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自然現象を見事に言い当てる不思議な力。スーパー高校生羽原円華、君はいったい何者なんだ・・・彼女によって、悩める人たちが救われて行く原作・映画『ラプラスの魔女』にもなった前日譚の短編集。主人公的存在の工藤ナユタとラプラスの魔女のキーマン円華がメインのストーリーが4つに、最後は過去の事件のお話。鍼灸師のナユタは、ベテランスキージャンパーの坂屋を患者として抱えていました。坂屋は昔は活躍していたものの、近年は思うような結果が出せず、まだ小さい自分の息子に胸を張って自分の職業を言えていませんでした。そんな状態で迎える大事な大会。ひょんなことから坂屋の手伝いをすることになった羽原円華。実は彼女はある特殊な能力をもっています。その能力でジャンパーの復帰を目論みます・・・「あの風に向かって翔べ」他「この手で魔球を」「その流れの行方は」「どの道で迷っていようとも」と表題作。ミステリーやサスペンスというより、ヒューマンドラマって感じです。女子高校生円華と大人たちの対話が面白い。
2018年3月KADOKAWA刊
SFありファンタジーありの多彩な短編ミステリーが9つ。初詣に出かけた夫婦が元日事件に巻き込まれる・・・「正月の決意」、10年前に一方的に振られた女からの連絡・・・「10年目のバレンタイデー」、愛娘の結婚を控えて苦悩する父親が、雛人形を巡る、ささやかな謎へ挑むミステリー・・・「今夜は一人で雛祭り」、合コンで知り合ったキャバ嬢の・・・「君の瞳に乾杯」、近未来SF・・・「レンタルベビー」、闇のアルバイト・・・「壊れた時計」、少女と猫の時を経ても変わらぬ友情が幸福を呼ぶ、神社で出会う猫との物語、・・・「サファイアの奇跡」、ツリーに十字架ってタブー・・・「クリスマスミステリ」、夢を追う息子と反対する父の物語、親の子への情愛を描いたファンタジー・・・「水晶の数珠」。つい思い浮かべてしまう妄想の具現化だったり、似ている誰かだったり読み心地はさまざま、日常の倦怠をほぐします。意外性と機知に富み、四季折々の風物を織り込んだ、極上の短編集。たった一度の奇跡、私なら何に使うかなぁ~。短い話の中での意外な結末に驚かされます。さすがでした。2017年4月光文社刊
動物病院の雇われ院長代理手島伯朗の弟の明人が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である夫の家族に近付こうと義兄伯朗に協力を依頼してきた。楓に頼まれ協力するのだが、時が経てばたつほど彼女に惹かれていく。楓は美しく魅力的で頭が良いうえに思いがけない俊敏さと力持ちのビーナス。2人は遺産相続問題の謎を解きつつ、義理の親である脳科学研究者が、脳に電気刺激を与える医療の実験を人間で行うという違法な医療行為を行った結果、被験者が予想外の多様な発達障害のタイプのひとつサヴァン症候群を発症し、その結果偶然に、世界で初めて素数の規則性を人が描いたものとは思えぬ緻密で精密な絵を描いてしまった、というミステリーの謎にも挑む。
安ぽい2時間ドラマのような展開で後半の展開も何となく予想出来て残念。「何事にも手順が必要です・・・どんなことが起きても、決して後悔しないための手順です。・・・今、あたしにできることを精一杯やっています。もしかすると・・・繋がってないかもしれない。でも立ち止まっているより、ただ待っているより何かにぶつかっていく方が・・・。(P280」
2016年8月講談社刊
超能力を扱った空想科学小説。羽原円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な能力が備わっているのではと、疑いはじめる。同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する。・・・仏国のピエール・シモン・ラプラスという数学者の仮設=ラプラスの悪魔「自然界を貫く法則を熟知し,自然の全構成要素について初期条件と束縛条件を認識すれば,自然界のあらゆる現象を計算・予測できる。未来の状態を完全に予知できる」連続して起きた2つの不審死。それぞれの事件現場が遠く離れているにもかかわらず、死因はどちらも同じ自然現象下での「硫化水素中毒死」そして、死亡した二人は知人同士であった。もし一連の事件が事故ではなく、他殺と仮定するならば、犯人は「完全無風状態になる一瞬」をあらかじめ知っていて、「その瞬間、致死量の硫化水素が発生する場所」へと「ピンポイントで被害者を誘導した」ことになる。“ラプラスの悪魔”でもない限りそんなことは絶対に不可能だ。青江は、自然科学的見地から事件性を否定。封鎖された事件現場の地形や地質、気象などを念入りに検証していくのだが。・・・展開は面白くてある程度予想がつきやすく引き込まれて読み進めたが空想科学小説はどうもご都合主義に見えてきて苦手だ。今年、三池監督・櫻井翔・広瀬すず等で映画化がされているとか出来が楽しみです。
「世界は一部の天才や狂った人間たちだけで動かされているわけじゃない。一見何の変哲もなく、価値もなさそうな人々こそが重要な構成要素だ。人間は原子だ。一つ一つは凡庸で、無自覚に生きているだけだとしても、集合体となった時、劇的な物理法則を実現していく。この世に存在意義のない個体などない。ただ一つとして」(P436)2015年5月角川書店刊
