読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

東直己著「猫は忘れない」

2012-02-08 | 東直己
ススキノ探偵シリーズ第12作。
知り合いのスナックママ、ミーナから、旅行中の飼い猫の世話を頼まれた“俺”は、餌やりに訪れたマンションで、ナイフで殺された彼女を発見する。
行きがかりから猫のナナを引き取り、犯人捜しを始めた“俺”は、彼女の過去を遡るうちに意外な人物と遭遇、事件は予想外の方向へと・・・。
猫との暮らしにとまどいながらも、“俺”はミーナの仇を取るためにススキノの街を走り抜ける。
携帯電話を持たない50代になった主人公が、高田、桐原組長、など相変わらずの人脈を使い事件に迫り解決する。
「遺留品の持ち出し、指紋を拭取って警察の邪魔したりとか、携帯位持てよ!生活費はどうしているのだ!」など細かな点は無視して楽しめるのだが途中で犯人の予想がついてしまうのと後半バタバタと終息、犯行動機がイマイチでした。

2011年9月早川書房刊
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東 直己著『半端者』

2011-06-17 | 東直己
デビュー作『探偵はバーにいる』の“ススキノ野探偵”シリーズの前日譚で“俺”がまだ北大に在学していた頃の物語。
若き日の“俺”24才北大の講義には殆ど出ることもなく、大学に顔を出すのは、
高田から空手を教えてもらう条件として週に一度の自主ゼミで脇本教授から「失楽園」の英語の講義を一緒に受けることであった。
家庭教師を週に3件こなし5万円程生活費を稼ぐ反面、その頃ススキノの一部富裕層で流行っていたギャンブルで遊びの金や生活の足しにする資金稼ぎに励んでいた。
あとは昼間から酒飲みの気ままなグータラ生活を繰り返すのみ。
大きな山場はなく桐原や高田との出会いや馴れ初めが3件ほどのエピソード事件を絡めて語られ、ひょんなことから知り合ったフィリピーナの踊り子が行方不明になる展開。
携帯のなかった時代の連絡方法や当時の流行っていた歌、話題の映画、風俗が懐かしく語られる。
若き日の“俺”は一体どんな奴でススキノにどっぷりと嵌ってどのような生活をしてああなったのか?その訳は解る。
『バーにかかってきた電話』が映画されることが決定したとか(映画化名『探偵はBARにいる』2011年秋公開予定)
2011年3月 ハヤカワ文庫

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東直己著「鈴蘭」

2010-08-23 | 東直己
「待っていた女・渇き 」から続く私立探偵・畝原シリーズ第8作目。この作家当りはずれがあるのだが、今作はホームレスを囲い込み生活保護費をピンはねする貧困ビジネスやゴミ街道・ゴミ屋敷問題等昨今の問題になっている話題を絡めて興味深い。
行方不明の元高校数学教師を探す謎や、同じく行方不明の元ホームレスの女性の生き死にのミステリーを何時ものメンバーの娘の冴香、真由アシスタントの貴が活躍して解決する展開。
よくありがちな無駄な説明やクドイ繰り返しのセリフがなく楽しめた。
主人公畝原は著者と同時代の60代前のメール位しか使いこなせないアナログ派で、身体も鍛えてるには程遠く息切れしたり、家族思いの普通の等身大のおっさんだ。
そんなおっさんの頑張りが面白いのだ。難病、線維筋痛症についたはこの本ではじめて知った。
鈴蘭の花言葉「清純。きっと帰ってくる。」が表題に使われているのも後半明らかになり納得できる。
ゴミ屋敷の嶺崎の過去経歴は最後まで不明で不満だった。
500Pの長編ですがダラケルことなく一気に読めた。
『心の奥底に咲く花―罪を背負いし生きる者は、その姿を追い求めるのか。』・・・

2010年6月角川春樹事務所
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東 直己著「旧友は春に帰る」

