読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

佐々木譲著「代官山コールドケース」

2016-09-06 | 佐々木譲
特命捜査対策室の水戸部をはじめとした刑事たちが挑んでいく警察小説シリーズの第二弾。
コールドケースとは迷宮事件のこと。
1995年(平成7年)オウム事件で忙殺されていたころ代官山で起きたカフェ店員殺人事件が“冤罪”の可能性出てきた。
2012年川崎で起きた女性殺人事件の現場に遺されたDNAが18年前に代官山で起きた事件で採取されたものと一致。
当時被疑者となったカメラマンは変死。
「17年前の事件の真犯人を逃して、二度目の犯行を許してしまった、となると、警視庁の面目は丸つぶれだ」。
かくして警視庁・特命捜査対策室のエース・水戸部に密命が下された。
「神奈川県警に先んじて、事件の真犯人を確保せよ!」。公訴時効撤廃を受け、再捜査の対象となった難事件だ。
あの代官山にまだ緑深き同潤会アパートがあったころ、一人の少女の夢と希望を踏みにじった犯人の痕跡や
殺された少女が徐々に浮かび上がっていく展開はさすが。
刑事たちの息遣いが胸に響く展開に濃密な警察小説を堪能できました。
2013年8月文藝春秋刊
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佐々木譲著「砂の街路図」

2015-12-31 | 佐々木譲
誰にも「知られたくない、でも忘れられない過去がある」家族のミステリー。
北海道の架空の町を舞台に、失踪した父の死の謎を追う物語。「運河町ホテル」「給水塔通り」など、
地名や建物などに象徴された謎を解きながら、「父の過去」に迫っていきます。
なぜ父は幼い自分を捨てて失踪し、死んでしまったのか?母の四十九日を終えた教師の岩崎俊也は、
両親が青春時代を過ごした北海道の運河町へと旅立つ。
20年前、父はこの運河町で溺死してしまった。遺品となった1枚の古いモノクロ写真には、家族に決して見せたことのない笑顔が写っていた。
事故の直前まで飲んでいた硝子町酒房の店主によれば、同じ法科大学漕艇部員だった彼の妻の密葬に参加するために滞在していたという。
さらに父の後輩からは、昭和44年に漕艇部内で起きたある事件を機に、陽気だった父の人柄が激変してしまったことを知る。
父は事件に関係していたのだろうか? 家族にさえ隠し続けていた苦悩とは?
「知らないほうがいいこともある」のか死の真相に近づくにつれ、胸の内に膨らむ想い。
果たして、父の過去を暴く権利が、ぼくにあるのだろうか
幽霊船と絡めた嘘よりも哀しい沈黙の真相が意外。
巻頭の地図を何度も見直したり照らし合わせたりとミステリーを堪能しました。2015年読み納め。
2015年8月 小学館刊
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佐々木譲著「地層捜査」

2015-05-29 | 佐々木譲
時効撤廃を受けて設立された「特命捜査対策室」。
謹慎明けでたった一人の捜査員・水戸部は退職刑事を加納相棒に公訴時効の廃止を受けて再捜査となった15年前の老女殺人事件を追うことに。
当時の捜査本部はバブル期の土地トラブルに目を向け、加納元刑事もその線を辿ろうとするが、水戸部は、
かつての花街・新宿区荒木町の芸妓老女の過去に目を向ける。
時間経過とともに思い出される過去、別角度から覗いてみれば、違う景色が見えてくるというところから真相に迫るのが面白い。
派手なドンパチや出来事はないが深層を掘り起こし地道な努力がいい。
2012年2月文藝春秋刊
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佐々木譲著「獅子の城塞」

