現在、腰下肢の症状を訴えて来院中の患者がいる。体が前傾した状態になると腰の痛み、下肢の重さなどが現れる。例えば、歩いていて傘を差したり、上着を手に持ったりして、体が前傾すると痛みで歩けなくなる。しばらく休んで体を伸ばすと痛みが消えて、また歩けるようになる。いわゆる間欠性跛行だ。
教科書的な間欠性跛行のパターンには大きく、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)や閉塞性動脈硬化症(ASO)などの血管性のものと、脊柱管狭窄症のような神経性のものがあるが、この人の場合は下肢の動脈の拍動の減弱はなく、脊柱管狭窄症のそれとは症状の出方が違う。右下肢が回外してしまっているが、それも主な原因とは考えづらい。
これまでは腰下肢を中心に筋肉のバランスや脊椎の変位、また臥位から立位、更に前傾姿勢を取った時の体の変化などを調べ、さまざまな治療を行ってきた。例えば、来院時に既に下肢の重ダルさなどを訴えていることもあるが、そうしたものは大抵すぐ取れる。だが、問題の前傾姿勢で現れる症状については、ほとんど変化がない。では良くなっていないのかというと、調べる限り、治療しなければならない部分は減っていて、確かに良くはなっている。ただ症状だけが変わらないのである。
そんな折り、キーワードを使うことを思いつき、反応のある言葉を探ってみた。最初に見つかったの言葉は「雨」「木の棒」など。しかし、その反応を取っても症状が変わらないため、更に言葉を探した。その結果、探り出したのは
「跳べなくなったことへの悲しみ」
「2007年6月頃、親類から父親について伝え聞いたこと」
「父が亡くなった時の年を超えた。年を取ったことを実感した」
という言葉──というかフレーズ──だった。
その人に、その言葉について聞いたところ、2番目については少し違うらしかったが、反応はあるので、そのままで行くことにした。
これらのキーワードに最も反応があったのが心臓だったため、こちらのクラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)と平行して心臓へのフォーカシングを行ってもらい、そこで患者が感じたものをフィードバックしてもらった。そして患者から聞いたイメージにインスピレーションを得て、こんな仮説を立ててみた。
血液は体を1回循環するごとに必ず心臓を通る。血液の中には、しばらく脳に行かなかったり、(確率的に)一度も肝臓を通らないまま終わるものもあり得るが、心臓を通らない血液は存在しない。とすると、心臓は血液を介して常に全身の情報を得ているのではないだろうか(リドリーの著したクラニオの本『スティルネス』では、施術者が心臓場、あるいは心臓の心臓である洞房結節(SA Node)に留まることを最も重視しているが、もしかするとそれは上記のことを暗に示しているのかもしれない)。
そして、その人の心臓はキーワードに関連して何からの形で情報を書き換えていて、その情報が腰下肢の症状の大きな要因を作り出している(あるいは、腰下肢に症状を引き起こすことを目的に心臓が情報操作を行っている)のではないか。つまり、腰下肢の症状は何らかの器質的要因があって生じているのではなく、情報の中だけで起こっている、ある種のバーチャルなものなのではないか。
この仮説は以前診た、ある患者のケースが元になっている(その患者の場合は、脳の一部が意図的に情報操作を行い、ありもしない痛みや不安感を作り出していた)。ただ、脳ならわかるが、心臓が情報を血液から得て、しかもそれを意図的に書き換えるというのは、さすがにちょっと荒唐無稽な気がして、何度もキネシオロジーの筋肉反応テスト(筋反射テスト)で確認したが、結果は同じだった。また、フォーカシングでもYesという答(ただ、この患者は先の「脳が…」の人ほど精細なフォーカシングが使えないので、答としてはややアバウトなものだったが)。
そんなわけで、上記のキーワードを使い、3回を費やして心臓とその周辺への治療を行った。そしてキネシオロジーとフォーカシングの2面から、心臓には問題なくなったことを確認するに至った。──が、症状はやはり変わらず。
前回は心臓の問題に隠れて見えなかった横隔膜の問題を同じキーワードを使って取り、更に腰下肢にカルシウムの不足があることがわかった(全身レベルではカルシウムの不足はなく、腰下肢に限定すると不足が現れる)。今ここで調べてみた限りでは、腰下肢のカルシウム不足はまだ残ったままのようだ。その上、今度は上記キーワードに中・下腰椎で反応が出そう。
上の仮説を思いついた時点で終わりに辿り着いたと思っていたのだが、そういうわけで、このケースはまだ底に行き着いたわけではないようだ。
教科書的な間欠性跛行のパターンには大きく、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)や閉塞性動脈硬化症(ASO)などの血管性のものと、脊柱管狭窄症のような神経性のものがあるが、この人の場合は下肢の動脈の拍動の減弱はなく、脊柱管狭窄症のそれとは症状の出方が違う。右下肢が回外してしまっているが、それも主な原因とは考えづらい。
これまでは腰下肢を中心に筋肉のバランスや脊椎の変位、また臥位から立位、更に前傾姿勢を取った時の体の変化などを調べ、さまざまな治療を行ってきた。例えば、来院時に既に下肢の重ダルさなどを訴えていることもあるが、そうしたものは大抵すぐ取れる。だが、問題の前傾姿勢で現れる症状については、ほとんど変化がない。では良くなっていないのかというと、調べる限り、治療しなければならない部分は減っていて、確かに良くはなっている。ただ症状だけが変わらないのである。
