小説の大河小説といえる作品です。祖父と父の駐在所勤めの、警邏警官としてあるいは、潜入捜査官として生涯から、警官として生き抜く術を受け継いだ3代目和也は、 法権力の執行者たる警官として、完璧な市民であり、品行方正・清廉潔白であるべき建前と、その建前が通用しない現実。 その建前と現実に、折り合いをつけて生きていくことの難しさに悩みながら「警官の原則。警官は現場で、覚え学習する。より大きな犯罪と微罪と、被害者の出た犯罪と被害者のない違法行為と。何をどう秤にかけて警官はどう対処すべきなのか。現場の警官は、日々そのことに直面し、瞬時に判断しているのです。」(本分よリ) 個人と組織の葛藤、そして祖父、父親死亡の謎を解き明かし、ラストの爽快な結末、上下卷一気読みして楽しく大満足の 充実感が味わえる作品でした。
2007年9月刊 新潮社 上・下¥ 3,360
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐々木譲著「制服捜査」

2007-11-20 | 佐々木譲
北海道釧路方面、広尾警察署志茂別町駐在所の川久保巡査部長が
主人公の本物の警察小説。警察官人生二十五年。彼は道内の不祥事
をめぐる玉突き人事のあおりで、強行犯係の捜査員から一転、
札幌に家族を残しての単身赴任の駐在勤務となったのだ。
「犯罪発生率、管内最低」の健全な町で、彼が目撃した荒廃の兆し、
些細な出来事の裏事情。嗅ぎつけた“過去の腐臭”とは…。
捜査の第一線に加われない駐在警官の刑事魂が、
排他的な町の犯罪を暴いていく、少年失踪を描いた
「逸脱」動物虐待の「遺恨」児童虐待の「割れガラス」
連続放火を描いた「感知器」幼児誘拐を扱った「仮装祭」
の5編の連作がどれもがリアル感ある筆使いで面白い。

2006年 新潮社 刊 ☆☆ ☆☆☆ ☆ ☆

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐々木譲 著「警察庁から来た男 」

2007-10-03 | 佐々木譲
著者の前書「うたう警官」の続編か?
北海道警察本部に警察庁から特別監察が入った。
やってきた監察官は警察庁のキャリアである
藤川警視正と種田主査。
藤川は、半年前、道警の裏金問題の為に百条委員会で
証言した津久井刑事を彼のもとに呼び出し、
監察の協力を要請する... 。
一方、今は札幌大通署に勤務する佐伯刑事は、署から程近い
ホテルでの部屋荒らしの件で捜査に向かっていた。
被害にあった男は、昨年末、すすき野の風俗営業店での
「会社員転落死事故」で死んだ男の父親だった。
緊迫感・リアル感共読んでいて大満足の警察小説。
道警の裏金問題がらみの本当に有りそうなお話です。

2007年 角川春樹事務所 刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする