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その古道具は、客の人生を支配する。時間も空間も超えて、突如現れる古道具屋。訪れた客に商品を選ぶ権利はないのだ。やがて買い主は、店主が選んだ品物に、人生を支配されていく・・・。その店は、人生の岐路に立った時に現れる。さかさまの絵本、底のないポケットがついたエプロン、持てないバケツ、金色の豚・・・。古道具屋は、役に立たない物ばかりを、時間も空間も超えて客に売りつけ、買った人を翻弄する。不可思議な店主の望みとは何なのか。未来は拓かれるのか? やがて買い主達がその店に集結した時、裁きは下され、約束が産まれた。
SF・ミステリー風ファンタジー風妖艶な雰囲気のなかオムニバス形式で展開される。著者が東日本大震災の年、平成23年に「さかさまの物語」を書き始めて第6話が完結したのは平成27年9月。短編が連作になり単行本化にして完結するために第6話の「最後の選択」を書いたような感じで読んでいて不安な気持ちに一時はどう決着つけるのかと気をもんだ作品だった。最後はオカルト的な落ちで個人的には不満だった。「この世界には最初から、生まれてきて良かった存在も、生まれて来なければ良かった存在もないんだ・・・生まれてきたことそれ自体が大事なんだ、って。その人の人生が何かの役に立っていたとか、その人がどの程度社会に貢献していたかなんてこととは無関係なの・・・生まれて来たら、あとはひたすら生きるしかない。人生はそれですべてなんだ。」「他人にどう評価されるかじゃなくて、自分が生きているっていう実感を求める。それでいい」(P156)
2016年12月新潮社刊
赤字ローカル線の終点・根古万知。駅前は、わずか八店舗ほどが細々と営業するシャッター商店街である。数年前、猫の町「ねこまち」としてブームになりかけたこともあったが、それも一時のこと、以来、ジリ貧状態だ。離婚を機に、そんな町に戻ったラーメン店の娘・愛美は、緑色の大きな目と灰色の毛が愛らしい拾い猫を飼うことになった。ノンちゃんと名付けたその猫が、ひょんなことから一日猫駅長を務めると駅は再ブレイク、商店街にも観光客が訪れる。愛美は久しぶりに賑わう光景を見て、今度こそ、元気いっぱいだった頃の根古万知を取り戻したいと動き出すが・・・。
受け身の姿勢ではなく、自分にも何かやれることはあるのじゃないかなと思わせる、元気をもらえる猫が引き起こした、ほんの小さな奇跡の現代のおとぎ話の物語でした。「あなたは愛するものがたくさんあるから・・・人に対して誠実であろうとしているんだ。だから窮屈だったり、息苦しかったりする。でもその窮屈さ、息苦しさこそが、あなたがひとりぼっちでではない、という証なんなんですよ。」(P358)
2017年11月祥伝社刊
二度目の夫を亡くした作家の草壁ユナは失意の日々を送っていたが、元担当編集者の頼みでブルーライト探偵事務所所長を引き受けることに。そんな折、旧友の中村秋子から「ユナ、助けて」とのみ書かれた謎のメッセージメールが届く。そのころ青い電飾が遺体のそばに撒かれる連続殺人事件が東京の街を騒がせいたのだが・・・撲殺されたOL、刺殺された出版社社員、絞殺された中学生どの事件も、互いに接点のない被害者たちだったが、そばに置かれていたクリスマスの青い電飾。これは無差別殺人か。 愉快犯の犯行か。 それとも秘められた動機があるのかと捜査を続ける警察。一方心配になったユナが秋子の家を訪ねると、彼女を拉致した犯人からメッセージが。また一方、探偵社で依頼を受けた有名人の婚約者の身辺調査が連続殺人と奇妙な繋がりを見せてくる。
いくつもの事件が複雑な絡みをみせる中、すべての推理が重なり合う時、ユナの前に驚愕の真実が現れることに。・・・・登場人物が多いので巻頭のリストを見ながら読むのに、やや苦労した。複雑しぎて結末も消化不良気味。伏線伏線がスッキリしないまま収束感が否めず動機が複雑で弱い印象のみすてりーだっるた。
2016年10月早川書房刊
ノンキャリアだが将来を有望視されていたがあるミスの為心に傷を負った警視庁捜査一課勤務の刑事・黒田岳彦は、ある事件の捜査でI県警上野山署に派遣される。
そこで夫を殉職で亡くしている未亡人捜査課係長・小倉日菜子と出会う。
首都近郊のベッドタウンで生まれ育っていたが実質的な故郷を持たない岳彦と過疎の村で働く日菜子も、東京に対して複雑な思いを抱いていた。
捜査が進むなか岳彦と日菜子は少しずつ心を通わせてゆくが、あらたに起きるさまざまな事件が、ふたりの距離を微妙に変えていくのだが・・・。
警察ミステリー小説でもあり二人の遠距離恋愛物語でもある。
互いに心に荷物を背負った二人の悩み、苦しみ、葛藤する様子の心情描写は丁寧で時にもどかしく感じるが明るい未来を予想させて楽しめた。
2010年5月 文藝春秋刊
野球の才能に恵まれ、中学生で「怪物」と呼ばれた北澤宏太。
性格はとてもいい人ながら、不器用。家庭の事情で一度はあきらめた夢を追い、四国独立リーグから育成ドラフト選手にそして認められてプロ野球選手になる。
その彼を取り巻く女たち。高校の同級生で故郷の元恋人、追っかけを10年やっているファン、妻となった女子アナ、愛人等。女性の視点からプロ野球の裏側を描いた切なさあふれる感動物語。 怪我をして引退をした野球以後の人生も語られている。
夢を追った男にも、男に魅せられた女にも、人生は続いていく。
ここに登場する女は皆したたかだなぁ~。
2010年9月講談社刊
その部屋に住んでいた部屋の借主である高見健児は絞殺死体で発見されるが、妻の風子は姿を消したまま行方不明。
現場のエンドレステープに録音されたシャンソンは誰が、何の為に?
