乾酪庵 Cottage de fromage

スピブログとして発足しましたが、ただの日記になりつつあります。
最近は芸人さんの話題が多いです。

Ⅴ.家族論としての『TIGER&BUNNY』.偶像の父

2024-05-08 18:00:00 | TIGER & BUNNY

TIGER&BUNNY(無印)の感想、5話目です。重要なネタバレあります。

 

それで Mr.レジェンドの話をしたいんですけど、その前に虎徹の家族の話をします。

 

虎徹はシュテルンビルトで一人暮らしですが、田舎に家族を残している。老母、娘の楓、独立した兄。妻は数年前に他界している。

父親については一言も言及がなかったと思うんだが(私が覚えてないだけかもしれないが)、お墓参りのシーンがあったのでおそらくあの中なのだろう。

虎徹が何歳の時に亡くなったのかにもよるが、おそらく父親の不在と自らの能力の出現で精神状態が不安定になってたところで事件に巻き込まれ、そこを救ってくれたのが Mr.レジェンドだった、と。

 

レジェンドは事件そのものからだけでなく、虎徹少年に将来ヒーローになって誰かを守る、という夢を持たせてくれた、いろんな意味で救いだった。

ある意味父親的な存在と言える。一度しか会っていないこと、現在の消息が分からないことも『レジェンド(伝説)』感をだしており、虎徹の中でより理想化されていると言えるだろう。

考えてみると、虎徹もバニーも実の父親が不在なので、それで父親的な人物が実際以上に大きくなってしまったのはあるだろうな、心の中で。

 

物語が進むにつれて、そのレジェンドには実の息子がいることが明かされる。

 

 写真AC

 

息子のユーリが幼いころは父であるレジェンドのヒーロー業もうまくいっていたようで、息子にとっても良き父親であったようだ。

それがある事情からヒーローとして行き詰まるようになり、家庭でも酒に溺れ妻に手をあげるなど日に日に生活が荒んでいく。思い詰めたユーリ少年はついに…。

 

ある意味で、虎徹は幸運だったと言えるでしょう、真実を知らぬまま大人になれたことは。

しかしどこかで道を誤れば、ふたりの運命は全く違っていてもおかしくなかったと私は思うのです。

つづく


Ⅳ.ヒーロー論としての『TIGER&BUNNY』.力を持つ者

2024-05-07 18:00:00 | TIGER & BUNNY

気安く始めたはいいけど、これ書くの結構大変だぞと気づき出しました。おそいよ。

一応言っておくとアニメ以外にも書きたい話題はあります。けどどうしても暗くなるからさぁ

TIGER&BUNNY、4話目です。

 

 

ヒーロー物語の世界でパワー、異能を手に入れることは大人の力を借りて一時的に大人になることの暗喩だ、という説について掘り下げてみる。

 デザインAC

 

昭和のヒーローアニメにおいて、主人公が得たパワーは基本的に善なるものとして描かれている。それを得たがための苦悩などもあるのだが、エピソードの一つとして扱われ、物語の前面に出てくる事は少ない(当然例外はある)。

タイバニにおいては、むしろ苦悩が前提になっている。能力者である “NEXT” は、物語世界では周囲にとって招かれざる者であることが多いようだ。

そもそも他のヒーローアニメでは、パワーを得た者とヒーローが無条件でイコールなのだが、タイバニ世界では能力がある者が必ずしもヒーローになれるわけではないという点が大きく異なっている。

 

また、旧来のアニメでは主人公に能力を授ける存在が登場する。敵(ショッカー)だったり味方(バードマン)だったりするが、どちらにしろこれは大人の代表、親の暗喩だと見ていいと思う。

しかしタイバニの世界では、そういった存在は登場しない。能力はある日突然勝手に発現して、当人や周囲を困惑させる。

 

これ要するに、視聴者として想定されている年齢層の違いによるものだと思う。視てるのが子どもだったら大人の力を借りて一時的にでも大人になったらそりゃ無敵でしょ。

けど大人だったら、自分程度の人周囲にいっぱいいるし、そのスキルを活かせるかってその人によるよねって話しになる。

 