2014-12-29 | 佐々木譲
歴史小説。織田信長が安土城を完成させたころ、信長に選ばれた穴太衆の石積み職人として、直々の命令で築城術を
学んで、故国に帰ってくること命じられた男。
その男は、天正遣欧使節団とともにヨーロッパに派遣された、穴太衆の石積職人の頭の次男坊戸波次郎左は22歳だった。
長崎を出航して二年半。やっとリスボンという異国の地にたどり着く。やがて言葉の壁を実力で乗り越え、
弟子入りし普請現場で、たちまち名を上げて貪欲に西洋の築城術を身につけていく。
しかし同僚の嫉妬の目、密告、宗教異端者としての逃避行なども経験する。
結婚もし2男1女の子供も授かるが、戦乱の日々は続き、帰国を夢見つつも果たせず、八十年戦争の真っ只中のイスパーニャ軍の暴虐に
反旗を翻すネーデルラント共和国軍に力を貸して、鉄壁の城塞を築き上げるため心血を注ぐが遂に帰国を果たせなかった
男の波乱の生涯を描いた長編作。
実在した人物なのか著者の想像上の人物なのか如何にもありそうな展開に想像の翼広げてリアル感たっぷりの一代記で感動物語でした。
2013年10月新潮社刊
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佐々木譲著「憂いなき街」

2014-10-19 | 佐々木譲
道警シリーズの続編。サッポロ・シティ・ジャズで賑わい始めた札幌。
市内で起きた宝石商の強盗事件を追っていた機動捜査隊の津久井卓は、犯人を確保する際、
たまたま演奏中だったピアニストと目が合います。
当番明けの夜に立ち寄ったバー「ブラックバード」でそのピアニストの安西奈津美と再会。
久しぶりにジャズピタニストとして本番を前にした彼女とジャズの話をしながら急速に津久井と奈津美は親しくなります。
ところが、警察官である津久井は、些細なことで彼女の過去を察知してしまい、別れを決意します。
一方で、中島公園近くの池で女性の死体が見つかり、捜査を進める津久井の中で、
奈津美による犯行ではないかという疑惑が深まっていく。
津久井は刑事課の佐伯宏一警部補らに助けを求め、裏捜査が始めるのだが・・・。
新宮や小島という御馴染みの面々との絡みや、津久井の「純情な愛」が切ない悲しい別れなど
ミステリーの要素と悲恋が加味されて面白かった。
芸能界や音楽界の薬物汚染の問題が取り上げられていて興味がわいた。
」2014年4月角川春樹事務所刊
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佐々木譲著「人 質」

2013-12-10 | 佐々木譲
北海道警シリーズ第6作目。強姦殺人の冤罪、そこに端を発した立てこもり事件。「謝ってほしいんです。あのときの県警本部長に。ぼくが要求するのはそれだけです」 冤罪で4年間も刑務所生活を送った男と
詐欺罪で同じ務所に服役していた男が人質立てこもり事件を起す。5月下旬のその日は、生活安全課所属の小島百合巡査部長は、以前ストーカー犯罪から守った村瀬香里との約束で、ピアノのミニ・コンサートへ行くことになっていた。香里よりひと足先に、会場である札幌市街地にあるワイン・バーに着いた小島は、そこでこの事件に遭遇する。そのコンサートの主役は、来見田牧子、冤罪が起きた当時の県警本部長の娘だったのだ。一方、同日の朝に起きた自動車窃盗事件を追っていた佐伯宏一警部補は、香里から連絡を受け、事件現場へ向かったのだが・・・・・・。 歯切れのいい語り口で素早い展開何時ものメンバーが活躍する。単純な立てこもり人質事件と思わせて意外なヒネリを効かせた結末で面白かったが犯行手口そのものは雑さが気になった。まだ続きそう続編が楽しみです。
2012年12月角川春樹事務所刊
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佐々木譲著「回廊封鎖」

2013-01-18 | 佐々木譲
消費者金融の高利率で自己破産させられた人たちの復讐劇。3つの殺人事件には共通点があった。
被害者はみな大手消費者金融の元社員であること、処刑のような殺害方法だったこと。
久保田刑事は捜査する中で、意外な犯人像が浮かんできたことに注目する。サラ金の厳しい取立てに家族も仕事も失い、生活も失った男たちだ。その中の一人重原は多重債務から自己破産と転落した、最近やっと最低限の生活をするための仕事から、先の希望に続くビル清掃会社の経営者の仕事へと、立ち直りへの道を歩み始めていたのだが。
そんな時、自分を痛めつけたサラ金「紅鶴」の元専務が香港からやって来ることを知り、これまでの自分の生活、憎しみや悲しみの総清算をする覚悟を決める。
六本木のコンプレックスビルで開催される国際映画祭。アジアン・スターが招待される裏で、香港で実業家として成功するあの男の来日だ。その男を標的に、「ある計画」がひそやかに、熱く動き出すのだが・・・。
サラ金大手「○富士」のオーナー一族をモデルにしたのだと容易に想像できるのだが、法で裁くことが出来ないないので個人的に復讐する行為に違和感が否めない。犯人側に重点を置いたストーリー展開に刑事側の捜査が絡んで面白くは出来ているが著者らしくない思想性のない小説になっていてガッカリした。
2012年8月 集英社刊
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佐々木譲著「婢伝五稜郭」