「もう森へなんか行かない」という題名のフランス語の歌に込められた犯人のメッセージは何か?やがて第二の殺人が・・・。
所轄刑事の遠野要は行方をくらましたその女・風子を追い始める。
犯人は果たして彼女なのか。犯した罪を償うために死に場所を探しているのか。
運命に翻弄された風子の薄幸な人生をたどるうちに、5年ほど前、遠山が警察に入る前に偶然入ったファッションヘルスで、風子は働いていたのです。
忘れ得ぬ出来事の相手が彼女であることに気づき、烈しく彼女を求める。
追う者と追われる者。逃避行に行き着く先は再生か破滅か。ひとはひとりで生きるのが怖いから愛しあい、ひとりで死ぬのが怖いから愛しあうのか。
夫が殺された日、何があったのか。愛とは何か、人間性とは何か?
時間と距離を超え、謎が繋がっていくラストの結末までそこに至るまでの過程がなんとも切ない人間性の深淵を描いた感動作。
2004年2月 集英社刊 集英社文庫
女将の作るちょっぴり懐かしい味に誘われて、客たちが夜な夜な集まってくる。
少しさびしそうな美人女将の手料理をもとめて今宵もこころに疵を負った客が訪れる。
ばんざい屋シリーズ「ふたたびの虹」 の続編。前作は2005年NHK「七色のおばんざい」としてTVドラマ化されている。
丸の内の一等地にあるこの古いビルは建て替えられることになっていた。
ばんざい屋の女将・吉永は、立ち退くか、高額なテナント料を払い新しくなるビルにはいるか決断しかねていた。
そんななか、常連客・進藤が女性の客を連れてきた。一見、洗練されたキャリアウーマン風、だが、疲れていた。
その女性・川上有美が「竜の涙」という奇妙な言葉を発した。
死んだ祖母が、これさえ飲めば、医者も薬もいらなかったという。
客の誰もが不思議がるなかで、女将が推理し有美に差出したコップに入れた水の「竜の涙」とは? そして、有美が心に秘めた想いとは・・・表題作他5編の連作短編。
2001年の前作からかなりたつがあの店は今も在った。
女将の恋人清水との中も続いていて女将の子供のことや故郷丹波の話しも触れている常連客には懐かしいばんざい屋です。
女将の吉永の料理の薀蓄も推理も相変わらず冴えています。
丸の内の店は閉店するようですが新たな場所での再出発の続編も期待出来そうです。
2010年2月祥伝社刊
郊外のニュータウンに建てられた団地。かつては夢の町、今では世界の端っこみたいな、この団地。
かつては誰もが憧れた、けれど今や、すっかり古びてしまった東京の外れにある巨大団地。物語はそこに暮らす人々の「現在」と「過去」を、5人の視点で描いていく。
誰かと関わり、繋がることの心強さが、なんかちょっとイイ感じの連作小説集。
父親のもとに身を寄せた旧友を頼り、借金取りから逃れるため団地にやって来た鈴木絵理。
絵里の友人で、キャバクラに勤めている、川西朱美。
十年前に夫を亡くし、息子一家とも疎遠になり、大量の惣菜を作っては朱美や団地の住人たちに配り歩いている塚田里子。
三度結婚し、二度夫と死に別れ、現在はひとり暮らしをしている宮前静子。
団地内に居ついた野良猫の写真ばかり撮っている米山克也。
そして団地が憧れだった頃から何十年も昔から、ここに住み続けている仲島。
他人に干渉しすぎてはいけない、期待しすぎてもいけない。
必要以上に踏み込まないように、心を許しすぎないように、気をつけるのは近所付き合いの基本中の基本。
でも、時にはその一線を踏み越えてしまいたくなる寂しさがこみ上げてくることがある時もある。
借金だらけのキャバ嬢も、息子に見捨てられた老女も、猫を追うカメラマンも、皆どこかに帰りたい場所があるが、もう戻れないと、今は分かってはいるけど。
でも、ここだって案外、あったかい。血の繋がらない「家族」があってもいいのでは、
格差社会、高齢化社会、おひとり様の老後の共に生きる意味を問う。
安らぎを感じる小説です。
「ぼんやりとした不安の中に生きていく・・・心の底から楽しめる気ままではないことを・・・心の底から楽しいと思うためには、安心していなければ駄目なのだ。