2010-02-05 | 東直己
「俺」を探偵役とする第1作目の『探偵はバーにいる』から『バーにかかってきた電話』『向こう端にすわった男』『消えた少年』『探偵はひとりぼっち』
『探偵は吹雪の果てに』『駆けてきた少女』『ライト・グッドバイ』『探偵、暁に走る』の「ススキノの便利屋シリーズ」の第10作目。
著者には同じ札幌を舞台にした「探偵・畝原シリーズ」 があるがどうもごちゃ混ぜにして交互に呼んでいる所為で見分けがつけ難く混乱気味である。
「お願い。助けて」。惚れあった仲ではなく、とくに世話になったわけでもない女性から25年ぶりに電話がかかってきた電話は、俺の眠気を覚ますのに充分なものだった。
沖縄から逃げてきた旧い懐かしい友人モンロー。
「やばいから止せ」の周りからの助言も聞きよせば良いのにと分かっていても彼女を助けてしまう、そしてやはり深みに嵌っていく。
どうしても事情を話そうとしない彼女を夕張のホテルから助け出し、本州へと逃がすことに成功するがその直後から、俺の周りを怪しげな輩がうろつき始める。
差出人不明の4億円の印紙の束が俺に送りつけられて、正体不明のトラブルに巻き込まれ、地元やくざに追われることになった俺は、ひとり調査を開始するのだが・・・。
シリーズが10回目のこのシリーズ、ススキノを奔走する俺もすでに50歳に近い、便利屋稼業の癖に携帯電話の使い方が解らず、車の免許はもは持たない、
追いかけっこや走れば息切れし、ネットカフェでメール使うがPCやネットにもさほど詳しくない、いつも飲んだっくれているわりに、服装やスーツにこだわりアイロンの筋目に気を使うなどどこにでも居そうな「おっさんの俺」はスーパーマンでない等身大の男でありそれなりにリアルだ。
旧友との再会、そして別れ、すったもんだの末の最後の結末が哀切を誘う。
2009年11月 早川書房 刊
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東直己著「立ち向かう者たち」

2009-08-07 | 東直己
高校生の娘が被害者になった傷害事件の検察側の情状証人として裁判所に赴いた男が目にしたのは、意外なそしてやるせない被告の姿だった。犯人は知的障害を持つ中年男。「被告=悪者」「被害者=弱者」といううわべの構造だけで見ると間違いを犯すそんな真実を裁判員制度が始まった今考えさせられた。・・・表題作他
進退きわまって、正義や道理が通用しない目に遭って、人生の敗者になったと感じても。まだ、終わらない。容赦のない日々が、続いていく。強い逆風に、立ち向かって歩くしかない。自分だったかもしれない彼らを、 人生の敗者や弱者への共感を込めて描き出した傑作短編集。「作り話」「悪酔いの男」「重り」「疑惑」「責任」「ケンシの人」7つの短編集。「疑惑」と「責任」は一つの事件を元妻と元夫から描いた連作短編。
この著者の長編はやたら自論の展開が長くくどいが難点で閉口していたがこの短編集は短くまとまって心地好い読後感が味わえた。
この著者の時々原稿料稼ぎに思える無駄話入り長編ものより短編のほうが文章が推敲されていていいように思える。
2009年6月光文社刊


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東直己著「疾走」

2009-05-10 | 東直己
元殺し屋の榊原健三がかつての恋人とその子供を守るために敵と闘うというストリー「殺し屋榊原」シリ-ズ「フリージア」日本推理作家協会賞受賞作「残光」の続編。 
低レベル廃棄物処理研究施設「えびす」を見学に訪れた中学生の高見沢恵太は、その警備の厳重さに驚いたのもつかの間事件は起こった。外国人らしき労働者が、施設から逃走を図り、警備員たちが所持していた武器で発砲をしたのだ。
異様な雰囲気のなか右往左往する職員や警備員たち。この施設で何が起きているのか。一時恵太たち見学者は、足止めをくらい軟禁され自由を奪われることに。
一方、かつて恵太の命を救った榊原健三は、恵太がバスに乗って施設に向かう姿を目撃する。やがて施設でただならぬ騒ぎが起きたのを察知した彼は、恵太の身を案じ、行動を開始する(恵太は、かつて健三が愛した多恵子の息子なのだ)。謎に包まれた組織に対し、健三は恵太たちを守りきれるのか
この物語の欠点は荒唐無稽に過ぎる点、重大なリアリティの欠如だ。
政治的な利権が絡む秘密のために、核廃棄物処理施設の運営組織「機構」という民間の組織が軍隊組織のようなものを持ち、殺人を犯すなど今の日本では考えられない。
政治と金の癒着、巨大な利権を守るために隠蔽される事件。
東ワールドとも呼べる独自世界的展開の物語で愛読者以外は入り込みに難点あり。
無駄にも思える程登場人物の個々の詳細な心理描写を描くことでリアル感を出そうとしているのだが今回も登場人物が多く話しがあっちこっちに飛び取り付きにくい約100ページ程はかなり我慢しながら読み続けたが途中から個々の展開がつながり逃亡と追跡のサスペンスが増す部分から俄然面白くなり最後まで読み通した。

