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~3ヶ月の苦労と感動~ 幼虫からのカマキリ育成記録

2021年09月16日 09時41分38秒 | 自然・生物・菜園
~草むらの狩人~

鎌のように発達した前脚、すらっと長い胴体、他の昆虫にはできない柔軟な動き
狩りに特化した特徴を持つ肉食の昆虫が"カマキリ"だ。
子どもの頃に虫捕りで見かけた、飼ったことがある...という方も多いのではないだろうか

筆者もその一人。小学生の頃は毎年カマキリを捕まえてきては大切に育てていた。
しかし、幼虫から育てたことはない。育てたくても、小さい生き餌をどう入手していいか分からなかったからだ。
技術不足で行動が制限されてしまうとは、実にもどかしい。

あれから十数年後・・・

写真は去年の様子。
大人になって社会に出ても消え失せることのなかった「虫好き」が再起したことを動機に、カマキリを飼育し始めた。


その後、交尾の末に産卵。
この時「幼虫から育ててみよう」と決心。これが"苦労の3ヶ月"の始まりだった......

この記事には、カマキリを幼虫から育てるという一度も経験したことのない飼育管理に挑戦した様子をまとめた。
※一部、お食事シーンの写真が含まれます。閲覧注意。


2020年11月 ~次の世代へ~

産卵から1ヶ月半に寿命を迎えて死去。子を遺して旅立った。

2021年5月24日 朝6:30 ~命の目覚め~

ケースに入れて庭で保管していた卵嚢(らんのう)の様子を見ると、孵化したと思われる穴を確認。


周辺には何匹もの幼虫たちの様子が。壊れたケースの割れ目をすり抜けて出てきたようだ。
すでに自然界へと旅に出た子もいれば、その場に留まる子も。


この日は出勤日だったため、とりあえず空きの豆腐パックに入れておいた。
この後、合計4匹を捕獲して飼育を開始。


体長10mmほどの小さなカマキリ。視線の先にはアブラムシ。小さいうちはアブラムシやコバエといった小さな虫を捕食する。

自然界は美しくも過酷な世界。弱い者は食われ、強い者だけが生き残り子孫を残せる。
捕食者であるカマキリも、時には食べられてしまうこともある。特に小さく弱い幼虫の頃は敵だらけだ。

アリやカナヘビなどの天敵に捕食されたり、餌を捕れずに衰弱してしまったり、雨に流されて溺れてしまったり...
一つの卵嚢から生まれる数百匹のうち、生き残れるのはたったの数匹。非常に厳しい生存競争を生き抜かなくてはならない。


2021年5月27日 ~飼育ケースは脱走対策を~

100円ショップで飼育用品を調達。この時期は虫取りシーズンが始まるため、昆虫飼育用品が並び始める。
生後間もないカマキリは小さな隙間をすり抜けることがあるため、カブトムシの飼育で使うコバエ除けシートで脱走を防ぐことに。


餌となるアブラムシが付着した葉を入れる。筆者は畑で採れるジャガイモの葉を使用した。
ペットボトルのキャップにティッシュペーパーを詰めて水を染み込ませたものは水飲み場。カマキリは水をよく飲む。


早速アブラムシを捕食していた。こんなに小さくても、狩りは立派にできるようだ


2021年5月30日 ~餌の入手先は?~~

畑にアブラナ科の何かが突然生えてきた。種を蒔いたわけでも、植えたわけでもない。
ここから餌となる虫が捕れる。


筆を使ってアブラムシを採集する作業を毎朝行う。どんなに眠くても、どんなに雨が降っていても。
入手自体は難しくないものの、ストックができないのが難点だった。


2021年6月1日 ~飼育ケース製作~

コバエ除けシートを使った飼育ケースでは、給餌の際の手間、蒸れやすいなどの問題点があったため、食品用の保存容器を改造。
フタにカッターナイフで穴をあけ、網目の細かい洗濯ネットを切り取って接着。


鉢底ネットに洗濯ネットを貼りつけた物が足場となる。


写真中央右側がカマキリの幼虫。安定して登れる足場があれば脱皮に失敗する危険性も低くなる。


2021年6月4日・5日 ~経過観察~

庭で栽培しているホウレン草に住み着いた子が数匹いるようだった。こちらもアブラムシを主な食事にしている。


小さすぎて筆者の低性能スマホでは綺麗に撮影できなかったが、この時点では問題なく餌を食べて成長。


2021年6月10日 ~新しく餌の入手先を発見~

今年はどういうわけかジャガイモに付着するアブラムシが少ない。近くにマリーゴールドを植えたのがダメだったか?
というわけで、サイクリングついでに「アブラムシスポット」を探してきた。


セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシという、やたら長い名前の赤い虫。
名前の通り、セイタカアワダチソウに付着する。空き地などに群生し、秋ごろに円錐状(?)の黄色い花を咲かせるアレ。


2021年6月14日 ~順調に成長~

日に日に蒸し暑くなってきたが、カマキリは耐暑性が高い昆虫。
30℃を超えても平気なので、部屋の風通しの良い場所で飼育すれば気にすることはない。


次々に脱皮をして大きくなっていく。これは抜け殻。


2021年6月19日 ~食糧危機~

やべぇ...雨ばっかりで餌の採集に出かけられない......
不思議なことにアブラムシは雨の日だと殆ど捕れないのである。カマキリは動くものを餌として認識する習性が
あるので、ダメ元でかつお節を与える実験をしてみた。猫用の塩分が少ないものだ。


ピンセットを使い、目の前で動かして見せると思いのほか食いついてくれた。
一時的な餌の代用品としては使えるが、栄養価を考えるとあまり多用はできないだろう。


2021年6月23日 ~弱き者の運命~

4匹のうち1匹が亡くなってしまった。毎日霧吹きによる水分補給と餌の投入はしていたのだが、どうも食べていないようだった。
毎日欠かさず観察をしていたのだが、警戒心が強く殆ど「餌を狩る」ことに消極的だった様子。
アブラムシが大きすぎたかと思ったのだが、他の子たちは問題なく捕食していたので餌に問題はなかったと思われる。

悪く言えば、気が弱く臆病な性格だったといえる。生き残れるのは強い者だけ......


埋葬しようかと考えたが、亡骸は他の子の餌に。これで残り3匹となった。


2021年6月24日 ~アブラムシが減ってきた?~~

黒く変色している死んだ個体が増えて来た。アブラムシは4~6月と9月頃に最も多く発生するため、捕れなくなっても仕方がない時期ではある。


小さいバッタでもいないかな、と探してみるも収穫なし。根気よくアブラムシを集めるしかない。


2021年7月2日 ~折れかけた心~

また1匹がお亡くなりに。捕食行動に問題なし、脱皮不全もなし、特に問題はなかったのだが......
筆者の管理が悪かったのだろうか。ここで心が折れそうになってしまう。


残り2匹。たまたま見かけて捕獲したハエを与えたりするも、恐れていた事態が現実に。
とうとうアブラムシが捕れなくなってしまった。
庭で捕れるコバエや蝶で何とか食わせていたが、ここで挫折しかける。

((飼育は無理だったのではないか?))
2匹目の死も重なって、そんな考えが脳裏に浮かぶ。何としても餌を確保し、飼育管理を見直さなければならない。


2021年7月4日 ~"買う"という選択肢~
友人に影響されてクワガタムシの飼育を始め、ペットショップへ行く機会が増えた。そこで餌用のコオロギを見かける。
「餌は野外採集のみで供給してこその飼育だ」
という固い考えを持っていたのだが、ここで方針変更。



「コオロギ」という商品名だったもので正確な種類は不明。おそらくフタホシコオロギだろう。
餌用コオロギの管理には足場、隠れ処として紙製の卵パックを使うのが一般的だが「そのまま植えられるポット」で代用。
餌は野菜くず、かつお節など雑食性なので基本なんでも食べてくれる。
とはいえ、最終的にカマキリの栄養源になることを考えると、コオロギの食事も配慮する必要がある。



2021年7月8~13日 ~少しずつ管理が楽に~

ある程度大きくなってしまえば餌の確保も楽になる。自身より小さめの昆虫であれば怖がらずに捕食してくれるため、
テキト~に捕って来たバッタも餌として使える。アブラムシやコバエをチマチマ集めていた頃に比べると本当に楽だ。


脱皮不全もなく順調。古い皮を脱ぎ捨て、どんどん大きくなっていく。


2021年7月16日 ~餌の質を改善~

カブトムシ・クワガタムシの飼育で使っている高タンパクゼリーはコオロギも喜んで食べてくれる。
栄養価が高く、水分補給にもなるため管理が楽な点も魅力的。
栄養バランスを考えて野菜も与えるが、市販の物は残留農薬等の心配があるため自家栽培品のみ使用。


2021年7月18日 ~お引越し~

脱皮のためには、ある程度の高さと安定した足場が必要だ。透明で中が確認しやすく、縦置きで高さも確保できるプラケースを用意した。


2021年7月22日 ~いっぱい食べるキミが好き~

威嚇のポーズ。成虫だと翅を広げて自身を大きく見せることで天敵を脅す。
果たしてこれが鳥や小動物相手に通用するのかは謎だが......