2012-07-01 | 佐々木譲
「勝者が歴史をつくり、敗者が物語をつくる。彼らの物語は、実に魅力的で心を打つエピソードが数多くある。」(著者談)
明治維新が薩摩長州の視点でしか書かれていないのに疑問があったという著者が、「官軍」による箱館病院分院での虐殺(史実)を官製の歴史観をぬりかえるべく、登場人物たちひとりひとりの夢を描いた、熱くすがすがしいそして、豊かな物語に書き上げた。『五稜郭残党伝』『北辰群盗録』に続く3部作。
主人公は、医師・高松凌雲のもとで看護婦として働いていた朝倉志乃という若い女性。明治2年(1869)、箱館戦争の最終局面、志乃の働く箱館病院分院では傷病兵にすら官軍によって凄惨な殺戮が行なわれていた。
志乃はこころを寄せていた青年医師・井上青雲が眼前で惨殺されを見て「私の戦」を決意する。
宿敵を衝撃的な方法で殺し、ついに追われる身となる。
女であり敗者である志乃がみた、すがすがしく豊かな箱館戦争後日談小説
榎本武揚は、箱館統治時、プロシア人R・ガルトネルに土地一千町歩の貸与を認め、西洋式農場の建設にあたらせました。
官製史観では「国土を外国人に切り売りした」と否定的に評される事実ですが、これが日本の農業近代化の最初の一歩でした。この物語では、このガルトネル農場も主要な舞台となり、戦う女へと変身していく志乃に医学以外にも、射撃、馬術、西洋式料理を身に着けさせ戦士になっていく様子が描かれています。
やがて追われる身となった志乃が出会うのが榎本軍の残党、三枝弁次郎。
共和国建設の夢を捨てきれない三枝と居場所を失った志乃は、迫る官軍と激しく戦いながら、北海道の奥へ奥へと逃げ続ける。
途中、迫害されるアイヌの人たちの厳しい現状を知る場面など、歴史も学べるサスペンスに満ちた面白い小説でした。

2011年1月朝日新聞出版刊
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佐々木譲著「カウントダウン」

2012-01-31 | 佐々木譲
多選市長の放漫運営のもとで財政破綻に瀕した架空都市、北海道幌岡市が舞台。
夕張市に隣接するこの市の五期目のワンマン市長大田原は、大手炭坑閉山後、リゾート開発に過剰投資し市の財政を悪化させたが、巧みな借入金処理操作で市の債務を隠し続けたのだが、道庁の実態調査が入り財政破綻が明らかになる。
債務106億・再建団体申請が決まっても、自らの責任を棚に上げて六選を目指す構えだった。司法書士で最年少市議、森下直樹とその仲間・恩師らは、打倒大田原を期し、智恵と情熱を結集して立ち上がったのだが・・・・。
財政破綻の街を救うため市長選に挑戦する市民良識派の奮闘と友情を熱く描いています。
夕張市の隣ということで夕張市の破綻の実情をベースに語られている政治小説です。多少掘り下げが浅く端折った感がありますが選挙戦の裏事情など面白く読めました。
今後の市の再生のほうが大変なのだがその後の展開を書いて欲しかった。
革新政党の共産党の書き方が泡沫扱いで実情に即して居らず著者の政治感覚に疑問符が・・・。
2010年9月 毎日新聞社 刊