2008年4月角川春樹事務所刊1995円
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東 直己著「 残光」

2009-04-06 | 東直己
面白い北海道札幌を舞台にした傑作ハードボイルド娯楽小説。
一気に読めました。
第54回日本推理作家協会賞を受賞作。ハルキ文庫で文庫本化されている。
今では人目を避けて山奥で暮らしている凄腕の始末屋榊原健三が、
山を下りた日に彼の目に飛び込んできたのは、テレビに映ったかつての恋人・多恵子の姿だった。
事件に巻き込まれた多恵子の息子を救うべく、健三は単身札幌へと向かう。
だが、彼女の息子が巻き込まれたのは、単なる人質事件ではなかった。
悪徳警官、汚職にまみれた県警幹部、ヤクザと利権にからむ建設会社クールな
アウトローヒローケンゾーがカッコイイ。
登場人物の個性がしっかり書き込まれていて楽しい小説だ!
2000年 角川春樹事務所 刊
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東 直己 著「眩暈」

2009-04-05 | 東直己
私立探偵畝原シリーズ第7作。
呑んでタクシーで帰宅しようとした畝原は、車中から深夜に徘徊する少女を目撃する。
事件性を感じ一度は逡巡した畝原だったが、渋る運転手を説得し目撃した現場に
戻るが少女を見つけ出す事は出来なかった。
翌朝その少女の死体が発見され後悔の思いに駆られる。
やがて一緒に少女を探したタクシー運転手までも殺されて・・・
連続殺人を発端に広がる深い闇。噂と嘘で塗りかためられた真実とは。
50代になり体力的に衰えた畝原がみせる自分の家族に対する慈しみや愛情の
数々や、札幌の方言や風土がハードボイルドの展開の中に暖かい雰囲気を醸し出しています。
以前に重大事件を犯した未青年犯の出所後の生活を暴くマスコミや
インターネット社会の情報文化に問題点を絡めて指摘したミステリー。
2009年03月 角川春樹事務所 刊
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東直己著 「スタンレーの犬 」

2009-03-17 | 東直己
スタンレーとは香港の市街にある村。
特殊能力の持ち主の19歳の少年「ユビ」こと篠倉優美、折井企画の折井から
ある仕事を引き受けて、老婦人との浜根津列布への奇妙な旅をはじめる。
旅を続ける中で明らかになる数奇な生い立ちと折井との出会いの関係。
その特殊能力について「その気にさせる力」とは?等々・・・。
作者の今までの探偵者の作風とは違うなんか哲学的オカルト的内容、
過去のエピソードが錯綜しながら、エピソードの積み重ねで展開するストーリー
だが、探偵小説とも違うがある種の緊張感をもって読ませる内容。
著者の人生観世界観を見た気がした。シリーズとして続編が期待できる内容だが。
知的身障者にたいする考え方扱い方に一寸不満を感じるが・・・。
2005年 角川春樹事務所 刊 

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東直己著「熾 火」

2009-03-13 | 東直己
北海道警の組織ぐるみの不正で騒然とする札幌の街を背景にした小説。
ある時私立探偵の畝原は、事件調査中に血まみれの少女を偶然保護する。
虐待の疵、切り取られた1つの腎臓、7歳の少女は一体何をされたのか?
北海道警察が隠蔽しようとする戦慄の犯罪者とは・・・。
「待っていた女」「渇き」「流れる砂」「悲鳴」と続く
私立探偵・畝原シリーズの続編。
幼児虐待という重く辛い悲惨なテーマと著者のサッポロの警察、マスコミに
対する怒りが伝わってくるハードボイルド小説です。
2004年 角川春樹事務所刊
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東直己著 「英雄先生」