書いてて気づいたが私がタイバニを視始めた当初これはパーマン、と思った理由が『敵が固定されていないこと』と『Mr.レジェンド』にあるのだなぁと。

パーマンには、特に定まった敵と言うのはおらず、事件は毎回単発的に起こる。タイバニでも最初の数話はそう。

そしてパーマンにとって導いてくれる存在としてバードマンがいるのと同様に、タイガーにも心の師、先達としての Mr.レジェンドがいる。

これがだんだん、ウロボロスという謎組織が登場したり、レジェンドの過去が明らかになったりしてどんどん “藤子不二雄み” が薄れていく。そうかといって “石ノ森章太郎み” はあんまり感じないけど。

 

それでその Mr.レジェンド(と、)の話しをしたいんですけど、その前に虎徹の家族の話しをします。

 つづく


Ⅲ.ヒーロー論としての『TIGER&BUNNY』.ふたつの制限

2024-05-06 10:00:00 | TIGER & BUNNY

※ ネタバレあります。

TIGER&BUNNY の話し。第3話です。

その1 その2

 

もう一個、タイバニの特徴を挙げると、時間制限と期間制限というのがあります。

タイガーもバニーちゃんも、ハンドレッドパワーには『5分』というタイムリミットがあります。これが時間制限。

そしてネタバレになりますが、タイガーの能力は徐々に5分保たなくなってゆき、最終的に消失する未来が予想される。これが期間制限です。

 

 写真AC

 

時間の制限があるヒーロー、っていにしえから特撮にありました。『ウルトラマン』っていうんですけど。

ウルトラマンに3分間の時間制限がある制作上の理由は Wikipedia に載ってますんで各自ご参照ください。

私が二十数年前に読んだある本によりますと、ウルトラマンの怪獣が暴れてるのは視聴者である子どもたちの中の幼児性の発露を暗喩してるのだと。

暴れることでカタルシスも得てるけど(くんちゃんと一緒)、他方でそのうち怒られるんじゃないかと怯える気持ちも惹起される、そこで幼児性を制御するためにウルトラマンが現れるのだと。

ウルトラマンのおかげで怒られる危機は回避できたけど、そうかといって制御される状態がずっと続いてるのも苦しい…、ので3分間という時間制限があるのだ、という内容でしたね、あえかな記憶によると。

 

そう言われてみると、バーナビーの両親の仇と目されたジェイク、と言うのはやたら幼児性の強いキャラですよね。

ただ、あんまりジェイクが暴れてるとこを見ても気持ちよくない気がする。

どっちかというと、暴れてるとこを見て気持ちいいのはタイガーだよな。壊し屋タイガーが幼児性の発露でありその能力にタイムリミットが定められてるんだと解釈した方がしっくりくる。

じゃぁバニーは、というところですが、これは単なる付き合いでしょ。深い意味は無いと思う。知らんけど。知らんとか言い出したら全部そうだよ。

まぁ、幼児性の強い敵、といえばダイヤモンドの人もそうだし、part2 に登場する敵もだし、そっちに対しても影響はしてると思いますけれど。

 

さて、もう一つの期間制限の方ですが。

タイガーの能力が徐々に発動時間が短くなってく問題。これは前回指摘した点に帰結すると思うんですが。

つまり最終回にヒーローパワーを失くすのは大人の力を借りずに大人になることの暗喩だと。

要は旧来のアニメの構造に立ち返ろうとしてる、ように見える。バーナビーからすれば、先祖返りとか言われそうですけど。

 

大人になる、というのは TIGER&BUNNY の場合自立するということで、では自立とは、というと父親からの巣立ちを表している、と思います。とにかくしつこく父子なんですよこのアニメ。

 

そんなわけで次回はその辺の話しを。

つづく  


Ⅱ.ヒーロー論としての『TIGER&BUNNY』.ヒーローと時代

2024-05-05 10:00:00 | TIGER & BUNNY

このタイバニ感想シリーズ、一応全10話で確定しそうです、今のとこ。
そして4日の晩に観た劇場版 Rising が面白かったので、+1話感想を書くと思います。
1日1話、休日は午前中、平日は夕方に公開します。14日終了予定。

 

TIGER&BUNNY、2話目です。

前回 TIGER&BUNNY その1

 

まぁ、そんなわけであれなんですが、昭和と一口に言っても長いですけど、便宜上昭和と呼びます。

昭和のヒーローものでは、ヒーローは正体を隠してるのが絶対条件であり、最終回では世間や家族に正体がバレてヒーローの資格がなくなる、までがセットだった(パーマンはちょっとイレギュラーですが)。