そんな折り、キーワードを使うことを思いつき、反応のある言葉を探ってみた。最初に見つかったの言葉は「雨」「木の棒」など。しかし、その反応を取っても症状が変わらないため、更に言葉を探した。その結果、探り出したのは
「跳べなくなったことへの悲しみ」
「2007年6月頃、親類から父親について伝え聞いたこと」
「父が亡くなった時の年を超えた。年を取ったことを実感した」
という言葉──というかフレーズ──だった。
その人に、その言葉について聞いたところ、2番目については少し違うらしかったが、反応はあるので、そのままで行くことにした。
これらのキーワードに最も反応があったのが心臓だったため、こちらのクラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)と平行して心臓へのフォーカシングを行ってもらい、そこで患者が感じたものをフィードバックしてもらった。そして患者から聞いたイメージにインスピレーションを得て、こんな仮説を立ててみた。
血液は体を1回循環するごとに必ず心臓を通る。血液の中には、しばらく脳に行かなかったり、(確率的に)一度も肝臓を通らないまま終わるものもあり得るが、心臓を通らない血液は存在しない。とすると、心臓は血液を介して常に全身の情報を得ているのではないだろうか(リドリーの著したクラニオの本『スティルネス』では、施術者が心臓場、あるいは心臓の心臓である洞房結節(SA Node)に留まることを最も重視しているが、もしかするとそれは上記のことを暗に示しているのかもしれない)。
そして、その人の心臓はキーワードに関連して何からの形で情報を書き換えていて、その情報が腰下肢の症状の大きな要因を作り出している(あるいは、腰下肢に症状を引き起こすことを目的に心臓が情報操作を行っている)のではないか。つまり、腰下肢の症状は何らかの器質的要因があって生じているのではなく、情報の中だけで起こっている、ある種のバーチャルなものなのではないか。
この仮説は以前診た、ある患者のケースが元になっている(その患者の場合は、脳の一部が意図的に情報操作を行い、ありもしない痛みや不安感を作り出していた)。ただ、脳ならわかるが、心臓が情報を血液から得て、しかもそれを意図的に書き換えるというのは、さすがにちょっと荒唐無稽な気がして、何度もキネシオロジーの筋肉反応テスト(筋反射テスト)で確認したが、結果は同じだった。また、フォーカシングでもYesという答(ただ、この患者は先の「脳が…」の人ほど精細なフォーカシングが使えないので、答としてはややアバウトなものだったが)。
そんなわけで、上記のキーワードを使い、3回を費やして心臓とその周辺への治療を行った。そしてキネシオロジーとフォーカシングの2面から、心臓には問題なくなったことを確認するに至った。──が、症状はやはり変わらず。
前回は心臓の問題に隠れて見えなかった横隔膜の問題を同じキーワードを使って取り、更に腰下肢にカルシウムの不足があることがわかった(全身レベルではカルシウムの不足はなく、腰下肢に限定すると不足が現れる)。今ここで調べてみた限りでは、腰下肢のカルシウム不足はまだ残ったままのようだ。その上、今度は上記キーワードに中・下腰椎で反応が出そう。
上の仮説を思いついた時点で終わりに辿り着いたと思っていたのだが、そういうわけで、このケースはまだ底に行き着いたわけではないようだ。
現在、私自身の瞼と心筋と嗅覚が反射的に検査しているのを感じていました。
他から、「心筋を使うなんて、危ないんじゃないですか?」とよく言われるのですが、
この3点につきましては、恒常的に機能しているわけで、わざわざ、AKを心筋でやっている訳ではないんです。
今回の
>心臓は血液を介して常に全身の情報を得ているのではないだろうか
という言葉に、とても共鳴しました。
感じてらっしゃらない人が多いだけで、
心臓って多くの仕事をしてるんですね。
なんだか、心臓が満足している気がします。
自分でもイイ線行ってるとは思うのですが、結果が伴っていないところを見ると、まだまだみたいです。
ともあれ、内臓には一般に解剖学、生理学で言われているものだけでない、さまざまな働きがあるようです。やはり、天才・美馬坂幸四郎の企ては失敗する定めにあったようで…(と、いきなり『魍魎の匣』につながってしまいましたが)。
広背筋や上肢帯には問題ないのでしょうか?
なんとなくの思い付きのコメントですみません
ご指摘、ありがとうございます。
実際、三角筋、大胸筋、僧帽筋、広背筋なども調べていて、立位で弱化が現れることがわかり、処理したという経緯があります。
座位の前傾姿勢とかは大丈夫なのかなぁ
前傾時に、腹腔の臓器がうまくスライドしてくれないのかなとか
なんておせっかいに色々考えてしまいます
こういうのを聞くと、患者さんには悪いが楽しくなりますよね。
自分の患者さんじゃないから責任ないというのもありますけど。
でも、そのくらいの人じゃないと私は身体を託したくない。
前傾姿勢を取った時の内臓の状態も調べ、腹部内臓器の下垂、左右肺上部のインスパー亢進などが出現することを確認し、それも取っています。それでも症状に大きな変化はありませんでした。
もしかしたら今調べると、前傾姿勢で胃あるいは膵臓にインスパー亢進が出ているかもしれません。が、一過性のものかもしれず、主訴と関連があるかどうかも不明です。
引っぱるつもりはなかったです。
独り言みたいなもんでした
お気になさらずに。
tenleechanさんに指摘されて、改めて気づいたこともあります。
うまく治っていかない患者の治療では、おうおうにして視野が狭くなりがちなので、むしろ助かりました。