2009-03-09 | 東直己
ボクサーとしての夢が破れて地元の松江に戻った池田は、自分の出身高校に
デモシカ教師として退屈で破天荒な日々を送っていたある日、教え子の
女子高生が失踪し、東京から戻ってきた幼なじみが変死体で発見される。
池田は教え子の行方を私立探偵まがいに追跡するが…。
カルト集団の内部抗争やマルチ商法集団の拉致、北朝鮮の難民38度線南下の
政治情報を背景にして著者のセックス感を交えてダラダラとスローな
ストーリー展開。期待していたが残念ながら駄作の感じ。
2005 年 角川書店 刊
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東直己著「ライト・グットバイ」

2009-02-01 | 東直己
札幌ススキノの便利屋が活躍する畝原シリーズ。
道警を定年退職した元刑事からヘンなメールが届く。
札幌の郊外にある花屋でバイトしていた女子高生が行方不明となり、雇っていた
花屋の主人が怪しいと・・・理由が有って家宅捜査に踏み切れないという。
そこで容疑者に近づいて友人となり、家の中に入る機会を得よ、という依頼である。
物語の展開がおそく、取り上げているテーマが異常で暗い。
読んでいてうんざりで我慢が必要。
後半は予想通りの結末で何でも屋や協力者が手弁当で容疑者を追い詰める展開に
単なる正義感だけでは納得できない動機が希薄。
2005年 早川書房 刊
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東直己 著「墜 落」

2008-12-28 | 東直己
人は、どこまで落ちるのだろうか-。自らを傷つけるために、罪を重ねる
中学生の少女。その行動は、さらなる悪意を呼び、後半の結末は意外な結果に・・・
私立探偵・畝原が活躍するシリーズの最新作(第五作)。
最近の若者の携帯や出会い系を使ったコミュニケーションの生態を題材にした、
ハードボイルド小説。
展開がゆっくりで主題が見えてこず読みつらいシリーズを読み続けている
読者なら面白いかも・・・。
2006 年 角川春樹事務所

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東直己著「義八郎商店街 」

2008-04-23 | 東直己
ノスタルジックな心が暖ったかくなるような小説です。
今は新住居表示で桜台3丁目となったところににある「義八郎商店街」。
この商店街、幾多の荒波をくぐり抜けてきた歴史ある商店街。
町のこの商店街が今日もまたゆっくりと目を覚ます・・・。
心正しき商店主たちとの心優しきホームレス「義八郎」の不思議な物語。
不思議な謎のホームレス「義八郎」の正体が推理物語風に展開される。
後半明らかになる意外な結末。
巻末に著者の東直己は、 1956年札幌生まれ、
北海道大学哲学科中退2001年「残光」で第54回日本推理作家協会賞受賞とある。
2005年 双葉社 刊
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東直己著「探偵、暁に走る」

2008-04-06 | 東直己
札幌在住作家・東直己の「名無しの便利屋」シリーズ。
東ファンでない読者にはちょっと解りにくさとクドさが鼻につく。
著者は他のシリーズ物等で、北海道警の悪行とか、若いチンピラや
不良少女の素行とか、あの胡散臭いソーラン踊り(次期選挙で自民党からでるとか噂の)
の連中だとかに対する批判的意見を書いているがこのものがたりにもそんな批判が随所にみられる。
地下鉄で乗客とトラブルになりかけていたところをとりなしたのがきっかけで、
札幌ススキノで便利屋兼私立探偵の「俺は」イラストレイタ―の近藤と
飲み友だちになった。
その近藤が、深夜のさびれかけた商店街で何者かに刺されて死んだ。
彼は誰に、なぜ殺されたのか?
友の無念を晴らすべく、一人で調査を開始する。
やがて事件の背後に、振り込め詐欺グループ、得体の知れぬ産廃業者らの
存在が明らかになり……
札幌の街を舞台に、犯人をおびき寄せる為に自らがおとりの標的に孤独な闘を挑む。
結末は警察を信じない主人公らしく裏社会の超法規的人間関係を
利用して解決に向かうところが著者の限界として残念だが読物としては面白い。

2007年11月 早川書房刊 2100円

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