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佐々木譲著「密売人」

2011-09-17 | 佐々木譲
「笑う警官」の北海道警察シリーズ第5作。道警は、過去(2003年)裏金問題で、道内全域にまたがる不祥事として処分者も出したりとその影響と後遺症はまだ続いていた。
10月下旬の北海道で、ほぼ同時期に3つの死体が発見された。函館の病院にて為田俊平の転落死体、釧路の漁港にて飯森周の水死体、小樽の湖畔にて赤松淳一の焼死体。それぞれの事件は個々に捜査が行われ、津久井卓巡査は小樽の事件を追っていた。
一方、札幌大通署生活安全課所属の小島百合巡査は、登校途中の女子児童が連れ去られた一件に、不穏な胸騒ぎを感じていた。
3カ所で起こった殺人と小島の話から、次に自分の協力者(エス)が殺されると直感した佐伯宏一警部補は、一人、裏捜査を始める。
佐伯警部補・津久井・小島をはじめとするおなじみのレギュラー陣が生き生きと活躍し、真相に迫ってゆく。
今回は警察の協力者だった人間が続けて不審な死を遂げているとの関連性に気がついた彼らが、これから襲われると思われる家族を必死で探し出して守るという展開である。
そしてなぜ協力者の名前が漏れたのか、警察の内部情報を流したのは誰か?
今回の謎は警察の組織ぐるみの隠蔽体質を告発したことで裏切り者として干されている刑事と、彼の身を守り真実を暴いたため不遇に置かれた刑事たちが、警察を愛するが故に、もがきながら事件と取り組んでいく姿が感動的に描かれていて面白かった。
内部情報を漏らした奴を懲らしめるくだりの展開も痛快だった。



2011年8月角川春樹事務所刊
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佐々木譲著「北帰行」 

2010-02-22 | 佐々木譲
直木賞、受賞後第1作!ロシア圏専門の旅行代理店を個人営む関口卓也は、美貌の女性タチアナ・クリヤカワ(ターニャ)をアテンドすることになる。
だがターニャが日本に来た目的は、自分の妹を殺したヤクザへの報復だった。
事件に巻き込まれた卓也はターニャと逃亡をはかるが、組長を殺された舎弟・藤倉奈津夫の執拗な追い込みをかけられるはめに。
警視庁組織犯罪対策部の寒河江は、事件の捜査を担当することになったが、全く見えない事件の本質に戸惑いながら
やがて日本で暗躍するロシアン・マフィアの動向に注目していく。
東京、新潟、そして稚内。1000km以上に及ぶ極限の逃亡劇の結末はどうなるか?
警察小説の著者が今回は会心の長編クライム・サスペンスを書いた。
最初の殺人、六本木界隈で組長狙撃され二人、報復の撃ち合いで三人が、
手違いから肉親が一人、敵討ちでまた一人、そしてまた・・・ちょっと短期間に人が殺されすぎ、日本でこれだけ殺されたら大騒ぎのはずだが・・・、
まぁそれなりにストーリーには引き込まれるのだが、2度も同じ過ちによる殺人シーンがあったり、最後の終り方も私的には好きな顛末ではない。

2010年1月角川書店刊
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佐々木 譲 著「ユニット」

2009-11-20 | 佐々木譲
7年前妻子を17歳の少年に暴行の上殺害され、未だにすさんだ生活をおくる男「真鍋」、
夫の家庭内暴力で逃げ出してきた警察官の妻「門脇祐子」、
女房に逃げられた工務店主の波多野。
地下鉄構内で起きた偶然の事故がきっかけで知り合った3人が一緒に働く事に。
しかし、家裁送りで無期懲役だったはずの殺人犯が7年で仮出獄してきたことから
真鍋は復讐をすることを生きがいに生活を立て直す決意をする。
少年犯罪にたいする現在の少年審判制度に対する疑問に立向かった小説です。
2003年 文藝春秋刊
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佐々木譲著「巡査の休日」