安心せずに何をしていても、どこで暮らして暮らしていても、本当の楽しさを得ることはできない。」(222P)
2009年11月新潮社刊
東日本連合会春日組大幹部の韮崎誠一が殺されて、容疑をかけられたのは美しい男妾あがりの企業舎弟
・・・それが十年ぶりに警視庁捜査一課・麻生龍太郎の前に現れた山内練の姿だった。
あの気弱なインテリ青年はどこに消えて、殺人事件を追う麻生は、幾つもの過去に追いつめられ、暗い闇へと堕ちていく。
人物描写が心理描写が素晴らしい。事件を通して人間の心理を浮かび上がらせ人との出会いの機微や哀しさ、残酷さそして愛しさ、人生の深遠を描いています。
これは恋愛小説なのか? ベストセラー「RIKO」シリーズから生まれた男の魂の物語。
山内はこの他にも「所轄刑事 麻生竜太郎」、花咲慎一郎シリーズの「フォーディアライフ」、「フォーユアプレジャー」、「シーセッドヒーセッド」、
「私立探偵 麻生竜太郎」「アソングフォーユー」などに登場して柴田よしき作品には特別なキャラで著者の思い入れの強く深い人物なのでしょう。
印象深く心に残る作品です。
2002年10月角川書店刊
主人公は京都の人権派弁護士の事務所から、「武者修行してこい」と東京の大手法律事務所に移籍してきた新米弁護士・成瀬歌義。著者の別編「桜さがし」の推理作家浅間寺龍之介や犬のサスケ、恋人のまり恵などが出てくるから続編か?
もっとも読んでいなくても独立した物としても楽しめますが。
法人関係や有名な事件も多く扱う大手事務所だけれど、新人ということで離婚問題とか酔っ払いの傷害罪疑惑とか、イジメ問題とか小さな事件に接する歌義だったが、今までとは勝手の違うことばかり。
熱意は空回りし、依頼人には嫌われ、あげくには上司の女弁護士清洲から関西弁がよくない、とまで言われてしまう。
どんな弁護士を目指すのかさまざまな依頼者とのやりとりを通して成長していく青春ものであり、事件のミステリー性もあって彼の奮闘と日々の成長が爽やかでまぶしい青春ミステリー連作短編。
アリバイを立証する為子供が見た流れ星を探す表題作「流星さがし」他「泥んこ泥んこ」
「離婚詐欺師」「わたしの愛したスッパイ」「白い彼岸花の5つ」。
2009年8月光文社刊。
「月神=Diana」は、ローマ神話における、女性と狩猟の守り女神さま。
若くて独身、それも美男子の刑事ばかりが狙われ、手足や性器を切り取られて木に吊るされるという、
残虐な殺人事件が連続して発生する。
犯人を追う緑子は、やがてある男が関わる12年前の過去の事件に向き合うことになる。
緑子は刑事として、母親として、そして女として、自分が何を求めているのかを知るために、
最後の仕事のつもりで事件に肉薄していく。
その事件は安藤や高須、そして麻生らが関わっていた事件で、警察は誤認逮捕をしていた。
真犯人は見つかるものの、その事件の陰である少女の人生が歪まされていた。
美しいゲイのヤクザで、サディストっぽい春日組若頭山内練がある意味カッコイイ。
警察時代から捜査能力に優れ、同僚からも尊敬されていた元刑事で私立探偵の麻生龍太郎との
関係や複雑に絡みパラフルなRIKOの活躍が楽しめました。
2000年5月 角川書店刊 角川文庫
一児の母となり、下町の所轄署に勤務する緑子の前に現れた親友の捜索を頼む男の体と女の心を持つ美女。
彼女は失踪した親友の捜索を緑子に依頼する。
そんな時、緑子は四年前に起きた未解決の乳児誘拐事件の話を聞く。
やがて、所轄の廃工場から主婦の惨殺死体が発見される。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。
互いに関連が見あたらない事件。だが、そこには恐るべき一つの真実が・・・。
元刑事の私立探偵と、悪徳弁護士と、悪魔のように頭のよいヤクザ・・・
二歳の男児を育てながら、複雑な事件に取り組む女刑事・緑子が、生命の危機にさらされながら迫った驚愕の真相とは。
そして緑子は、母性や愛に対する人々の幻想の向こう側にぽっかりと開いた暗黒の淵を覗き込むこととなる。
「母親の悲劇」ジェンダーと母性の神話に鋭く切り込む新警察小説。
1998年5月 角川書店刊