複数飼育しているとケース越しに獲物を狙うことがよくある。
獲物がいれば食欲のままに食べてしまう性質上、食べ過ぎて死ぬこともあるらしいので与えすぎには注意だ。


慣れると手乗りで食事を始めることも。どうもカマキリは「慣れる」ようだ。
昆虫の脳(神経)はそこまで発達していないことを考えると「なつく」とは違ったものかもしれないが、しばらく
飼育していると手を近づけても警戒しなくなることはよくある。



2021年7月25日 ~それも食うのか~

ケース清掃で取り出した時、ゼリーも食うのか気になったので実験。
目の前に置いてやると、思いのほか食いつきが良くて驚き。


爪楊枝で与えても食べてくれるようだ。
なんだよ...もっと早く気づけば餌不足の時期でも苦労せず済んだのに...(;´・ω・)
寿命が近くなり自身での捕食が難しくなった時に与えても良さそうだ。


この日、片方が幼虫最後の脱皮に無事成功。羽化に備えて、餌と水分管理を慎重に。


2021年7月27日 ~さらに大きな部屋へ~

詳しい見極め方は分からないが、なんとなく羽化が近い気がする。
なるべく早めに...と思い大サイズのケースを調達してきた。


脱皮不全(羽化不全)を防ぐためには、とにかく高さと安定した足場の確保が大切。これで飼育環境はバッチリだ。


大きいケースなら、ピンセットを使い直接餌を与えることも容易。あとはカマキリ自身の力に任せて見守るのみ。


2021年8月8日 ~もう心配いらない~

仕事で遅く疲れ果てて帰りケースを覗くと、そこには立派になったカマキリの姿が。
羽化という最後の脱皮をし、ついに成虫となったのだ。

こうして、苦労あり喜びありの3ヶ月を終えることができた。挫折しかけたこともあったが、諦めなくて本当に良かった(´;ω;`)



~また今年も、そして来年も~

成虫となった後の飼育は非常に簡単。餌と水分を定期的に与え、週一ぐらいでケースを清掃してあげるだけ。
筆者の場合は餌用のコオロギを定期購入しているためメスには1日1匹、オスには3日に1匹の給餌。
卵の入った腹部はどんどん膨らみ、体重は1ヶ月で4gまで増加。大した事ない? 実際に持ってみると結構ずっしり重いよ。


経験上、同じ餌を与え続けても飽きるようなことはない。市販品の生き餌なら寄生虫の心配がなく安全だ。


もちろん、バッタや蜘蛛などの虫を採集して与えてもよい。しかし...


モノによっては食べ残してしまうこともある。
あまりにショッキングなのでモザイクをかけたが、うまく筋肉だけ食べて内臓は残した様子
まあ、人間も焼き魚を食べる時に骨と内臓は残すからな...


現在、採集個体含めて5匹を飼育。今年もペアリング後に産卵させて、来年も幼虫からの飼育をする方針。
特にこれといった目的はないが、観察の楽しさは肉食昆虫だからこそ。今年も楽しんでいきたい


↓もしお時間があれば、2021年の過去記事もどうぞ↓

・カブクワ飼育の始まり→大変だ。高級クワガタを飼うことになっちまった・・・

・虫を集めるライト作り→~夏に実戦投入~ ライトトラップを自作

・オオスズメバチvs虫捕り少年(20)→~ついに遭遇!~ オオスズメバチの女王を捕獲と標本作り

・梅雨の時期でも雑木林に出かける男→昆虫好きの20歳児は今日も山に出かけたようです

・持つべきものは友→~友に導かれて~ 充実しすぎた2日間

・友と夜遊び→~仕事帰りの昆虫採集~ ペット急増

・彼は休日を楽しくしてくれる→~雨の日でも昆虫採集~ またペットが増えて大変なことに・・・

・まさか奴が近所で捕れるとは→~森の旅人~ 終わることなき昆虫探し

・今夜は熱いぜ→~俺たちの夏休み~ 男2人で夏の虫を捕りまくった結果・・・


・エアコンなしでカブト、クワガタを飼育する方法→~カブトムシの産卵~ 温度管理は水だけで

・虫の楽園で貴重な体験→~カブトムシだらけ~ 福島県田村市のムシムシランドを見学

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・その扱いは店としてどうなの?→ひどい扱いをされていたクワガタムシを買ってみたら

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2 コメント

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Unknown (skylake1008)
2021-09-17 21:40:12
世間では嫌われがちな昆虫ですが、よく観察したり触れてみたりすると思わぬ魅力があるかもしれません。当ブログを通して興味を持っていただけて大変嬉しく思います。
ご覧いただき、ありがとうございました(^^)/
返信する
Unknown (みゆきん)
2021-09-17 21:09:18
虫は苦手だけど
何故かカマキリの飼育をぜーーーんぶ見た
なんだろう?
興味深くて見入ってしまったわ。
また遊びにくるね凸凸
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