2009-10-25 | 佐々木譲
「笑う警官」、「警察庁から来た男」、「警官の紋章」の続編北海道警シリーズ第四弾!
前作で強姦殺人犯の鎌田光也は村瀬香里のアパートに侵入し、警護中の小島百合巡査が銃撃の上取り押さえ逮捕し病院送りにするだが、
鎌田は入院治療中に脱走し行方不明となってしまっていた。
それから1年後、村瀬香里のもとに脅迫メールが届き、再び小島百合は警護を命じられる。
必死の探索にもかかわらず、小島たちを嘲笑うかのように何度も送られてくる無気味なメール。犯人はどこに潜んでいるのか?
そのころ関東では鎌田が関与した強盗事件が起きていた。元自衛隊員鎌田の交友関係を洗ううちに浮かび上がる立ち回り先。
頻発するオートバイを利用した引ったくり事件、白骨化した遺体発見、等々・・・
著者は『組織対現場警察官たち、というテーマは、三部までで一応完結。本作は、三作までの登場人物たちによる、
いわば道警シリーズ第二シーズンの第一作目という位置づけです。』
と語るように津久井、佐伯、小島、新宮、など御馴染の面々他が登場してそれぞれの局面で活躍する群像劇になっています。
個々に起きた事件が終盤に向ってどう関連してくるのか札幌の夏の一大イベント、
多くの踊り子グループが乱舞するYOSAKOIソーラン祭り会場を舞台に繰り広げられる犯人との緊迫したサスペンスに引き込まれ一気に読めました。
まだ続く気配・・・続編が早く読みたい気分です。
11月14日公開予定の映画「笑う警官」も公開が楽しみです。

2009年10月角川春樹事務所刊
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佐々木 譲著『廃墟に乞う』

2009-08-29 | 佐々木譲
主人公は、北海道警察捜査一課捜査員・仙道孝司。「ある事件」をきっかけに自宅療養をしている。
休職中という自由な立場を生かして、持ち込まれた事件の捜査をします。
警察手帳も持たず、拳銃も持てない仙道がどのような捜査をするのか?
ニセコ、夕張などを舞台に、北海道ならではの今抱える社会的問題を鋭く描いた連作短編6編。
ニセコの貸し別荘で見つかった女性の絞殺死体。仙道はオーストラリア人と日本人不動産会社との確執に事件解決の鍵を見出す・・・「オージー好みの村」
13年前に札幌で起きた娼婦殺害事件と、同じ手口で風俗嬢が殺された。
心の痛手を癒すため休職中の仙道は、犯人の故郷である北海道の旧炭鉱町へ向かう。犯人と捜査員、二人の傷ついた心が響きあった時。表題作・・・「廃墟に乞う」、
意外な真相に個人的に一番よかった作品・・・「兄の想い」、
牧場主殺人事件・・・・「博労沢の殺人」
行方不明の娘を探しまわり、途方にくれる父親の切なさが・・・「消えた娘」、
休職のキッカケになった事件が明らかになる・・・「復帰する朝」
の六篇ミステリーというより人間ドラマに近いミステリー。
休職中であるため、深く事件に関わることはできずにスッキリしないモヤモマ感はそのまま読んでいる読者の感情とダブル。
2009年7月 文藝春秋 刊
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佐々木譲著「 暴雪圏」

2009-06-04 | 佐々木譲
前作「制服捜査」の川久保巡査部長が主人公。
大量の積雪で次々と麻痺する交通網。
十勝平野で十年ぶりの季節はずれの超大型低気圧に覆われてものすごい風と雪が猛吹雪が吹く夕刻、町全体が氷点下の密室と化す。
帯広郊外の町・志茂別管内でいくつかの事件事故が同時多発的に起こる。
暴力団組長宅襲撃犯の佐藤と笹原、出会い系サイトで知り合った相手との不倫の清算を決めた人妻明美、職場の金を持ち出す西田。
義父の魔の手から逃れる為家出した少女・美幸。偶然足止めされたペンションで、男女の剥き出しの欲望が交錯する。
ついに暴走する殺人犯・・・応援は来ない・・・恐怖の夜が明けた時、川久保巡査部長はたった一人で現場に向かった!
ばらばらかと思ったそれぞれの事件が、吹き溜まりの雪に閉ざされるようにラストは1つに収束されていく様は見事。
読み進めるうちに吹雪と共に高まっていく危うい雰囲気とスピード感と臨場感がたまらない。
この小説の本当の主人公は暴風雪かも・・・。
2009年2月新潮社刊
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