平成初期になってくると最後まで正体はバレないし、ヒーロー活動も続けるらしい、という作品が出てくる。セーラームーンみたいな話ですね。

これどういうことかというと、ヒーローパワーを手にするということは、大人の力を借りて一時的に大人になることの暗喩なんですね。

最終回でその力を失くす、というのは、大人の手を借りずに自力で大人にならなければいけないことを暗喩しています。

時代が下るにつれてその線引きがあいまいになってる、つまりモラトリアム期間が長くなってきていることを示唆しているのではないか、と言うのが私のパーマン論の論旨でした。

 

で、タイバニは 平成後期(H23年)の作品ですが、とうとう最初から素顔と本名を世間に晒して活動するヒーローが登場したと。

 

 写真AC

 

この辺について第一話にて初対面のタイガーとバーナビーが端的に会話してる。

 

「大体お前な、ヒーローが人前で仮面外したりなんかすんな。有り得ないぞ」

「は?」

「ヒーローってのはな、正体を明かさないのがヒーローなのであって」

「古いな」

「ふぇ?」

「あなたはもう時代遅れなんですよ、オジサン」

 

TIGER & BUNNY - シーズン1 - 1話 (アニメ) | 無料動画・見逃し配信を見るなら | ABEMA

 

こうなってくると「もう一生モラトリアムでいいじゃんなにがいけないの」という開き直りを感じる。それがいいとか悪いとかの話しじゃなくてですよ。

開き直りというか、平成生まれはもうそれが当たり前なんだろうな。

そう言う虎徹にしても、娘の楓ちゃんにはヒーロー活動のことを隠しているけど、母親や兄は知っており、これは昭和では有り得ない、ルールがだいぶゆるくなっていることを感じます。

つづく


Ⅰ.ヒーロー論としての『TIGER&BUNNY』

2024-05-04 10:00:00 | TIGER & BUNNY

 書き始めたのは 4/29。現在(5/4時点)メインブレドウィナの辺りを書いてます(それが何かはそのうち分かる)。全6~8話予定。相変わらず一回が長いので、文章は増えないけど長さ調整するから全体の回数は増えるかも。

 本当は全部書き終わってから UP したいんですが、それだと連休中に始められないぞというわけでとりあえず1話目公開します。

 ちなみにこれ(1話目)を書き始めた時点で part2 は NHK で視聴済み。映画は未視聴でしたが、たまたまニコニコで無料配信やってたので Beginning は昨夜観た。Rising は今夜視聴予定。

 

 

※ 多分ネタバレします。

先日ですね(4月下旬)、たまたま abemaTV を視てたらですね、TIGER&BUNNY(無印) の全話無料配信をやってまして、思わず視ちゃったわけなんですが。

「TIGER & BUNNY」のエピソード・見逃し配信の検索結果 | ABEMA

前にも視たことあったのですが、その時はあまり時間も無かったし、ふーんまぁ面白かった、ぐらいだったんですが(失礼だぞ)、今回2周目で、ある程度余裕もあり、意識的にちょっとじっくり見てみました。

色々思うところあったので、久々のあのフレーズ(久々かな)。忘れないうちに感想を…。

 

 

このブルーローズのエピソードに限らないけど、タイバニはパーマンと似た構造してる。というか、おしなべてヒーローものとはそういうものかもしれないが。

(これ後に微妙に違うこと言い出します。

私は最近のヒーローものってあまり明るくないので、割り引いて読んでいただきたい。それは全部そうだよ詳しいジャンルなんてないよ恥ずかしいな生きててごめんなさい(言い過ぎ)。

最近じゃないヒーローものって何かというと、石ノ森章太郎とかあの辺りです。すみませんね相変わらず脳が昭和で。

 

似た構造、とはつまり、大きく言っちゃうと正体を世間や友人に隠してる、というあたりです。

ひょっとしてもしかして、ご存知の方がいらっしゃるかもしれませんが(ご存知なくたって一向に問題ないのですが)、わたくし某所にてパーマンについて考察と言う名のムダ話を長々と論じてまして。

私そこにパーマンが正体を隠してる理由について何か書いてたっけ、と軽い気持ちでアクセスしたら、二十数年前に描いた己の文章が恥ずかしくてとても読めないと言う事態(ノωノ)。

なんでだよ。2、3年前に読んだ時は平気だったぞ。

 

 

…そんなわけで、最初のうちは、おーこれパーマンじゃんと思いながら楽しく視てた私が、後半になるにつれて、えーこれベルばらじゃんになっていきながら楽しく視てたっていう話しをこれからしていきます。どうしてそうなった。

 つづく