加賀恭一郎シリーズ10作目。今回はこれまで謎だった加賀の母親が蒸発した理由が明らかになります。仙台で小料理屋とスナックを営む宮本康代は、当時36歳だった田島百合子という女性を従業員として雇います。この人がのちに加賀の母親と解る過程が描かれます。
数年後、東京では、女性演出家浅居博美が日本橋の明治座で「異聞・曽根崎心中」という芝居の幕開けを迎えています。しかし彼女を訪ねた幼なじみが、数日後、遺体となって発見されて事件が動き出します。警視庁捜査一課に勤務している、加賀の従弟の松宮修平が捜査を開始します。数々の人生が絡み合い謎が謎を呼び、捜査は混迷を極めるが・・・「悲劇なんかじゃない これがわたしの人生。極限まで追いつめられた時、人は何を思うのか」博美の辿った人生にも哀憐がありました。複雑なパズルを解く如く、人の人生に思いを馳せ楽しく読めました。
2013年9月講談社刊
空き巣どろぼうの悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い廃屋。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。
廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函された手紙。
偶然見つけた過去の週刊誌の記事で悩み相談の事を知った3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くことに
。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こす。
何人もの相談者達の人生と今は亡きかつての老店主、最初は面白半分で店主の代わりに相談へ返信していた3人。
読み進めるうちに、各々が微妙に繋がっておりそれらがパズルの断片のように嵌っていく。
児童養護施設・丸光園とナミヤ雑貨店が、見えない縁で結ばれていたとは・・・。
映画「イルマーレ」だったか未来と過去が時空を超えてポストで繋がっていたという話を思いだしたがこの物語は独自の視点で人の思いの繋がりを感じさせてくれた感動小説でした。
2012年3月角川書店刊
東京都内で発生した連続予告殺人事件。3つの現場に残された不可解な暗号を解読し、高級ホテル「ホテルコルテシア東京」において次の殺人が起こると予想した警視庁の捜査本部は、捜査員を同ホテルに張り込ませるとともに、従業員として宿泊客の監視に当たらせることにする。捜査一課の刑事・新田浩介は、英語ができる帰国子女であることから、同ホテルのフロントスタッフに扮することになり、教育係となったホテル従業員の女性、山岸尚美とともに連続殺人事件の謎を探ることに。立場も職業倫理も異なることから、潜入捜査が始まった段階では衝突の多い2人だっつたが、共にホテルマンとして、時には捜査員としての目線を互いに共有しながら日常起こるホテル内での悲喜交々の出来事に対峙していくうち、二人の間には信頼と共闘意識が生まれてくる。・・・
「ホテルに来る人は、お客という仮面を被っている。ホテルマンはお客様の素顔を想像しつつもその仮面を尊重しなければなりません。・・・ある意味お客さんは、仮面舞踏会を楽しむためにホテルに来ておられるのだから」(P367)
リアル感があり久しぶりにワクワク面白く読めた。また登場するホテルマンの姿には感動した。同僚の刑事能勢が燻銀のようで良かった。
夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった小学5年生の恭平。一方、手つかずの美しい海が残る玻璃ヶ浦。そこでは海底資源の開発計画を推進する企業側と、環境保護グループが意見を衝突させ、地元の住民も賛成派・反対派に分かれ、町全体がこの問題に大きく揺れ動いていた。開発計画の説明会にアドバイザーとして招聘された湯川は、川畑夫妻と、その一人娘・成実が細々と経営する旅館「緑岩荘」に滞在することになった。翌朝、もう1人の宿泊客が死体で見つる。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。美しい海を誇る町・玻璃(はり)ヶ浦で発見された男の変死体。当初単純な事故と思われたものが、やがて16年前のある事件との関係が浮かび上がってくる。「科学技術と環境保護」というテーマが物語に織り込まれていて、科学者の湯川が環境保護活動家との対立を通し、どのような考え方を持っているのかを描いているのが興味深い。
死んだものより生きている者の未来を重視?問題先送り、切ない幕切れで不満が残るが最後まで面白く読めた。「どんな問題も答えが必ずある・・・だけどそれをすぐ導き出せるとはかぎらない。人生においてもそうだ。・・・悩むことには価値がある。しかし焦る必要はない。答えを出すためには、自分自身の成長が求められている場合も少なくない。だから人間は学び、努力し、自分を磨かなきゃいけないいんだ」(P412)
2011年6月文藝春秋刊 /文春文庫